あの「Keynote」も「PowerPoint for iPad」に大苦戦
「Office for iPad」「iWork」のガチンコ3番勝負、iPad用オフィスアプリの最強は?
iPadのオフィススイート市場を制するのは、iPadユーザーに定評のある「iWork」か。それともオフィススイートの雄「Microsoft Office」のiPad版か。3番勝負で白黒付ける。
米Microsoftが「Microsoft Word for iPad」(以下、Word for iPad)、「Microsoft Excel for iPad」(以下、Excel for iPad)、「Microsoft PowerPoint for iPad」(以下、PowerPoint for iPad)を同時にリリースして、米Appleの「iPad」市場に参入した。その結果、事実上のiOS用標準オフィススイートであった「iWork」との避けられない対決の舞台が整った。
ユーザーの乗り換えを図るには、Microsoftの参入は遅すぎたという意見もある。だが「Microsoft Office for iPad」(以下、Office for iPad)の充実した機能によって、iWorkはナンバーツーの座に追いやられると考える人もいる。
米TechTargetでは、Office for iPadとiWorkの両オフィススイートの機能を3番勝負で比較した。それでは、その内容を紹介しよう。
ラウンド1: Pages vs. Word for iPad
豊富なPagesのテンプレート
スタイルに関しては、iWorkのワープロアプリケーション「Pages」とWord for iPadの実力の差は、映画『Rocky(ロッキー)』に登場する世界チャンピオンのアポロ・クリードと三流ボクサーのロッキー・バルボアの試合の下馬評のように歴然としている。
試合開始のゴングは鳴ってもいないが、試合開始直後にまず感動するのは、Pagesのテンプレートの充実ぶりだ。履歴書からポスターまでバラエティ豊かなテンプレートが用意されている。
対するWord for iPadのテンプレートは、お世辞にもバラエティに富んでいるとはいえない。それぞれに用意されているテンプレートの数は、Word for iPadが14種、Pagesが60種だ。スタイルについての優劣は比べるまでもない。
操作性に配慮したWord for iPad
Word for iPadの機能的な優位性は、機能の詳細を知り、実際に文書を作成するまで分からない。どちらのアプリでも同じ作業が問題なくできる。ただしWord for iPadでは、ツールバーの「リボン」からさまざまなオプションを利用できるので、作業が簡単だ。
一方、Pagesのコマンドには、直感的ではなく機能を想像できないという問題点がある。例えばWord for iPadは、操作を元に戻すボタンとやり直すボタンは常時リボンに表示している。2つの弓なりの矢印の形が特徴的だ。それに対して、Pagesでは操作を元に戻す機能しか表示されていない。操作をやり直すには、2つのオプションが表示されるまで「Undo」(取り消す)を長押しする必要がある。
この1つの追加操作だけを理由として、平均的なユーザーがPagesからWord for iPadに乗り換えることはないだろう。だが操作の分かりやすさという点においては、若干ではあるがWordに軍配が上がる。
フォントの種類が少ないこともPagesが不利な点だ。Word for iPadでは仮想ツールボックスに多彩なフォントを用意している。しかも、非常に簡単に使用できる。一方、Pagesで書式、リスト、レイアウトのオプションを使用するには、ツールバーの絵筆のアイコンをタップする必要がある。Word for iPadでは、フォントとフォントサイズは上部リボンに分かりやすく表示されており、1回のタップで調整できる。文字の色、蛍光ペン、配置、行間、箇条書き、段落番号などについても同様だ。
画像操作もWord for iPadに軍配
Pagesにはもう1つ不利な点がある。それは画像を自由な角度で回転する機能がないことだ。Word for iPadにはこの機能がある。図形サイズの選択肢も、Word for iPadとPagesとでは大きな差がある。Pagesでは幾つかの組み込みの3次元(3D)画像を使用できるが、選択肢は限られている。
ラウンド1の勝者はWord for iPadとなった。激しい応戦で互いに1歩も譲らなかったが、多くの有効打を繰り出したのはWord for iPadだった。
ラウンド2: Numbers vs. Excel for iPad
やはりテンプレートが充実したNumbers
AppleはNumbersを「モバイル端末向けに設計した非常に革新的なスプレッドシートアプリ」だと主張している。非常に大胆な発言だが、最低限の機能のみを備えたExcel for iPadと比較してみると、その発言にうそ偽りがないことが分かる。
Numbersは、Excel for iPadよりも多くのテンプレートを用意している。だがその差は前ラウンドほどではない。それぞれが用意するテンプレートの数は、Numbersが31種で、Excel for iPadが16種だ。
ソフトウェアキーボードが便利なExcel for iPad
Excel for iPadとNumbersのユーザーインタフェースのレイアウトは、前ラウンドで検証したWord for iPadとPagesに類似している。Excel for iPadのリボンツールバーでは、Numbersよりも簡単に豊富な機能が使用できる。Numbersの主要コマンドは便利だが、絵筆、プラス記号、レンチの3つのアイコンをタップしないと表示されない。
