ERPとの連携で効率性が向上
読めば分かる! ERPのプロジェクト管理
企業のプロジェクトにかかわるさまざまな要素を管理するERPのプロジェクト管理機能。ERPの会計機能や人事機能と連携することで、より効率的にプロジェクトを進められる。その基本機能を紹介する。
プロジェクト管理はなぜ必要?
プロジェクト管理とは、決められた予算や納期を守り、与えられた目標を達成するためにプロジェクト全体の進捗状況を管理することである。具体的にはスケジュールや工程の管理、収支の管理などを行う。プロジェクト単位で業務を行う主な業種は、エンジニアリングや建設工事、システム開発などだが、現在はさまざまな企業でプロジェクト単位の業務を行っていて、プロジェクト管理が行われている。
プロジェクトの規模や内容は企業ごとに異なるため、管理する単位や項目も異なっている。さらに、部署や個人ごとにそれぞれ異なる手法で管理していることも多く、プロジェクトマネジャー以外はプロジェクトを把握できないケースも少なくない。
会社内の全てのプロジェクトがうまくいっているときは、個別の管理でも問題はない。しかし、問題が生じた場合は会社経営に大きな影響を及ぼすこともあるため、プロジェクト管理手法を標準化し、状況を把握できるようにする必要がある。全社で共通したルールを実行するためにプロジェクト管理システムを全社で導入することを検討する企業も多い。プロジェクト管理システムは、単体機能の製品を活用することもあるが、ここではERP内の1つの機能であるプロジェクト管理について説明しよう。
まずプロジェクト管理でよく耳にする言葉のうち、分かりにくい言葉を簡単に解説する。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)
アメリカのプロジェクトマネジメント協会PMIがまとめたプロジェクトマネジメントに関する知識体系を指す。PMBOKでは、統合、スコープ(目的と範囲)、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達の9つの「知識エリア」と呼ばれる観点からマネジメントを行う必要があるとしている。プロジェクトを実施する際に利用され、事実上の国際標準として考えられている。
WBS(Work Breakdown Structure)
WBSとは、プロジェクトの成果物や作業を細かく分けて階層構造化した図表や、それらを用いて管理する手法を指す。WBSは工数の見積もりやスケジュール管理、メンバーの割り当てなどを行う際のベースとして利用される。
EVM(Earned Value Management)
EVMは、プロジェクトの進捗状況を金銭的価値に置き換えて管理する方法である。スケジュールとコストを同時に管理し、分析が行える。一般的に、「PV(Planned Value:当初計画を立てた際の出来高)」「EV(Earned Value:実際の出来高)」「AC(Actual Cost:実際に掛かった費用)」をグラフ化し、当初計画と比べたスケジュールの差やコストの差を視覚的に把握する。
ERPにおけるプロジェクト管理
プロジェクト管理システムは単体機能製品も多数ある。それらの製品とERPにおけるプロジェクト管理の大きな違いは、ERPが統合システムであるため、他機能の各種情報(データ)と連携できる点である。その点を考慮しながら、ERPにおけるプロジェクト管理の主な機能を見ていこう。
見積もり管理
プロジェクトの見積もり情報を管理する。取引先に複数回提出した見積書の履歴を管理したり、商談管理(SFA)とひも付けて管理、また見積もり根拠となる資料をシステム上で一緒に管理する機能が含まれる製品もある。
契約管理
契約日や契約金額、納期、検収予定日などプロジェクトの契約に関するさまざまな情報を管理する。製品によっては、契約書などの文書を管理する機能を備えており、契約関連情報をプロジェクトとひも付けて一元的に管理できる。
プロジェクト原価管理・収支管理
プロジェクトごとの売り上げや原価の予定・実績を一元的に管理する。この機能により、経費や人件費、外注費など原価の当初計画と、実績との差異を確認して、問題点や改善ポイントを早い段階で把握できる。予算と実績の差異が分かることで、プロジェクト途中や月中でも適切なタイミングで改善の対応を取ることができる。グラフなどを使って予算と実績の状況を一目で分かるようにしている製品も多い。
またプロジェクトで予定している原価情報から購買申請を行う、請求予定情報から入金処理へ連携するなど、ERPの他機能に対する連携データとして利用されることも多い。
プロジェクトメンバーの管理・作業実績時間の管理
プロジェクトに参画するメンバーごとの参画時期や工数を管理する。スキル情報と連携させ、そのプロジェクトで必要なメンバーを抽出して選択するなどの機能が盛り込まれることもある。
またプロジェクトメンバーごとに当該プロジェクトの作業時間を管理し、プロジェクトの人件費を算出する際に利用することも可能である。メンバーごとの稼働状況を把握することで、作業負荷の分散やメンバー追加などの計画を立案できる。勤怠情報と連携し、給与計算に情報を反映させることができる製品もある。
作業実績入力機能は、前回の「読めば分かる! ERPの人事・給与管理」の勤務情報入力機能と同様に、他の機能に比べて多くの人が利用することが想定されている。そのため入力しやすい画面を用意している製品が多い。
スケジュール管理
工程やタスク別のスケジュールを立案し、実績の進捗状況をリアルタイムで管理できる。スケジュールを立案する際は、WBSをベースに作成することが多いため、WBSに対応した機能を備えた製品も多い。また、表計算ソフトウェアで立案したスケジュールをシステムに取り込む機能や、簡単に進捗状況を入力できる機能など、スケジュールを容易かつ詳細に管理できるよう、さまざまな工夫がなされている。
財務会計との連携
プロジェクトにかかわる全ての会計仕訳に対して、プロジェクトをひも付けて管理できる。期末時点のプロジェクトの状況に応じて、未了であれば仕掛かりとして計上し、完了であれば売上原価に計上するといった会計仕訳がプロジェクト単位で自動生成できる機能が備わっている製品もある。工事進行基準に則した会計仕訳の計上が行える製品も多い。
帳票・分析リポート
見積書など取引先へ提出する帳票の出力や、条件に合致したプロジェクトの一覧を出力する機能などがある。その他、プロジェクトの原価やスケジュール、作業工数などさまざまな要素の計画と実績との比較を行う帳票・分析リポートの出力機能を用意しているケースもある。
各種管理会計帳票においてプロジェクトを切り口として出力することで、より詳細な分析をリアルタイムで行える。例えば、経営者や部門責任者が部門リポートを見て、ある部門で利益率が悪化し始めている状況を察知した場合、部門のどのプロジェクトがどのような問題を抱えているかをプロジェクト別のリポートで詳細に確認でき、早いタイミングで経営的な判断を下すことも可能である。また上記で紹介したEVMリポートを出力できる製品も多い。
その他にプロジェクトに関する文書の管理や、プロジェクト進行中での計画変更の履歴を管理する機能などがある。
プロジェクト管理は従来、ERPの中ではあまりメインに扱われることはなかったが、最近ではプロジェクト単位で業務を行う企業向けに、プロジェクト管理中心のERP製品も幾つか出ている。プロジェクト型でビジネスを行う企業はそのような製品の活用を検討してほしい。
木塚愛美(きづかめぐみ)
株式会社ビーブレイクシステムズ 営業部 広報・営業推進チーム リーダー
外資系ERPパッケージベンダーにて、会計導入コンサルタントとしてさまざまなERP導入プロジェクトに参画。その後、2005年にビーブレイクシステムズに入社。プロジェクト管理に強みを持つERPパッケージ「MA-EYES」を中心に企業にとって“使える”業務システムを広く提案している。
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