導入計画がある企業は2012年の2倍
関心はなぜ高い? 幼年期から脱するプライベートクラウド
ここ1年プライベートクラウドへの関心が高まりを見せている。また、プラットフォームが成熟し、IT担当者のスキルも向上するなど、市場が洗練されてきた。
「1年以内にプライベートクラウドを導入する計画がある」企業が急増
米TechTargetが実施した「Data Center and Readers' Choice Survey 2013」(2013年度データセンターおよびIT導入に関する読者調査)では、「1年以内にプライベートクラウドを導入する計画がある」との回答が急増した。全回答者627人のうち、「2013年にプライベートクラウドを導入する計画」と回答した割合は15.5%。これに対して2012年は8.2%だった。パブリッククラウドに対する関心は、4.1%から4.5%と微増にとどまった。
米Forrester Researchの年次調査でも、プライベートクラウドへの関心の高まりが見られた。北米および欧州の企業1000社のうち、「プライベートクラウドの導入に関心がある」と回答した企業の割合は2012年の36%から46%と急増し、各種クラウドの中でも最大の伸びを示した。対照的に、パブリッククラウドは31%から35%と大きな増加は見られない。
一部の企業では、プライベートクラウドは、「パブリッククラウドの柔軟性」と「ファイアウォールで保護された環境が持つ高度なセキュリティ」の両方を兼ね備えた環境であると認められてきている。
パブリッククラウドのセキュリティについては、依然として市場で議論されている。しかし、セキュリティシステムおよびサービスを提供する米Dieboldでは、PaaSであっても、パブリッククラウドの導入には踏み切れなかったという。
「プライベートクラウドを選んだのは、弊社の顧客の性質が理由の1つだ」とDieboldのクラウドサービス担当ディレクター、バラジ・ディバラセティ氏は語る。「弊社の顧客のほとんどは、銀行や信用組合などの金融機関だ。間違いなくセキュリティが最優先事項になる」
Dieboldでは、米Apprendaのソフトウェア製品を導入して、社内のソフトウェア開発者が使用する仮想インフラストラクチャをオートスケール対応のPaaSに変えた。これで、世界各地の開発チームに統一された環境を提供でき、開発者用の仮想マシン(VM)の使用率を計測したりログを記録できる他、高可用性も確保できる。
その結果、C#開発がスピードアップし、Dieboldでは銀行や信用組合向けのSaaS製品の開発期間を短縮できた。
認識にずれがある「プライベートクラウド」
米Forrester Researchのアナリスト、デイビッド・バルトレッティ氏によると、一般に考えられているプライベートクラウドは、実際にはプライベートクラウドではないことが多いという。
Forresterでは、全般なプライベートクラウドに対する関心についてのアンケートに続けて、回答者が実際に自動化やセルフサービス機能を実装しているかどうか、また、部門や職種ごとに使用状況を追跡しているかどうかを尋ねたところ、それらの条件を満たす正真正銘のプライベートクラウドを導入しているのは、プライベートクラウド導入済みと回答した企業のうちわずか28%だった。
他のコンサルタントも、これと同じ誤解に遭遇しているが、市場が成熟するにつれて影を潜めてきたと話す。
「クライアントは長いこと、高度に仮想化された環境とプライベートクラウドを混同してきた」と話すのは、コンサルティング会社の米Cloud Technology Partners(CTP)で副社長を務めるジョン・トレッドウェイ氏だ。
「ようやく正しく理解され始めた。最近では、“VMやサービスカタログ項目を、完全に自動で、5~10分で用意できなければ、プライベートクラウドとはいえない”とクライアントが言うようになった」とトレッドウェイ氏は語る。
CTPのクライアントの中では、プライベートクラウドに複数の世代ができつつある。トレッドウェイ氏によれば第1世代は、米VMwareの「VMware vSphere」と「VMware vCloud Director」や米VCEの「VCE Vblock」など、従来のベンダー製品を使って、インフラとソフトウェアスタックを基盤とするプライベートクラウドだ。
「第1世代は、5年前に構築されたアプリケーションを実行するためのクラウドで、使えないことはない。しかし現在は、効率的でコスト効果が高く、1時間当たりのVMのコストがAmazonと同程度のクラウドの導入が求められている」(トレッドウェイ氏)
「青春期」に入ったプライベートクラウド
トレッドウェイ氏によると、2014年のIT計画の話の中で、(OpenStackなどのコンポーネントを使用する)「コモディティ型クラウド」と同氏が呼ぶものと、レジリエンス(回復力)は低くなるが少ないコストで済むコモディティハードウェアがよく登場するようになったという。
トレッドウェイ氏は、「最終的には、複数のクラウド(プライベートおよびパブリック)を1つの管理レイヤーで管理するスタイルに向かっている。まだプライベートクラウドは“青春期”にある。幼年期は脱したが、現時点では大人になりきっていないのも確かだ」と話す。
ITサービス管理とシステムエンジニアリングを手掛ける米Windward IT Solutionsのショーン・マクダーモットCEOは、「この段階にたどり着くまで、製品の成熟を待たねばならなかった」と言う。
3年前は複雑なセルフサービスポータル、自動プロビジョニング、マルチテナントの予約管理などの機能は、一般の企業にとって手の届かないところにあった。一方、AmazonやGoogleなどの既にハイパースケール企業は、そういった機能を一から自社開発していた。
「現在はVblockやFlexPodなどのコンバージド(集中型)インフラ向け製品や、エンドツーエンドのオートメーションを実現するための高度なソフトウェアツールもある。300台のサーバを展開して、常時稼働させるとすると、(パブリッククラウドを使う場合)やや高くつく」と同氏は指摘する。
ただし、この傾向は最終的にパブリッククラウドに移行するまでの途中段階にすぎないと見る向きもある。
ITコンサルティング会社の米Cascadeoの共同創業者、ジャレド・ライマー氏は、次のように話す。「プライベートクラウドは、移行までの途中段階か保険のようなもので、論理的なセキュリティレイヤーがあるパブリッククラウドが、いずれは基本の選択肢になるだろう。社内のセキュリティ担当者のスキルが大手のクラウドプロバイダーより優れていないと思われても、それをCEOに説明するのは難しく、プライベートクラウドを使っていれば安心できる」
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