Excel for iPadとNumbersにはどちらも、全ての必要なコマンドキーを利用できる便利なドロップダウン式のソフトウェアキーボードが備えられている。ただし、ソフトウェアキーボードに関してはExcel for iPadの方が先進的だ。「123」オプションをタップすると補助キーボードが表示される。これは数式の作成時に入力する数字と記号専用のソフトウェアキーボードだ。
NumbersとExcel for iPadのソフトウェアキーボードを並べて比較すると、それぞれ固有の外見的なメリットとデメリットがあるものの、どちらか一方の優位性を決定付ける要素はない。
簡単操作に配慮したNumbers
恐らく、この対決においてNumbersが圧倒的に勝っているのは、スプレッドシートを作成しやすくすることに前向きに取り組んでいる事実だ。書式設定済みのテンプレートが多数用意されているので、特に初心者のユーザーは、リポートやスプレッドシートを簡単に作成できる。
この点について、Excel for iPadは誕生当初から苦戦している。実際に使用すると、Excel for iPadをマスターするのは非常に難しいかもしれないが、ユーザーフレンドリーな雰囲気のNumbersは簡単にマスターできるだろう。
とはいえ、Numbersは万人向けというわけでもない。どちらを選ぶかは、ユーザーの熟知度と体得したスキルのレベルの両方に大きく左右される。Excel for iPadではできてNumbersではできない処理もある。そのため、ExcelスプレッドシートをNumbersで開くと正しく表示されないことがある。例えば、書式設定の問題やスパークラインが描画されないなどの問題だ。
だが平均的なユーザーを念頭に両者を比較すると、Numbersの方がExcelよりもわずかに勝っているといえるだろう。
ラウンド3: Keynote vs. PowerPoint for iPad
豊富さだけではないKeynoteのテンプレート
iWorkは、同スイート最強のアプリケーションとして名高いKeynoteを引っ提げて、純粋なプレゼンテーションと外観を比較する最終ラウンドに堂々と挑む。最終ラウンドで真打ちが登場するほど楽しみなものはない。
このラウンドでもKeynoteの方にテンプレートテーマが多く用意されていることが一目瞭然だ。だがそれだけではない。Keynoteのテンプレートテーマの外観は、はるかに魅力的で全体的に動きが滑らかだ。対するPowerPoint for iPadのテンプレートの外観は、さえなく退屈に見える。そのため、魅力的なプレゼンテーションを作るには想像力を駆使してさまざまな工夫を凝らす必要がある。
両アプリのコマンドの利用方法については想像に難くないだろう。PowerPoint for iPadは先述のリボンツールバーから、Keynoteはツールバーにある絵筆、プラス記号、レンチの3つのアイコンから使用する。どちらのアプリでも、それぞれのコマンドの使い方を理解していれば、必要なコマンドを見つけるのはそれほど苦労しないはずだ。
Keynoteは、魅力的な遷移効果のポートフォリオによって幾つか強力なパンチを繰り出している。だがPowerPoint for iPadも引けを取らず、大接戦といったところだ。
小粒な機能がプレゼンを引き立てるPowerPoint for iPad
PowerPoint for iPadが本領を発揮してKeynoteを追い詰めるのは、試合終盤直前である。プレゼンテーションが完成して発表本番を迎えると、PowerPoint for iPadは、ちょっとした各種機能を使用して素晴らしい効果を引き出すことができる。
カスタマイズ可能なレーザーポインターとペンツールが、その一例だ。この機能を使用すると、プレゼンテーションの発表中に、円や下線などを描画して画面上の特定の領域をハイライトできる。
この追加機能によって、PowerPoint for iPadはもう1つの付加価値を生んでいる。それは、プレゼンテーションの閲覧、編集、作成だけではなく、プレゼンテーションの発表に最適なプラットフォームという価値だ。
ラウンド3は、開始直後からほぼ互角の戦いを見せていたが、PowerPointがわずかに優位に立ち勝利した。
真の勝者はどちらか?
理論上の比較と実際の比較をした結果、辛くもOffice for iPadがiWorkに勝り、“満場一致”で勝利を手にした。圧勝とはいえないが、この対決における勝者の称号を与えるに値する。
まだ説明していないが、Office for iPadとiWorkの全体的な対決の決定打となる要素が1つある。それはユーザーが製品についてどれだけ熟知しているかだ。
長い間クライアントPCの「Microsoft Office」を利用し、多くの場合は専門家レベルの知識を持つユーザーが新しくiPadへ乗り換えた場合、iWorkへの切り替えを拒む正当な理由があるだろう。一方で、Officeなしで済ませられるようになった(またはそもそもOfficeを使用する動機が無かった)根っからのiPadユーザーは、Officeがリリースされたという理由だけで、突然iWorkの使用をやめたりはしないだろう。
編集機能を含めた完全なOffice for iPadを使用するには、オンラインオフィススイート「Office 365」の年間サブスクリプション料金が必要になる。これは致命的な問題だ。2013年秋以降にiPadを購入したユーザーであれば、誰でも無料でiWorkを利用できる。一方のOffice 365は、個人ユーザー向けの「Office 365 Personal」(国内未提供)でもユーザー1人当たり月額6.99ドル、または年額69.99ドルが必要だ。
豊富な機能と、既存の“Office依存”のインフラとの高い親和性という観点では、各項目でOffice for iPadがiWorkよりもわずかに優れている。だがコストが重要な場合は、iWorkが無料で利用できることから形勢が逆転し、この対決は引き分けになるだろう。
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