ソーシャルツールを導入する場合、FacebookやTwitterなど無料のコンシューマ向けツール以外に、企業向けソーシャルツールという選択肢がある。最近では、ソーシャルツールのために予算を確保する企業も増えているようだ。
企業がソーシャルネットワークツール導入する場合、米Cisco Systemsや米IBM、米MicrosoftのYammer、米Jive Softwareなど、メジャーなベンダーや有力な新興企業から、さまざまな製品を選ぶことができる。だが、企業ユーザーの多くは、いまもFacebookやTwitterなど、無料のコンシューマ向けソーシャルツールを選択している。
一般的に、企業のソーシャル戦略はまだ成熟しておらず、企業向けソーシャルツールの導入率も業界の期待する水準には達していない。そう語るのは、コンサルティング企業の米Forst & Sullivanの上級産業アナリスト、ロブ・アーノルド氏だ。
サイロ化した閉鎖的な電子メール受信箱を飛び出したリアルタイムのソーシャルコミュニケーションとコラボレーションは、ビジネスシーンでもますます重要性を増しつつある。とくにモバイル、リモートといった仕事の形態が日常化するとともに、その傾向は加速してきた。ソーシャルツールは、市場でも比較的新しい分野だが、大企業もようやく企業向けソーシャルツールの価値を認めようとしている。
「企業内のソーシャルネットワークに対する一般的な認識は、数年前と比べて大きく変化した」と語るのは、米市場調査会社Current Analysisの主席アナリスト、ブラッド・シムミン氏だ。「もはやそこ(企業向けソーシャル)は目的地ではない。ユーザーがいる限り、彼らがそこで何をしていようと、コラボレーションとコミュニケーションは避けて通れない。コンシューマ向けソーシャルツールでは、今後十分に対応することはできないだろう」
企業のソーシャル戦略は一夜にして進化するものではない。しかし、多くのソーシャルソフトウェアベンダーがコンシューマ向けのソーシャルネットワーク機能をユーザーが使い慣れた自社製品に組み込みつつある、とシムミン氏はいう。「コンシューマツールはソーシャル戦略を構成するパーツの1つだが、企業によるソーシャルツールの購入を阻んだり、リプレースしたりするものではない」と同氏。「ソーシャルツールは、既存のコラボレーション能力を強化し、より柔軟なコミュニケーション手段として機能する」
会社組織が地理的に分散したり、伝統的な職場文化が変化するとともに、ソーシャルツールの予算化を進める企業IT部門が増えてきた。分散した職場環境においてコラボレーションと意思決定を瞬時に実行可能にする機能は、企業向けソーシャルツールの主要な利点の1つだ。米国の大手教育関連企業のITディレクターは匿名を条件にそう語る。
同氏の組織では最近、新しい経営陣の下で機構改革を進めており、ITディレクターとして、オフィスが分散する従業員のための効率的な作業環境構築に最優先で取り組んでいる。同社では以前、リアルタイムのコラボレーションとコミュニケーションにGoogleハングアウトなどのコンシューマツールを利用していた。今、このITディレクターはグループ用ワークスペースに、ベンダーベースの仮想コラボレーションルームの導入を検討している。
既存のインスタントメッセージング・プレゼンスツールであるCisco WebEx Connectと同じく企業のディレクトリに接続できる機能が、従業員側の仮想ワークスペースへの積極参加を促し、新しい経営陣のビジョンを徹底するのに役立つだろう、と同ディレクターは期待する。「(ソーシャルツールは)経営陣が企業文化の改革を推進するのに役立つ。仕事のやり方を変えたいと考えているからだ」と同氏。
ソーシャル戦略を成功させるためには、まず経営改革からスタートしなければならない。この教育関連企業では最近、ITロードマップを一新し、作業環境の生産性向上とソーシャルおよびコラボレーション関連の支出を拡大した。「われわれの変革はトップから始まり、組織全体に広げていく。ワークグループから積み上げていては遅くなるし、根気もいるからだ」と、同ITディレクターは言う。「当社の経営陣は、私が絶対に必要だと考えるソーシャル戦略に積極的に取り組んでいる」
企業向けソーシャルツールへの投資は、ハードウェアの購入と大きく異なる。「企業向けソーシャルは机の上に置く装置ではない」と語るのは米市場調査会社Current Analysisのシムミン氏。「企業向けソーシャルは、ビジネスプロセスに深く結び付いた微妙な色彩を持つコミュニケーションが集まったものだ。企業はそれを既存システムとどのように統合できるか、そして社内の異なる部門をいかに連携できるか見極める必要がある」
多くの企業は、既にソーシャルツールを利用している。だが、それらのツールを使いこなす一貫した戦略を持たない。そう指摘するのは、米調査会社Nemertes Research Groupの副社長でサービスディレクターのアーウィン・レーザー氏だ。社内のさまざまな部門が好き勝手に異なるツールを導入すれば、他部署の専門家との間で統一されたエクスペリエンスを実現することはできない。
米Salesforce.comのChatterなど、ベンダーは自社の統合コミュニケーション(UC:Unified Communication)やコラボレーションアプリケーションにソーシャル機能を追加しつつある。「たとえ全社的なソーシャル戦略がなくても、もう既に会社は(ツールを)手にしているはずだ」とレーザー氏。
企業向けソーシャルツールのメリットをフルに認識したいのであれば、企業はスタンドアロンの単純なポイントソリューションを選択すべきではない。この技術は、マネジメントシステムや電子メール、ディレクトリといった既存のビジネスアプリケーションを統合した幅広いソリューションの一部であるべきだ、と前出Frost & Sullivanのアーノルド氏はいう。「(ソーシャルツールは)ユーザーが今やっている仕事と統合されなければならない。なぜなら、もう1つの孤立したサイロになってしまえば、それは(ツールとしての)価値をなくしてしまうからだ」
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