パブリックとプライベートのいいとこ取りをした「仮想プライベートクラウド」エンタープライズクラウドを定義する【第2回】

パブリッククラウドのスケールメリットを生かし、プライベートクラウドに近いセキュリティレベルで高品質な環境を作る「仮想プライベートクラウド」について解説する。

2010年10月08日 08時00分 公開
[林 雅之,NTTコミュニケーションズ]

企業ユーザーがパブリッククラウドの導入に不安を感じる理由

 第1回「エンタープライズクラウドを構成する4つの利用モデル」では、エンタープライズクラウドを構成する4つの利用モデルについて解説した。第2回では、この4モデルに定義されていない5つ目の利用モデル「仮想プライベートクラウド」について解説する。

 パブリッククラウドの企業での導入は進みつつあるが、導入に不安を感じている企業ユーザーも多い。第1回で概要を紹介したように、パブリッククラウドは企業のファイアウォールの外側に構築される形態で、インターネットを介して不特定多数の企業や個人ユーザーにコンピュータリソースを提供するサービスである。

 パブリッククラウドのメリットは、短期間で高機能なサービスをさまざまなデバイスから利用できること。また、低コストで利用でき、運用管理の負担が少ない。利用に応じて課金される従量制課金が一般的で、繁忙期や閑散期などの利用頻度に応じて柔軟で迅速なコンピュータリソースの追加や削除が可能である。

 一方、パブリッククラウドに対してさまざまなメリットは感じていながらも、不安を抱き導入まで踏み切れない企業ユーザーは多い。不安要因には主に、セキュリティやサービス品質、そしてシステムへのレスポンスタイムなどが挙げられる。

 そのため、提供事業者側がセキュリティの認証基準であるISO/IEC 27001やSAS70 TypeII、そしてプライバシーマークなどの認証基準を取得し、セキュリティレベルの高さを訴求している。ASPSaaS(Software as a Service)の普及を推進するASPIC(ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム)では、「ASP・SaaSサービス安全・信頼性に係る情報開示認定制度」を推進し、業界全体の信頼性についても対応を進めている。

 これらの取り組みにもかかわらず、企業ユーザーが不安を解消できていないのは、インターネット経由でクラウドにアクセスしている点が大きい。クラウド側にコンピュティングリソース、つまり社内のデータが蓄積されることは、インターネット経由で外部から集中的に攻撃されるリスクが考えられるためだ。インターネット上のセキュリティ脅威が常に存在している。

 企業ユーザーがパブリッククラウドを一部利用し、多くはオンプレミス(社内設置)に残すというシステム構成を選択したとしても、インターネットに直接抜けるルートを作るということは、セキュリティホールを開けることを意味し、自社のシステム全体のセキュリティレベルを下げてしまう懸念がある。

 また、インターネットはサービス品質に保証のないベストエフォートであるために、帯域は保証されていない。システムのレスポンスタイムが遅くなるなど、常時安定した通信ができないといった不安点も挙げられる。

 総務省が2010年9月に発表した2010年5月末時点の国内におけるブロードバンドサービス契約者の総ダウンロード量は、前年比17.8%増となっている。コンシューマーユーザーなどが動画サービスを利用するケースも増え、ネットワークへの負荷が年々増している。コンシューマーユーザーの利用頻度が増えるインターネットという不特定多数の共用ネットワークを企業ユーザーがクラウドサービスのアクセス回線として利用することは、大きな不安要素と考えられる。

仮想プライベートクラウドは、いいとこ取りのサービス

 これらの不安を解消するプライベートクラウドが注目されている。プライベートクラウドは、自社でセキュリティレベルを設定し、カスタマイズを容易にし、企業個別にクラウド環境を構築する。プライベートクラウドを構築する場合の多くはインターネットではなく、セキュアなネットワークを利用しているケースが多い。しかしながら、プライベートクラウドは初期コストが掛かり、企業規模が大きくなければスケールメリットの恩恵を受けることが難しい。

 そこで、パブリッククラウドのスケールメリットを生かし、プライベートクラウドに近いセキュリティレベルで高品質な環境を作る「仮想(バーチャル)プライベートクラウド」が注目されている(図)。パブリッククラウドとプライベートクラウドの中間的な位置付けで、2種類のサービスのいいとこ取りをする形態のサービスである。

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