教えて経理部長!【第4回】
内部統制を悪役にせず、業務に生かすには
ERPや経理処理を非効率にしたと評判が悪い内部統制。しかし、教科書的な内部統制の構築方法から離れて考えれば、効率的でコストの掛からない方法が見つかるはずだ。
質問
販売管理プロセスの業務要件定義を担当しています。内部統制についての書籍を読むと、さまざまな統制の手法が載っており、どこまで業務に組み込むべきなのか迷っています。経理の観点から販売管理や購買管理などの業務処理に組み込むべき内部統制について教えてください。
回答 第2回の「経理部から的確にERP要件を引き出すポイントは『仕訳で話す』」でも書いたように、情報システムで記録された取引は、最終的には、仕訳の形で会計システムに取り込まれる。それは自動仕訳か手動仕訳かを問わない。経理の観点から業務処理に求めることは、業務処理システムで作成されたデータを仕訳として会計システムに正しく登録できるようにすることである。
「正しく仕訳が登録できる」とは?
仕訳は、日付、勘定科目、金額といった項目で構成されている。「正しく仕訳が登録できる」とは、「事実に基づき、正しい日付、正しい勘定科目、正しい金額で漏れなく仕訳が登録できる」ということである。
これを詳しく説明すると以下のようになる。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 「事実に基づき」 | 会社に帰属すべき経済的な取引や事象に基づいた仕訳である |
| 「正しい日付」 | 収益、費用などの認識基準に従った計上日付である |
| 「正しい勘定科目」 | その取引の表示区分として適当と認められる勘定科目である |
| 「正しい金額」 | 収益、費用などの測定基準に従った金額である |
| 「漏れなく」 | 仕訳として登録すべき取引を全て登録する |
これは、財務報告にかかる内部統制評価制度(J-SOX)で重要となるアサーション(実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性)とほぼ同様のことを表している。つまり内部統制を業務処理に組み込むことで、正しく仕訳が登録できるようになり、間違った財務諸表を作成するリスクを低減できるのである。
内部統制は難しい?
ERP担当者が求められるのは、業務処理システムから自動仕訳データ、または手動仕訳の元データが正しく出力される仕組み=内部統制を業務処理システムに組み込むことだ。J-SOXの言葉で言い換えれば、実在性、網羅性などのアサーションを保証する仕組みを業務やシステムに組み込むということになる。だが、一般的には業務処理に内部統制を組み込むことはとても難しく、組み込むことで業務が複雑化し業務効率が低下するように思える。
関連コンテンツ
内部統制は業務処理の効率化のために
しかし、考え方を変えてほしい。そもそも業務処理における内部統制とは会計やJ-SOXのためにあるのではない。社外の取引先との取引や社内の業務を効率的に処理するために組み込むものである。この仕組みが、結果として正しい仕訳登録を保証することにもなるといえる。以下は業務処理システムに組み込む内部統制の例だ。
<例>
受注画面において、単価マスターを参照して単価入力することで入力作業を効率化し、入力間違いを防止する仕組みになっている。その仕組みは、結果として正しい金額による仕訳登録を保証する内部統制として機能する。
このように考えると業務処理への内部統制の組み込みは難しい作業ではなく、業務の効率性向上と両立するような方法を見つけられるといえるだろう。
内部統制は自由な発想で考える
確かに内部統制についての書籍を見るとさまざまな統制手法について書かれている。読んでみると作業コストが増すことばかりで後ろ向きの話になりがちである。しかし、本来、内部統制を検討するということは、どうしても必要な統制を最少のコストで実現することに知恵を絞るクリエイティブな作業のはず。教科書から離れ、自由な発想で自社の業務に合った内部統制を考えてみるとよい。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長をへて、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[セコムトラストシステムズ株式会社] SCS評価制度で重要性が増す「SASE」 制度の要求事項と機能はどう関係する? -
製品資料
[株式会社オプティム] SaaS管理やID管理などの「資産管理」をまるごとカバーする方法とは? -
製品資料
[株式会社kickflow] 3分でわかる「kickflow」 どのようなワークフローを実装できる? -
事例
[株式会社kickflow] 出前館も実践 ワークフロー刷新で得られる効果とは? -
事例
[株式会社kickflow] ワークフロー活用事例:社内システムとのAPI連携で業務効率化&統制強化を実現
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
4
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
5
「企業におけるAIの運用」に関するアンケート
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
8
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
9
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
3
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
4
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
5
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
6
AI活用を停滞させる「2:6:2の壁」を乗り越えるためのポイントとは?
-
7
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
8
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
9
複雑な組織構造で一度は頓挫した電子化、東京女子医科大はどう全学展開したか
-
10
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー