ハイパーバイザーベースとの違いを解説
「Docker」席巻の理由はこれだ、コンテナベースの仮想化を他と比較する
コンテナベースの仮想化がもたらすメリットに業界が注目している。特に従来のハイパーバイザーベースの仮想化が持つ弱点をカバーする点が評価されている。それぞれの技術を比較する。
昨今、仮想化は一般的なアプローチになっている。仮想化によってサーバリソースを共有したり、システム管理者が柔軟にオンデマンドの仮想インスタンスを構築したりすることが可能になっている。だが、ハイパーバイザーベースの仮想化にはパフォーマンスとリソース利用効率について幾つかの問題がある。この問題解決を目的として誕生した新たなアプローチが「コンテナベースの仮想化」だ。
ハイパーバイザーの難点
多くの点において、現在のハイパーバイザーベースのアプローチは、究極の柔軟性を実現することに重点をおいて考案されている。他のインスタンスの動作に関係なく、各インスタンスは承認された任意の種類のゲストOSを実行できる。ハイパーバイザーベースの仮想化は、さまざまな機能を提供した一方で、業界が自ら招いた困難な状況が明らかになりつつある。ハイパーバイザーベースの仮想化の場合、各インスタンスには、ゲストOSとそこで動作する全てのアプリの完全なコピーが必要になる。運用の観点では、この仕様によって、かなり負荷が高くなり、効率とパフォーマンスは低下する。
そもそも各OSとアプリのスタックはDRAMを使用している。シンプルなアプリを実行している小さなインスタンスにとって、これは極めて大きなオーバーヘッドとなる可能性がある。また、パフォーマンスに不利な条件も少なからず伴う。それから、全てのOSとアプリのスタックイメージをロード/アンロードするには時間がかかる。このような処理を行うと、サーバへのネットワーク接続に掛かる負荷も高くなる。最悪の場合、この状況により「ブートストーム」のような問題が起こる。例えば、午前9時に何千台もの仮想デスクトップが一斉に起動すると、従業員はコーヒーを2杯飲めるくらいの時間待たされることになる。また、クラスタ内の他のトラフィックは事実上ロックアウトされる。
仮想サーバをセットアップする目的の1つは、新規インスタンスを迅速に作成することだ。ネットワークストレージからイメージをダウンロードするにはかなりの時間がかかるが、この時間は起動時間に必ず含まれることになる。起動にかかる時間が長くなると、システムの弾力性は実質的に制限されることになる。
ここで登場するのがコンテナである。コンテナの目的は、上述の複数のOS/アプリのスタックに関する問題を解決することだ。これは今となっては当たり前に思える、以下の情報に基づいている。
- 特定のサーバの全インスタンスで同じOSを使うことは、大半のデータセンターでは実質的な制限にはならない。変更はオーケストレーションによって簡単に対処できる
- 多くのアプリスタックは同一である(LAMPなど)
- ローカルのHDDにOSのコピーを保持すると、大規模なクラスタではアップデートが複雑になる
基本的にコンテナはOSとアプリのイメージを一度だけメモリに読み込む。多数のイメージを起動しても、ネットワークとストレージの負荷は高くならないため、この処理はネットワークディスクから行うことができる。また、追加でイメージを作成しても、共通イメージをポイントするだけなので、メモリはほとんど消費しない。
コンテナは、特定のサーバで実行できるインスタンスの数を倍以上に増やすことができる。これが大幅なコスト改善をもたらすのは明らかだ。だが、インスタンスが2倍になれば、インスタンスを実行するサーバのI/O負荷も2倍になる。そのため、物事は慎重に進めなければならない。
深刻なブートストームを解消する以外に、コンテナベースの仮想化がパフォーマンスの向上をもたらすかどうかを把握する必要もある。ディスクIOPSは改善されるだろうか。また、コンテナによってネットワークの効率化と待ち時間の短縮が実現されることで、インスタンス数が多くなるという問題は帳消しになるのだろうか。
現時点で最も信頼性が高い調査は、米IBMのIBM Researchが行ったものだ。その調査の主要指数では、コンテナはハイパーバイザーに対して著しくパフォーマンスが向上したことが明らかになった。この結果から、調査対象となった全分野で、コンテナがネイティブプラットフォームとほぼ同じ速度を実現していることが判明した。ただし、ネットワーク遅延の調査は、まだ完了していない。
IBM Researchの調査では、コンテナのパフォーマンスは複数の分野でハイパーバイザーより優れていることが判明した。コンテナは2対1でハイパーバイザーのパフォーマンスを上回り、LINPACKベンチマークではネイティブプラットフォームに迫る結果となった。コンテナのIOPSは、ランダムディスク読み取り(米Red Hatの「KVM」でハイパーバイザーが4万8000であるのに対してコンテナは8万4000)とランダムディスク書き込み(KVMでハイパーバイザーが6万であるのに対してコンテナは11万)がハイパーバイザーより優れているという結果が出ている。また、ローカルのSSDではさらに良好なSQLのパフォーマンスが実現される。
ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)コミュニティーも、仮想化とコンテナに注目している。ブラジルの教皇庁立リオグランデ・ド・スル・カトリック大学による研究では、その点に焦点を当てている。
その研究論文の執筆者は次のように述べている。「仮想化システムのオーバーへッド(CPU、メモリ、ディスク、ネットワークなど)が減少しなければ、HPCは仮想化システムを活用することはできない。だが、コンテナベースの全システムでは、CPU、メモリ、ディスク、ネットワークのパフォーマンスがネイティブプラットフォームに近いことが明らかになった」
ハイパーバイザーベース仮想化の先駆けである米VMwareの「VMware vSphere」についても、Dockerのベンチマークと比較が行われている。この比較でも、コンテナでネイティブプラットフォームに近いパフォーマンスが実現されているという傾向が見られた。だが、VMwareのハイパーバイザーに対するコンテナの優勢さは、IBM Researchのリポートほど大きくない。VMwareの高度にチューニングされたアプローチによってオーバーヘッドが軽減されることに起因する結果といえるだろう。なお、VMwareのリポートでは、ディスクI/Oについては言及されていなかった。
広範なユースケースにおけるセキュリティという観点では、コンテナは依然として堅牢性を具体的な形で示す必要がある。だが、コンテナによって、ハイパーバイザーベースの仮想化に伴うパフォーマンスに関する問題の大部分は解決される。コンテナが簡単かつ高速に導入できるようになれば、仮想化の分野を席巻するのは確実だ。その時が来たら、あっという間に情勢は変化するだろう。
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