効果的なソーシャルメディア戦略は一夜では生まれない
クッキー焼いても炎上するな――Oreoが学んだTwitter活用術
TwitterやFacebookにアカウントを持つ企業は急増している。しかし、長い時間をかけてスキルを磨かない限り、企業が期待する効果は見込めないようだ。1年間にわたり毎日メッセージをツイートし続けたOreoが学んだ教訓とは?
今、TwitterやLinkedIn、Facebookをビジネスツールとして活用する動きが企業の間で活発だ。企業と顧客を結び、新しいアイデアを導き出し、販売や収益増にさえ貢献しつつある。
しかし、多くの企業、特に法令順守に縛られる企業や厳格な社内規制のある企業などは、ソーシャルメディア戦略の立ち上げから失敗するケースが少なくない。彼らの致命的なミスは、法務部門やコンプライアンス委員会などとのすり合わせが遅過ぎることだ。2013年9月に開催されたソーシャルメディアがテーマのカンファレンス「Social Shake-Up」の講演者たちは、そう口をそろえる。
強固なエンタープライズソーシャルメディア戦略を構築するためには、立案の段階から全ての利害関係者を巻き込む必要がある、と専門家は指摘する。早い段階からのミーティングは、法的な問題を引き起こさずに、ビジネスニーズに合致したソーシャルメディア戦略を構築するための必須条件であるからだ。
「すなわち、利害関係者全員を1つの部屋に集め、全社的なコラボレーションで戦略を作り上げることだ」と語るのは、ソーシャルメディア統合プラットフォームプロバイダー、米Actianceのソーシャルメディア担当、ビクター・ガクシオラ氏である。
ガクシオラ氏は「Playing with Lawyers: Social Media Governance(法律家と一緒に:ソーシャルメディアガバナンス)」と題したカンファレンスパネルで、ソーシャルメディアの活用と規制、コンプライアンス、法律問題のバランスをどう取るべきかについて議論を展開した。
「全ての関係部門から代表者が集まり、会議室は満席だ。しかし、全員をコンプライアンスに違反しない方法で束ねながら、それぞれの業務に適合させなければならない」
カンファレンスの講演者たちはまた、コラボレーションとコミュニケーションの醸成に失敗すると、後々コストと時間のかかる見直しが必至のソーシャルメディア戦略が出来上がってしまうと警告する。
「完成品を持ってコンプライアンス部門に出向いてはならない」と語るのは、米医療プロバイダー専門コンサルタント会社、pathForwardの社長、デビッド・デビドヴィック氏だ。「たとえ、そのプランが承認されたとしても、付帯条件として大幅な変更を余儀なくされるだろう」
この場合、漸次的アプローチは、利害関係者がソーシャルメディアに慣れ、ベストプラクティスについて学べる優れた方法といえるだろう。カンファレンス講演者たちは、小規模に始めることを推奨する。まずは、ユーザーに2、3のプラットフォームへのアクセスを用意し、合法的かつコンプライアンスの問題がないメッセージについてきめ細かなガイダンスを提供すればよい。
段階的ソーシャルメディア戦略
ソーシャルメディア計画は柔軟に、そして継続的に洗練させて、長期的な視点でコンプライアンスを達成すればよい。カンファレンスパネルに登場した専門家は、参加者にそうアドバイスする。段階的に時間をかけてソーシャルメディア戦略を構築していくことは、1日で全てを仕上げてしまおうとするよりも、実は効率的だ、と専門家は強調する。
「われわれはクライアントの戦略を明確化することからスタートする。まず、“海でも沸騰させるつもりですか”と問い、“Facebook、LinkedIn、Twitter、Tumblrの全てをカバーする必要はありません”と指摘する。それらのプラットフォーム上で30の異なる言語、地域をサポートする必要はない」と同氏。「コンプライアンスのためにそうしたアプローチを採るというなら、丁重にお引き取り願うだけだ」
第1段階の目標は、会社のプレゼンスを全てのプラットフォーム上に確立することでも、またソーシャルツールのベストプラクティスを従業員にトレーニングすることでもない。専門家たちが力説するのは、情報を集め、小さなグループでプランをテストし、失敗を繰り返して修正することだ。
企業はしばしば、非常に保守的なスタンスでスタートし、物事をできるだけコントロールできるようにしておきたいと考える、と前出のガクシオラ氏。しかし、時間の経過とともに、ユーザーを教育し、法務・コンプライアンス部門との連携によりさまざまな修正を施すことで、企業はコントロールの度合いを徐々に控えめにしようと考えるようになるという。
同氏は、規制された環境においてソーシャルメディアが成功するためには、「ユーザーを教育し、法律およびコンプライアンスの安全領域を形成していくことが重要だ」と強調する。一部の企業は、ガクシオラ氏にソーシャルメディアの基礎的な機能について聞くことから始めるという。典型的な企業の場合は、まず個々の従業員にFacebookプロファイルを与え、事前承認したライブラリに保存されたコンテンツを共有できるようにすることから始める。その後、法的コンプライアンスの壁についてユーザーの理解が高まってくれば、「いいね」や共有の自由度を増していく。
「ゆっくりソーシャルへのアプローチを広げてく。それがプロセスだ」とガクシオラ氏は語る。
合法的でコンプライアンスに抵触しないソーシャルメディア戦略を構築することは、「企業が日々継続して取り組んでいかなければならない仕事だ」とpathForwardのデビドヴィック氏はいう。利害関係者がプロセスに関与し、ユーザーを教育し、法律やコンプライアンスとメディアの関係がより安心できるものになれば、過度なコントロールを求めた初期の不安は消え去る。
「コンプライアンスチームに承認してもらうつもりでアプローチしてはならない。パートナーとして関与してもらうことだ。それがよい結果につながる」と同氏。
マッスルメモリ
ソーシャルメディアのノウハウを持つ企業、すなわち政府や業界、社内のさまざまな規制をクリアしながら、ツイートやFacebook、LinkedInの投稿を上手に活用している企業は、何カ月もかけて入念に“マッスルメモリ”を構築している。その代表的な企業の1社が、米国の有名クッキーメーカーOreo(オレオ)とその親会社である米Mondelez Internationalだ。
2013年1月までに、Oreoはメッセージを毎日ツイートし、ほぼ1年間にわたって失敗から学んできた。同社は、マーケティング部門やコンプライアンス担当者と、信頼、コラボレーションに基づく力強いパートナーシップを構築し、2013年のスーパーボウルで脚光を浴びる大きな成功を勝ち取った。そのとき、Oreoは5分以内にあらゆる状況に対応したツイートを打ち出す態勢を組み、それが「暗闇でもダンクする(ミルクに浸す)ことはできる」(You can still dunk in the dark)というメッセージに結実した。
訳注:この日のスーパーボウルでは、試合中30分以上にわたりスタジアムの照明が停電し試合が中断するというトラブルがあり、その間にOreoはCMでこのメッセージを流した
しかし、ソーシャルメディアのコンサルティングを手掛ける米CMP.LYのトム・チェーナイクCEOが指摘するように、マーケティングの知的瞬間芸(異論はあるかもしれないが)に見えるものでも、実は長月の努力が実を結んだものが多い。すなわち「長い時間をかけてスキルを磨かない限り、瞬間的に合法的でコンプライアンスに抵触しない意思決定を下すことは難しい」
「(Oreoは)5分以内にコピーを作成し、許可を得て、公開した」とチェーナイク氏は振り返る。「訓練を積まなければ、こうした決断を日曜日のスーパーボウル開催中に下すことはできない。社内の人々との間に信頼関係を築き、誰を呼ぶべきかを理解しておく必要があるからだ」
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