バックアップの手法として「仮想テープライブラリ」という言葉をよく耳にするようになったが、その正確な意味を知る人は案外少ないようだ。テープライブラリを仮想化するとは、一体どういうことなのだろうか?
本連載のテーマであるバックアップは、今日のITにおいて最も問題が生じやすい分野の1つである。その原因としては、ITで管理する情報の量が加速度的に増加していること、また内部統制対応などのために情報を長期間にわたって保存するケースが増えてきていることが挙げられる。加えて、顧客記録など個人情報の保護に対する要求も年々高まっている。こうした状況の中、多くの企業が現在のバックアップ手法ではやがて対処できなくなると考え始めているようだ。
本連載の第1回で取り上げたように、バックアップのメディアにはテープとディスクの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがある。そして昨今では、前述のような状況を踏まえ、テープバックアップが抱えるリスクを避けるためにディスクバックアップに移行しようと考えている企業も多い。今回のキーワード「仮想テープライブラリ」は、そうしたニーズに応えるために登場したのである。
仮想テープライブラリ(Virtual Tape Library:VTL)は、今となっては特に目新しいキーワードではないが、最近何かと話題の「仮想」という言葉が使われていることもあり、ここであらためて整理してみたい。
仮想テープライブラリとは、ディスク装置上でテープドライブを疑似的(仮想的)に実行させることで、システムに対して、あたかもテープドライブが接続されているかのように見せかける仕組みのことである。例えば、世の中にはWindowsマシン上でMacを動かすようなソフトウェアがあるが、物理的に存在しないものをあるものと見せかけるという点では、仮想テープライブラリと同じである。
ディスク装置は一般的に、テープメディア単体よりも容量が大きい。そのため、システムに対してはディスク装置を単体のテープドライブとしてではなく、「大規模なテープライブラリ」として見せかけるのが一般的である。
では、なぜディスク装置としてではなく、わざわざ仮想的にテープ装置に見せかけることが必要なのか? それは、導入のしやすさを最優先した結果である。
システム運用管理の現場担当者としては、運用実績のある使い慣れたテープバックアップのシステムを、リスクを冒してまでディスクバックアップに変更したくないというのが本音だろう。バックアップシステムをテープからディスクに変更すれば、当然のことながらバックアップサーバから見ると異なる媒体が接続されたものとして認識される。そうなると、バックアップのソフトウェアが新しいディスク装置に対応していなかったり、あるいは追加のライセンスを購入しなければならないようなケースが起こり得る。
このような事態に陥ることなく、テープからディスクにスムーズに移行できるようにと考えられたのが、仮想テープライブラリである。仮想テープライブラリは、それまで行っていたテープバックアップでの運用をそのまま続行できるので、既存の使い慣れたシステムを変更することなくディスクバックアップに移行できる。データの入出力はテープフォーマットで行うので、バックアップのスケジューリングや世代管理はテープと同じように扱うことができる。また、短い期間で導入可能なことも大きなメリットである。
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