教えて経理部長!【第3回】
IFRS導入、ERPシステムで考えるべきは「A-E」
ERPシステムの選定、導入で直近に考えないといけないのがIFRSへの対応だ。ただ、IFRS自体がまだ本決まりではないため、導入は難しい。経理部とコミュニケーションを取りながらどう進めるべきか。
質問
IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)導入の話が進んできますが、上層部から情報システムにどれくらいの影響があるか調査するよう指示が出ました。しかし、経理部に聞いても「まだまだ検討中」との返答があるのみで、明確な方針が決まっていないようです。情報システム部としてはどう対処したらよいでしょうか?
経理部は急いで方針を示す必要性を感じていない
回答:確かに経理部で明確な方針が決まっていなければ、情報システム部において対応方針を決めることはできない。しかし、情報システム部としては、ERPシステムに重要な影響があるのであれば、情報化投資計画の中に早めに織り込んでおく必要があり、大まかな方向性だけでも示してほしいというのが正直なところだ。
一方、経理部としてはIFRS導入における会計処理方法の決定は経営に与える影響が大きいので、時間をかけて慎重に検討し、経営陣や監査法人の合意を得てから社内に発表すべきと考えているのではないだろうか。
また、会計基準のコンバージェンスが進行中で、IFRSを強制適用する日程が未定である現在、経理部としては急いで方針を示す必要性を感じていないというのも実情だと考えられる。
情報システム部の対応
こうした状況で、情報システム部から経理部に対して、IFRS導入に対する明確な方針を早急に示すように迫ったとしても事態に進展は見られない。それよりも情報システム部ではIFRSと日本基準との差異として議論になっている会計基準などの項目を、下記の(A)~(E)に区分して整理することに取り掛かってはどうだろうか。これにより情報システム部で検討すべき範囲が明確になる。
- (A)当社には関係ない
- (B)情報システムには影響がない
- (C)情報システムに影響する可能性があるが運用でカバー可能
- (D)システムの改修や再構築が必要となる可能性があるが短期で対応可能
- (E)システムの改修や再構築が必要となる可能性があり、対応に長期を要する
検討しなくてもよいことを明確にする
(A)は、自社に該当する事象がないため、IFRS対応自体を検討する必要がない項目だ。例えば会社にリース取引がなければリースの会計処理について検討する必要はない。(B)は、そもそも現在も情報システムからのデータを基に経理処理をしていない項目だ。保有する有価証券が少なく表計算ソフトで十分に管理ができているのであれば、IFRSの有価証券に関する規定により情報システムが受ける影響を検討する必要はない。
現在、IFRS対応方針が明確に決まってなくても、(A)や(B)に該当する項目は比較的容易に特定できる。IFRSの会計基準の中で(A)や(B)に該当する項目は多いと考えられるため、該当項目を特定することで、情報システム部で検討しなければならない範囲を大きく絞ることができる。
今、検討すべきことを明確にする
次に(E)を特定する。(E)は情報システムに大きな影響を与える可能性がある項目で、代表的な例として固定資産の会計処理が挙げられる。減価償却方法の変更や減損の戻入れの実施などが、システムに大きな影響を与える可能性がある。従って、システム改修の可能性や改修方法についてあらかじめ情報収集し、検討しておく必要があるだろう。
このように考えると、今、情報システム部で検討しなければならないのは(E)のみとなる。(E)に該当する項目はそれほど多くはないので、経理部に協力を要請して早めに該当する項目を特定するのがいいだろう。場合によっては、外部の専門家の協力を仰ぐことも効果的だ。残る検討項目は(C)と(D)だ。(C)や(D)は、IFRS対応方針が明確になってから検討してもよい。ただし、情報収集は心掛けておく必要がある。
情報システム部で検討すべきこと、検討しなくてもよいことを明確にすることで、対応が手遅れになることを防ぎ、また逆に過剰な対応を予防することにつながるだろう。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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