今なお続く“Windows XP騒動”
Windows XPサポート終了でMacユーザーが増えた複雑な背景
米Microsoftの「Windows XP」のサポート終了は、販売パートナーにプラスの影響をもたらしているという。具体的には、OSのアップグレード、小型デバイスへの移行、クラウド導入などにつながっている。
米Microsoftが「Windows XP」のサポートを終了した2014年4月8日(米国時間)まで、さまざまな警告がなされていた。だが、サポート終了は、この世の終わりとはならなかった。多くの販売パートナーは、2年も前からサポート終了について顧客に通知し、Windows XPから別のOSに移行する作業に取り組んできた。この1年の間に多くの移行作業が行われた。だが、その間も多くのMicrosoftパートナーから意外な報告が寄せられている。その大半はビジネスへの恩恵だ。
米Softchoiceはトロントを拠点にビジネスの大部分を米国で展開しているMicrosoftパートナーだ。同社でシニアマネジャーを務めるデイビッド・ブリスボイス氏は、Windows XPのサポート終了が同社のビジネスに波及効果をもたらしていると話す。
2種類に分けられるユーザー
「Windows XPのサポート終了は、当社の顧客が物事への取り組み方を変える好機となった」とブリスボイス氏は振り返る。Softchoiceは、複数の垂直市場で中規模の企業を対象に強力な存在感を示しているMicrosoft Goldパートナーだ。
ブリスボイス氏によると、顧客は2種類に分類されるという。変化を前向きに捉えるようになるか、規則に従うかのいずれかだ。前者に分類される顧客は、Windows XPのサポート終了をデスクトップPCへのアプリケーション配信について再考する機会と捉えている。一方、後者に分類されるまじめな顧客は、アップグレードしたデバイスとOSを使いながらも、これまでと同じやり方を継続する。
Softchoiceが抱える顧客の約60%は、この2年間にWindows XPに関する対策を講じた。このうち50%は、サポート終了の18カ月前から取り組み始め、残りの50%は1年前から取り組み始めている。Softchoiceでは、Windows XPを実行しているコンピュータの割合が50%を超える顧客の数がこの1年で3分の1から5分の1(20%)に減少したという。
Microsoftは、Windows XPのサポート終了計画について販売パートナーに十分な事前通知を行った。この通知は偶然にもITインフラストラクチャが変化する時期と重なった。例えば、クラウドコンピューティングやITのコンシューマライゼーションだ。
Softchoiceと米LAN Systemsのどちらも、Windows XPのアップグレードが「Office 365」の導入をけん引する現象を経験している(LAN Systemsは米ジョージア州のバークレーレイクを拠点に活動しているMicrosoftパートナーだ)。LAN SystemsのCEO兼創業者のメアリー・へスター氏は、同社のマネージドサービスを利用している顧客の多くはWindows XPのアップグレードとOffice 365への移行を同時に行ったと語る。
Office 365でサービスが停止する状況が2014年6月下旬に発生しているにもかかわらず、多くの顧客にとってクラウドは有利に働き、メリットはリスクを上回るとへスター氏は自身の見解を示している。
Microsoft GoldパートナーのLAN Systemsのビジネスの大部分は、マネージドサービスで成り立っている。つまり、多くのLAN Systemsの顧客は過去1年間にWindows XPの移行を継続して行っている。
「マネージドサービスを利用していない顧客は、Windows XPのアップグレードを遅らせがちである。また、ITの年間予算を計上していない傾向も見られる。そのため、一度にアップグレードを行う財務的な影響に対応する準備はできていない」とヘスター氏は指摘する。
Softchoiceの変化を前向きに捉える顧客がクラウドアプリケーションを導入したのは、偶然にもBYOD(私物端末の業務利用)トレンドの出現とWindowsユーザーによるAppleデバイスへの乗り換えが顕著な時期と重なった。「一部の顧客にとって、Windows XPのサポート終了は、『Windows 7』への移行ではなく環境の転換を意味するものだった。実際、選択肢がある場合、多くの顧客の従業員は、MacやiPadなどのApple製品を使用することを選んだ」とブリスボイス氏は話す。
Appleデバイスの導入は、Software as a Service(SaaS)アプリケーションなどのMicrosoftサービスの販売を促進したとブリスボイス氏はいう。BYODとクラウドにより、顧客の関心はOSからデバイスに配信されるアプリケーションに移っていると同氏は付け加える。
