「ダークWeb市場」掃討に挑む世界の法執行機関
匿名通信「Tor」ユーザーの身元は“ほぼ確実”にばれる――専門家が忠告(1/2 ページ)
違法商品の売買のためにインターネットで闇取引をしたとみられる利用者が、世界各地の法執行機関によって逮捕され、取り調べを受けている。その背景には何があるのか。
一般的な検索エンジンからは検索できず、アクセスするのに特別な権限や設定、ソフトウェアが必要なWebサイト群「ダークWeb」。このダークWebを悪用して違法商品の売買に関わった疑いのある利用者について、世界各地の法執行機関が協力して逮捕や取り調べを進めている。今後はダークWebを介して違法な商品やサービスを取引する闇市場(以下、ダークWeb市場)を匿名で利用できるとは考えない方がよいと、専門家は指摘する。
今回の取り締まりは、国際的なダークWeb市場制圧活動「Operation Hyperion」の一環だ。この活動は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、欧州刑事警察機構(ユーロポール)のメンバーの強力を得て、米国のさまざまな連邦法執行機関が主導する。米国の移民税関捜査局(ICE: Immigrations and Customs Enforcement)の発表によると、取り締まりは2016年10月22日~28日に実施。ターゲットは主要ダークWeb市場で違法薬物をはじめとする違法な商品やサービスを売買する利用者だった。
ダークWeb市場に挑む法執行機関
Operation Hyperionは、ダークWeb市場で違法薬物などの商品の売買に関わる犯罪に法執行をするための数多くの手掛かりにつながったとICEは説明する。「この活動は、ネットワークを隠匿する新たな方法や傾向を特定し、ダークWebにおける違法な商品やサービスの不正取引と戦い続ける法執行機関の力になる」(ICE)
米国の連邦捜査局(FBI)は、Operation Hyperionを「オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国の法執行機関で構成される『Five Eyes Law Enforcement Group』(FELEG)による頭脳の産物」と称している。FBIは、ダークWeb市場で違法商品を購入した疑いのある米国内の人物「150人以上に接触した」と説明する。容疑者の中には、違法活動への関わりを認めた者もいる。
ニュージーランド当局は、国内でダークWebや違法サイトから違法薬物を購入した人物を160人特定し、事情聴取をした。警察は今後も取り締まりを強化するという。「インターネットを利用して違法薬物を購入し、処罰を免れようとする犯罪者たちに、それが不可能であることを伝えるメッセージになっただろう。違法サイトはもはや極秘ではない」。同国の国立ハイテク犯罪対策グループでマネジャーを務めるケリー・ナイト氏は、こう説明する。「警察は違法サイトを見張っている。税関と連携して商品を追跡し、住所や個人を特定できる」(ナイト氏)
王立カナダ騎馬警察(RCMP: Royal Canadian Mounted Police)は「大量の商品を押収」し、ケベック州を拠点とする国際的麻薬業者に接触した容疑者を少なくとも1人拘束したと発表した。スウェーデン警察も、ダークWeb市場で違法商品を購入した疑いのある容疑者約3000人を特定したことを表明済みだ。
FBIは「使える捜査手段を全て駆使して、売り手や買い手、ダークWeb市場の管理者、市場の技術インフラをターゲットに捜査した」という。だがFBIがどのようにしてダークWeb市場の匿名ユーザーの身元を暴き、郵送された荷物を追跡したかは明らかにしていない。FBIは2016年11月時点で、この問い合わせに答えていない。
専門家によれば、Operation Hyperionによって、匿名通信システム「Tor」のエンドユーザーやダークWeb閲覧者の匿名性が保証されないことが証明されたという。米国バージニア州ハーンドンに拠点を置くROMAD Cyber Systemsのイゴール・ボロビッチCEOは、FBIは「極めて高い信頼性で、Torユーザーの身元を明らかにできることを何度も証明している」と話す。
「現時点では、事実上Torの匿名性は失われ、そのエンドユーザーはいつでも検挙され得ると考えてよい」とボロビッチ氏は語る。「Operation Hyperionは、Torユーザーの身元を明らかにする手段を数多くそろえている可能性がある。ダークWebの利用者は、匿名性が保たれるなどと考えてはいけない」
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