安全とプライバシーのはざまで揺れる米国
iPhoneのロック解除論争で浮上した「プライバシーと人命、どちらが重いのか」問題(1/2 ページ)
「iPhone」のロック解除をめぐるAppleのFBIとの論争は、FBIによるロック解除成功を機に収束に向かおうとしている。だが国家の安全とプライバシーをてんびんに掛けたこの論争は、より大きな問題の前兆にすぎないとの声もある。
2015年2月29日~3月4日に米サンフランシスコで開催されたセキュリティイベント「RSA Conference 2016」では、米下院議員のマイケル・マッコール氏が暗号化委員会に関する法案を推進する主張をした。2015年2月29日に提出されたこの法案は、「McCaul-Warner Commission on Digital Security」(デジタルセキュリティに関するマッコール/ワーナー委員会)を設立するためのものだ。
共和党で米テキサス州選出のマッコール氏は、米下院国土安全保障委員会の委員長を務める。米上院議員のマーク・ワーナー氏(共和党・バージニア州選出)も、マッコール氏と協力してこの法案に取り組んでいる。この法案は、上院議員のロン・ジョンソン氏(共和党・ウィスコンシン州選出)からも支援を受けている。
ゴーイングダーク問題解決の妥協案
「世界は変わった。爆撃を投下するだけでは勝利を得られなくなっている。悪意のある攻撃者は米国当局の手の届かないところで活動しており、これには攻撃を裏で操る国家自体も含まれる。この『ゴーイングダーク』問題は、テクノロジーで解決できると考えている」。質疑応答のセッション中にマッコール氏はこう語った。ゴーイングダーク問題は、コミュニケーション手段の多様化で監視が難しくなる問題のことを指す。
マッコール氏は29日の声明で次のように述べた。「国家の安全とデジタルセキュリティを同時に守るという課題は複雑だ。Appleと米連邦捜査局(FBI)との間の論争は、もっと大きな問題の前兆にすぎない。もっと大きな問題に対処しない限り、このシナリオはほぼ確実に繰り返されるだろう」
2014年に米カリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた、銃乱射事件の攻撃者の1人が使用していたスマートフォン「iPhone」のロック解除をめぐって、AppleとFBIが対立してきた。この両者の対立の観点からすると、今回の法案は妥協的な方策だとみられる。
提出された法案の目標は地味で、超党派の諮問委員会を設立することだ。この委員会はテクノロジー業界、インテリジェンスコミュニティー、プライバシー保護推進派の専門家で構成し、暗号化されているデータへのアクセスに関する問題を調査する。
この委員会では、できる限り法律の形を取って、ある問題に対処するための解決策を提言することになる。それは、どうすればデータの安全を保護しながら、国家の安全も確保できるのかという問題だ。
マッコール氏とワーナー氏は、発行した文書で次のように述べている。「私たちが提唱しているのは、関係者全員を巻き込む形の独立したデジタルセキュリティ委員会だ。それも決定的なものが必要になる。この委員会の目的は、プライバシーとデジタルセキュリティを守るための提言を練り上げることにある。それと同時に、犯罪者やテロリストが法の網を逃れるために、こうしたテクノロジーを悪用しないようにする方法も探っていく」
RSA Conference 2016でマッコール氏は、プレゼンテーションのタイトルに含まれる「安全とセキュリティ(security vs. security)」というキーワードを何度も引き合いに出して説明し、どうすれば自国の安全を守りながら自分たちの私的なデータも保護できるだろうかと参加者に問い掛けた。
「大本をたどることは難しい」と述べる一方で、米政府の人事管理局(OPM)で起きた情報漏えいの裏には中国人の存在があることをマッコール氏は繰り返し指摘した。「現在に至るまで、OPMのデータが中国によって悪用されていることは疑いようがない」(同氏)
マッコール氏は、米国家安全保障局(NSA)局長で米海軍大将のマイケル・ロジャース氏によるRSA Conference 2016でのコメントにも同調している。ロジャース氏は、2015年にウクライナで発生した重要なインフラに対するサイバー攻撃に言及し、今後こうした攻撃はさらに増えるだろうと発言。「この問題解決に向けて共有および協力する組織が米国には必要だ。傍観者の立場を取るなら全員の脆弱(ぜいじゃく)性が増大することになる」と語った。
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