大企業向けERPとして高いシェアを持つSAPシステムのIFRS対応を説明する。ポイントになるのは目指す経営モデルとバージョンアップのタイミングだ。SAPユーザーがIFRS対応で考えるべきこととは?
わたしがSAP製システムの導入に携わり始めて15年が過ぎた。15年前といえば、SAPのERPがR2からR3に切り替わり、日本にSAPの現地法人が創立されたころだ。当時は、まずプロジェクト開始時に、SAPの片仮名用語やERPの価値をクライアント企業の皆さんに説明し、理解してもらうことから始めた。設計時には、当時の機能上の制約もあり、事業部門や部署という組織構造をどのようにSAPのマスタで表現して業績をとらえるかに悩み、また構築時には、パフォーマンスの制約にも苦労しながらも本社に導入し、次に主要子会社1社ずつ構築・導入していく、この作業を同様に繰り返したものだった。
その後、R3側もバージョンアップを繰り返し、現在は機能面でもかなりの進化を遂げてきている。また、クラウド・コンピューティング技術に代表されるようにIT自体の処理能力も飛躍し、もはやこれまでの制約は制約でなくなり、導入の幅も大きく広がり、選択股が与えられるようになった。
では、この15年で日本企業側のSAPの導入方法や範囲に大きな変化はあっただろうか。
投資対効果の面からバージョンアップを躊躇(ちゅうちょ)し、導入前のカスタムメイドシステムの名残や初期導入時のユーザー要件、そして長年の運用の中でアドオンが散在。バージョンアップを実施して新たな機能を幾つかか得たものの、ほとんどは以前と同じ。New(新)GLという複数元帳対応したモジュールの紹介は受けたが、意味合いや使い方に関する理解が進まず、Classical(旧)GLへのバージョンアップに留めた、などのユーザー企業が多いのではないだろうか。つまり、大きくは変わっていないというのが現状である。(※GLはGeneral Ledgerの略で、総勘定元帳の意味)
しかし、わが国にとってのIFRS元年である2009年、SAPユーザー企業、およびこれからSAP製品の導入を検討する企業は、これまでにない変化が求められようとしている。以下ではこの点を解説する。
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