あなたの企業はどのような基準でSIerや製品を選ぶだろうか。予算、経験など制約の多い中堅・中小企業がベンダー選定や関係作りで失敗しないためのルールを提示しよう。
皆さんの企業では、IT関連機器や、パッケージソフトウェア、SIベンダーなどを導入する際、どのように選定しているだろうか。また、それは何を基準にしているのか。選定方法に自信を持ち、なぜその製品やベンダーを選んだのかを明確に説明できる企業は、恐らく少ないだろう。また、導入した後で、その選定を後悔することも多いのではないだろうか。
多くの企業、特に中堅・中小企業のIT部門は人員が少なく、それぞれの担当者が多くの業務を掛け持ちしている中で、こうした選定作業は飛び込み作業的であり、なかなか十分な時間が割けないのが実情だろう。また、選定作業そのものの経験がなく、どう進めたらよいのかが分からなかったり、新しいシステムを短期間で稼働させなければならないために選定に時間をかけられなかったりするケースもある。しかし、そのような状況を問題視している企業も多い。
本連載では、中堅・中小企業が限られたIT予算で満足できるIT投資効果を得る上で不可欠となる、ITベンダーの選定や関係作りのノウハウ、ITコストの適正化のポイントなど、実践に向けた「ルール」を解説していく。第1回となる今回のテーマは、「RFP(Request For Proposal:提案依頼書)」だ。
IT導入プロジェクトの成否の判断の軸はいろいろあるが、最も基本的なQCD(Quality:品質、Cost:費用/予算、Delivery:納期/開発期間)の3つの軸で見てみると、それぞれ満足できたプロジェクトは中・小規模開発でも3分の1以下しかない(JUAS日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2010」による)。その原因としては、不十分な要件定義、不十分なベンダー選定や管理が挙げられている。
要件定義はRFPの中核的な位置付けになるが、この要件定義が自社でできている場合とできていない場合とでプロジェクトの成功に大きな違いが出てしまうこともJUASの調査では明らかで、十分なベンダー選定ができているかどうかでも結果に大きな違いがある(図1)。図には開発期間についてのみ示しているが、費用や品質でも同様の明らかな違いが見られる。
この結果を見ると、RFPの作成やベンダー選定が必要である理由は明らかといえる。景気が停滞する中、効果が明確でないIT投資が許されないだけではなく、実行した投資は成功させなければならない。現場からは、経営のITに対する理解の不足を嘆く声が聞かれるが、近い将来、株主からIT投資に対する責任を問われることも考えられる。そのときに、なぜそのベンダーに発注したのか、その費用が妥当なのか、IT部門としての責任を果たしたかということも明確に説明できなければならない。たとえ株主から問われることがなくても、IT部門としての説明責任を忘れてはいけないだろう。
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