米バージニア州レストンにあるMicrosoft GoldパートナーのBusiness Engineering Inc.(以下、BEI)の事業主であるマイク・ジェニングス氏は、Windows XPの移行とクラウドアプリ導入の間に関連性は見られないと話している。BEIは医療分野のITを専門に中小企業にサービスを提供している。現在、BEIが管理しているコンピュータの約30%でWindows XPが実行されている。
「当社の多くの顧客にとって、デスクトップPCにアプリケーションを配信する方法を変えることは複雑で大きな決断だ。事業の経営方法に大きな変化をもたらすことになる」(ジェニングス氏)
BEIは米Intuitの財務会計ソフト「QuickBooks」をオンラインで提供し、顧客はホスティング型のメールサービスを使用している。同社では、ホスティング型の電子医療記録システムに移行した顧客もいる。だが、それはWindows XPの移行に関する判断を下す前のことだったとジェニングス氏はいう。
BEIにとって、Windows XPのサポート終了がもたらしたビジネスチャンスの大部分を占めていたのはハードウェアとソフトウェアのアップグレードだった。同様に、Softchoiceはハードウェアのアップグレードとシンクライアントの評価で新たに利益を上げている。また、古いデバイスから新しいデバイスにデータを転送して、古いデバイスを廃棄するという専門的なサービスの分野でもビジネスチャンスを獲得している。
BEIでは動きが遅い組織への対応として、マネージドサービスを利用している顧客に2014年末までアップグレードの猶予期間を与えている。Windows XP搭載デバイスは、2014年末でマネージドサービスの契約から除外される。
「マネージドサービスの契約で2014年末までWindows XP搭載デバイスに対応することは当社にもリスクがある。そのために何らかのコストを負担することになるだろう。だが、これが当社で採用することにしたアプローチだ」とジェニングス氏は語る。Windows XP搭載デバイスで2015年に行われた作業は定額契約外の扱いになると付け加えている。
故障してから対応というモデルでWindows XP搭載コンピュータを修理するアプローチは、BEIや米カリフォルニア州フレズノを拠点に活動しているValley Network Solutionsのようなマネージドサービスパートナーにはコストが掛かる。啓蒙活動のかいなく、Windows XPの使用を継続している企業もあるとValley Network SolutionsでCEOとCIO(最高情報責任者)を兼任するダニエル・ダフィー氏はいう。
ダフィー氏の忠告を聞き入れず、Windows XPからアップグレードしない中小企業顧客の10%については、今後もサポートを継続するという。だが、Windows XPシステムのサポートに掛かるコストをまかなうため、そのような顧客が支払うサポート料金は高くなる可能性が高い。「セキュリティの問題も潜んでいる。そのうちWindows XPからアップグレードせざるを得ない状況になるだろう」とダフィー氏は推測する。
Windows XPに関してへスター氏が驚いたのは、10年も前にリリースされたOSから移行することに対して顧客が示す強い抵抗だ。「一部の企業はWindows XPに多額の投資を行っており、使い慣れたOSに満足している。だが、自動車に同じ態度は取らないだろう。誰もが最新鋭のものを欲しがる」とヘスター氏は述べている。
とは言うものの、一部の企業にとってアップグレードのコストが高いことにもヘスター氏は理解を示している。特に、まだ経済の先行きが不透明な現状を考えればやむを得ないことだろう。
Softchoiceにとって想定外のビジネスチャンスは「Microsoft System Center Configuration Manager」(SCCM)に関するものだった。SCCMを使用すると、管理者は全社レベルでデバイスとアプリケーションの導入/セキュリティを管理できる。
Microsoftは、SCCMを契約に含めることでSCCMの販売で成功を収めているとSoftchoiceのブリスボイス氏はいう。だが、多くの企業はSCCMを所有していても、導入していないかパッチ管理など限られた用途にしか使っていない可能性がある。
「当社では、変化を前向きに捉える顧客に対して、SCCMに関する専門サービスの契約締結を始めている。さまざまなモジュールを実装し、顧客に合わせてカスタマイズしている。これは、この18カ月に発生した大きなビジネスチャンスだ。だが、対応が追い付いていないのが現状だ」とブリスボイス氏は補足する。
SCCM 2012の主要機能の1つは、企業がユーザーを中心としたBYODの管理を行うためのサポート機能である。
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