“仮想テープライブラリ”──実はディスクだってご存じでした?キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第4回】

バックアップの手法として「仮想テープライブラリ」という言葉をよく耳にするようになったが、その正確な意味を知る人は案外少ないようだ。テープライブラリを仮想化するとは、一体どういうことなのだろうか?

2009年01月20日 08時00分 公開
[羽鳥正明,EMCジャパン]

テープからディスクへの移行ニーズ

 本連載のテーマであるバックアップは、今日のITにおいて最も問題が生じやすい分野の1つである。その原因としては、ITで管理する情報の量が加速度的に増加していること、また内部統制対応などのために情報を長期間にわたって保存するケースが増えてきていることが挙げられる。加えて、顧客記録など個人情報の保護に対する要求も年々高まっている。こうした状況の中、多くの企業が現在のバックアップ手法ではやがて対処できなくなると考え始めているようだ。

 本連載の第1回で取り上げたように、バックアップのメディアにはテープとディスクの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがある。そして昨今では、前述のような状況を踏まえ、テープバックアップが抱えるリスクを避けるためにディスクバックアップに移行しようと考えている企業も多い。今回のキーワード「仮想テープライブラリ」は、そうしたニーズに応えるために登場したのである。

仮想テープライブラリとは何か?

 仮想テープライブラリ(Virtual Tape Library:VTL)は、今となっては特に目新しいキーワードではないが、最近何かと話題の「仮想」という言葉が使われていることもあり、ここであらためて整理してみたい。

 仮想テープライブラリとは、ディスク装置上でテープドライブを疑似的(仮想的)に実行させることで、システムに対して、あたかもテープドライブが接続されているかのように見せかける仕組みのことである。例えば、世の中にはWindowsマシン上でMacを動かすようなソフトウェアがあるが、物理的に存在しないものをあるものと見せかけるという点では、仮想テープライブラリと同じである。

 ディスク装置は一般的に、テープメディア単体よりも容量が大きい。そのため、システムに対してはディスク装置を単体のテープドライブとしてではなく、「大規模なテープライブラリ」として見せかけるのが一般的である。

画像 図1 仮想テープライブラリの仕組み

 では、なぜディスク装置としてではなく、わざわざ仮想的にテープ装置に見せかけることが必要なのか? それは、導入のしやすさを最優先した結果である。

 システム運用管理の現場担当者としては、運用実績のある使い慣れたテープバックアップのシステムを、リスクを冒してまでディスクバックアップに変更したくないというのが本音だろう。バックアップシステムをテープからディスクに変更すれば、当然のことながらバックアップサーバから見ると異なる媒体が接続されたものとして認識される。そうなると、バックアップのソフトウェアが新しいディスク装置に対応していなかったり、あるいは追加のライセンスを購入しなければならないようなケースが起こり得る。

 このような事態に陥ることなく、テープからディスクにスムーズに移行できるようにと考えられたのが、仮想テープライブラリである。仮想テープライブラリは、それまで行っていたテープバックアップでの運用をそのまま続行できるので、既存の使い慣れたシステムを変更することなくディスクバックアップに移行できる。データの入出力はテープフォーマットで行うので、バックアップのスケジューリングや世代管理はテープと同じように扱うことができる。また、短い期間で導入可能なことも大きなメリットである。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

製品資料 株式会社ecbeing

法人間取引において欠かせない「基幹連携」をスムーズに行うためのノウハウ

基幹システムと他のさまざまなシステムを連携させる「基幹連携」は、B2B ECなどの法人間取引において欠かせない。本資料では、基幹連携のメリット、連携方法、連携する際の注意点について解説する。

製品資料 日本情報通信株式会社

【マンガ】レガシー仮想化のその先は? ビジネスで勝つための基盤と可観測性

システムダウンの発生は、顧客離れや企業イメージ低下を引き起こすだけに、未然に防止する体制が必要となる。そこで注目したいのが、マイクロサービス化した基盤構築、さらにはオブザーバビリティによるサービスの可視化/運用の実現だ。

事例 ServiceNow Japan合同会社

社内問い合わせ件数を80%削減、EJECは全社最適なワークフローをどう確立した?

社内システムが部門や担当ごとに分断し、業務のボトルネックとなっていたエイト日本技術開発(EJEC)。そこで同社は、従業員と組織の新たな業務スタイルを支える、ワークフローの確立に着手する。その方法とは?

事例 NTTテクノクロス株式会社

海外拠点を含めて運用をリアルタイムに可視化、ダイキンが挑んだIT資産管理改革

グローバル空調機器メーカーであるダイキンでは、IT資産管理におけるさまざまな課題が浮上していた。そこで同社は、IT資産管理の仕組みの抜本的更新を決定。現在では、IT資産管理の一元管理を実現している。同社の事例を詳しく紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「Windows 10で満足」な人向けの賢いWindows 11移行法

「Windows 10」のサポート終了が迫っているものの、まだ「Windows 11」に移行していないユーザーは少なくない。そうした中で、従来の常識にとらわれない“新しい移行の形”が注目を集めている。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。