2017年08月24日 08時00分 UPDATE
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Computer Weekly製品導入ガイドそれでもS/4HANAに移行しないSAPユーザーの本音

Hillarys Blindsはビジネスプロセス最適化のため、SAP CRMをOracleからHANAプラットフォームへと切り替えた。

[Brian McKenna,Computer Weekly]
Computer Weekly

 分析やビジネスアプリケーションの運用強化を目的に、SAP HANAの利用を選択した顧客は少なくない。だがそれほど数が多いわけでもなく、声もあまり大きくない。

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 英国でブラインドの製造と販売を手掛ける中堅企業のHillarys Blinds(本社ノッティンガム)は、高速インメモリデータベースのHANAを導入した。

 同社は1971年、トニー・ヒラリー氏が自宅のガレージで創業した。30年後、同社はClose Brothers Private Equityに売却され、今は別の投資会社European Capitalの傘下にある。同社は小売店やショールームを持たず、注文を受けてから採寸して製造する、いわばWeb用の営業モデルにこだわってきた。同社はHANAでSAPビジネスアプリケーションを運用している世界5000〜6000社の中の1社だが、分析用途ではさらに多くの企業が採用を予定している。

 SAPが2017年1月に発表した2016年通年の業績によると、「S/4HANA」を導入した顧客は前年比で倍増して5400社を突破した。これは同社の顧客ベース34万5000社の1.6%に相当する。だが、英国とアイルランドのSAPユーザーグループが296のユーザー組織を対象に実施して2016年11月に発表した調査では、顧客の5%がS/4HANAを利用していた。一方で、この顧客グループの12%は、HANAベースのERPについて単純に聞いたことがないと回答した。

主力製品

 今、SAPのカラム型インメモリデータベースは、データベース販売に乗り出した2010年以来、同社の戦略の要になっている。ERPのための完成されたシステムであるS/4HANAは、2015年2月以来、同社の主力製品となった。S/4HANAは「SAP Business Suite 4」を短縮した名称で、初期のSimple Financeの一部だった。

 だが、それより前の「Business Suite on HANA」のために、事態は混乱している。Hillarysが使っているのもこの製品だ。同製品はHANA上で実行できるSAPのアプリケーションスイートだが、S/4HANAのように最初からHANA専用に設計されたものではない。

 HillarysがBusiness Suite on HANAに移行した2015年8月の時点で、S/4HANAは既に発表されていた。しかしHANAに最適化されたフルERPとしてはまだ未成熟で、他の競合するデータベースに適していた。

 HillarysのICT責任者、ジュリアン・ボンド氏は、同社が「ECC6.0」ではなく「ECC5.0」を使っていた経緯を振り返る。ECC5.0よりもECC6.0の方が機能も勝っていたはずだった。

 「ECC5.0はサポート期限が終了に近づいていた。同じハードウェアでECC6.0を使うことも可能だったが、われわれはこの曲がり角の前面にいることを決めた。モバイルもわれわれの思考の前面にあった。HANAは高額の投資を伴う。パートナーを選定する際は点検が非常に重要だ。われわれはHANAの適切なノウハウを持つBirchman Groupを使い、それが大きな違いをもたらした」

 ボンド氏はHANAの主なメリットとして、顧客対応に使われるオンプレミスアプリケーション「SAP CRM 7」の高速化を挙げる。「HANAで実行する方がずっと速い。率直に言って、以前はひどかったのでそれを避けるようになっていた」とボンド氏は言う。かつてはOracle DatabaseでSAP CRM 7を運用していたという。「Oracleを悪く言うつもりはないが、単純にSAP HANAで運用した方がうまくいく」と同氏。このおかげで「顧客サービスの迅速化、通話時間の短縮、問題解決の迅速化、苦情の減少」につながったと言い添えた。

 同社の事業特有の特徴として、標準的なブラインドというものは存在しない。「われわれは在庫を製造しない。私たちにとって重要なのは、『技術的にこのブラインドは合わせられるか』という問題だ」とボンド氏は話す。

 Hillarysで採寸を担当する営業担当者は、顧客の自宅を訪問してブラインドのサイズを測る。サイズの組み合わせは200万通り、色と素材の組み合わせは50万通りある。採寸担当者はタブレットで注文を出し、ハンドヘルド端末で決済を処理する。担当者は納品までにかかる時間をSAPバックエンドシステムから引き出し、注文が入ると自動的にブラインドの製造が始まる。

 「かつてはMRP(Material Requirements Planning)を週に1回実行していた。HANAでは1日1回の実行になり、対応が迅速化できる」(ボンド氏)

 同社は現在、Magentoから提供を受けている電子商取引プラットフォームの再構築も検討しているという。「もっとリッチなWebサービスとBusiness Suite on HANAの統合を検討している」とボンド氏。

 同社は分析にもHANAを利用している。「かつては『SAP Business Warehouse』を一晩に処理できる限界まで使っていた。HANAではデータをはるかに高速処理できるので、所要時間は60%減った。これによって、SAPのモバイルプラットフォーム上にあるモバイルアプリからの情報も含めて、優れた分析情報をより高速に引き出すことができる。顧客が何に関心を持っているのか、どんな宣伝に飛び付くのかといったことについて、豊かな実像が描けるようになった」(ボンド氏)

 ボンド氏は英国とアイルランドのSAPユーザーグループ会議で頻繁に講演する。同氏によれば、中堅顧客の多くはまだS/4HANAの展開について様子見の状態にあって、ECC6.0を使い続けているという。「HANAの採用が加速するのかどうかは予測し難い。私に寄せられるのは主に、コストをどう正当化するかという質問だ」

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