さまざまなスペック、OS、ミドルウェアを持った仮想サーバのインスタンスを、ほんの数分でインターネット上に確保できるAmazon Web Services。同サービスの特徴と用途について解説する。
今回より、数回にわたりパブリッククラウドを使った企業向けシステム構築に際してのメリットや留意点について解説していく。本連載では代表的なパブリッククラウドとして、「Amazon Web Services」「Force.com」「Google App Engine」「Windows Azure」の4つを取り上げ、それぞれの特性や用途などについて記載する。変化の激しい分野でもあるので、記載されている情報は記事掲載時点のものであることをご了承いただきたい。第1回は、Amazon Web Services(以下、AWS)を取り上げる。
AWSは、オンライン書店で有名なAmazon.comが2002年に立ち上げたサービスであり、同社の子会社であるAmazon Web Services社(以下、AWS社)が提供している。いわゆるHaaS(Hardware as a Service)、PaaS(Platform as a Service)であるが、「クラウド」という言葉が流布する以前からサービスを行っており、その意味では老舗といえる。現在、世界の4カ所に拠点(データセンター)を置き、世界中で数十万人のユーザーに利用されている。
同社の「Amazon Elastic Compute Cloud」(以下、EC2)と呼ばれるサービスでは、コンピュータ(仮想サーバのインスタンス)を1時間単位で提供し、最も安価なものでは1時間当たり8.5セント(約8円)である。また、「Amazon Simple Storage Service」(以下、S3)と呼ばれるストレージサービスで1Gバイトのデータを1カ月預けた場合の費用は10セント(約9円)からと、これまた格安である。
オンライン書店のAmazon.com自体が膨大なコンピュータリソースを必要とするサービスであることは想像に難くない。このコンピュータリソースを安価に調達するためにAmazonは「大量仕入れ」と「共同利用」というスキームを打ち出している。自社に必要なリソースの数倍の数のコンピュータを用意し、これらを自社を含む多数のユーザーで利用するという方法である。ユーザーが増え、コンピュータの数が増えるほど、1人ひとりのユーザーが負担すべきコストが逓減していく。結果としてAmazonを含むすべてのユーザーが圧倒的な低コストでコンピュータを利用できることになる。一部では「AWS社はAmazonで余ったコンピュータリソースを他人に安く使わせている」とか「クリスマスシーズンはAmazonが忙しくなるので、AWSはレスポンスが悪い」という誤解があったが、AWS社は公的にこれらを「都市伝説」として否定している。
「低コストの共同利用」が前提なので、AWS社は個々のユーザーに対してきめ細かいサービスは提供していない。ユーザーが利用できるのは後述するように「素」のコンピュータリソースであり、利用形態は「セルフサービス」が原則。利用料はクレジットカード決済となっている。サービス開始当初は日本国内のユーザーの多くが個人ないし個人事業者に近いベンチャー企業などであったと推察される。
2009年末より、AWS社は日本国内におけるエンタープライズユーザーの開拓に着手し始めた。とはいえ、日本企業の多くが「セルフサービス」にはちゅうちょすることも予想に難くない。これを受けて少数の国内SIerがAWS社とパートナーシップを締結し、エンタープライズユーザーのニーズに対応している。
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