次々と新技術が投入されるバックアップ製品の数々。特に昨今ではディスクバックアップが注目を集めている。多くの現場ではまだテープバックアップが主力だが、ディスクに移行するメリットは本当にあるのだろうか?
企業が自社システムで保有するデータのバックアップを取ることは、もはや一般常識であることに疑いの余地はないだろう。
その半面、かつて導入したバックアップ環境に大きな問題が生じない限り、見直しの必要性を感じていないユーザーも多く見受けられる。また、新しい技術が次々と登場してきても、自社が抱えている問題の解決につながるものなのかどうかを見極めるのが難しいために、本当はバックアップ環境を見直したくても先延ばしにしていることが多いのではないだろうか?
また、いずれにせよ今後新たにシステムを導入する際には、おのずとバックアップも検討課題になる。その際には、今まで採用したことのない新技術も導入候補として検討する必要に迫られるだろう。
さらに昨今では、日本版SOX法の施行・適用に伴い、電子メールや電子文書を証跡として保存する「アーカイブ」の重要性も高まっている。アーカイブとバックアップは往々にして混同されがちだが、それぞれまったく異なる目的を持っている。バックアップは有事の際にデータを復旧することが目的なので、リストアに必要なバックアップデータをとってあれば問題ない。それに対してアーカイブは、有事の際に過去のデータを参照できるようにしておくことが目的だ。従って、過去に作成されたデータをすべて保管しておく必要がある。
本連載では両者のうち、主にバックアップに関する最新の技術キーワードを毎回1つずつ取り上げ、簡潔に解説していきたいと思う。ただし、バックアップとアーカイブで共通に使われる技術もあるので、アーカイブに関する話にも折に触れて言及できればと考えている。新たにシステムを導入する、あるいは今現在のシステムの見直しをする際の参考にしてもらえれば幸いである。
第1回と第2回は、バックアップデータを保存するメディアとデバイスの話題を取り上げる。バックアップデータの保存先には、大別すると「テープメディア」と「ディスクドライブ」の2種類がある。
テープは低コストであること、そして古くから使われていることから、バックアップとアーカイブの分野で一般的なメディアとして利用されてきた。
テープバックアップでは、LAN/WANの帯域幅を考慮せずとも容易にバックアップを作成して、オフサイトに保管することができる。これは、単にテープをテープドライブから取り出し、箱に入れて、リモートサイトに送るだけの作業だ。また、テープメディアを保管している間はテープドライブを稼働させておく必要がないため、不要な電力を消費しない。これは、昨今のグリーンIT推進の流れにも寄与し、データの長期保管を行う場合には重要なポイントである。
災害からの復旧を目的として、テープを複製して遠隔地に保管するケースもある。コストや運用面を考えると、これはとても導入しやすい災害対策だといえよう。ただし、万が一データのリストアが必要になった場合には、気を付けなくてはいけないことがある。リストアの手順としては、まず目的のテープを見つけて、バックアップサーバまで運ぶ作業が必要になる。そしてテープが届いてから、それをマウントして、復旧時点を決めるなど、復旧作業の手間と工数が掛かることになる。
また、保管しておいたはずのテープが見つからない、あるいはエラーでデータが読み出せないといったこともあり得る。加えて、テープメディアを搬送中に紛失したり盗難に遭ったりするという危険性もある。情報セキュリティ事故の多くは内部犯行であるという統計もあり、そもそも企業の重要なデータを搬送可能なメディアに記録すること自体がコンプライアンス上好ましくないと考える企業も増えてきている。
導入・運用コストが抑えられるという理由だけでテープバックアップを利用している企業は、表面化していないリスクがあることを認識する必要があるだろう。これまでは、バックアップメディアの購入コストだけが単純に検討されてきたが、今日では情報のアクセス性やリストア時間に関する厳格なSLA(Service Level Agreement)の要求、法令順守などの新たなリスクが顕在化しつつある。企業は、これらの隠れたコストやリスクも念頭に置いた上で運用を行う必要がある。
また、バックアップやリストアの要件が変化した場合(例えばデータの増加、あるいはバックアップウィンドウの短縮など)、テープのパフォーマンスでは対応できないケースも考えられる。日々データが増加し続けている環境においては、従来のテープバックアップではリストアに要する時間が長くなり、アプリケーションの動作に影響を及ぼす可能性も出てくる。
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