TechTargetジャパンは2013年3月にクラウドコンピューティング全般に関する読者調査リポートを実施した。本稿では調査結果の一部として、プライベートクラウドの導入状況をリポートする。
TechTargetジャパンは2013年3月4日~3月22日、クラウドコンピューティング全般に関する読者アンケートを実施した。本稿では調査結果の一部として、プライベートクラウドにフォーカスして紹介する。全ての結果を記載した読者調査リポートは文末のリンクから会員限定でダウンロードできる。
目的:TechTargetジャパン会員のクラウド導入・利用状況について調査するため
方法:Webによるアンケート
調査対象:TechTargetジャパン会員
調査期間:2013年3月4日~3月22日
有効回答数:141件
※回答の比率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。
なお、本アンケートでは各クラウドを以下のように定義して調査した。
種類 | 定義 |
---|---|
プライベートクラウド | 仮想化や標準化、自動化などの技術を活用し、自社または提供事業者側のデータセンターに自社専用の統合的なシステム環境を構築することによって、ユーザーにコンピュータリソースを柔軟・迅速に提供するサービス。 |
IaaS(Infrastructure as a Service) | 企業のファイアウォールの外側に構築されたデータセンターから、ハードウェアをクラウドサービスとして提供するサービス。ユーザーはクラウド上のリソースをオンデマンドかつセルフサービスで利用できる。 |
ハイブリッドクラウド | プライベートクラウドやパブリッククラウドなどを連携させて活用するシステム/サービス。 |
PaaS(Platform as a Service) | アプリケーションが稼働するためのハードウェアやOS、ミドルウェアを、インターネット経由で提供するサービス。コンピュータリソースそのものを提供するIaaSとは違い、ソフトウェアの開発環境/実行環境を提供する。 |
まずはプライベートクラウドの導入状況を尋ねた。「既に導入済み」と回答した割合は22.7%、「導入予定」は11.3%だった。だが、「計画はない」が44.0%と最も多かった。プライベートクラウドはユーザー企業にとって“あさっての話”なのだろうか。
参考までに、2012年2月に実施した同調査と比較してみよう(関連記事:パブリッククラウド調査結果、セキュリティが不安な一方で3割は導入に前向き)。2012年2月時点で「導入済み」と回答した割合は17.0%、「導入予定」は14.1%だった。また、「計画はない」が47.1%。約1年後に当たる今回の調査では、「導入予定」や「計画はない」といった割合が減り、「導入済み」が数%増えた。2013年になって、プライベートクラウド導入の兆しが少し見えてきたと取れるだろう。
では、ユーザー企業は何を期待してプライベートクラウドを導入するのだろうか。調査結果によると、「ITリソースの効率的な利用」(60.3%)と「運用コストの削減」(59.6%)がほぼ並んだ。それらに次いで、「運用管理の一元化・効率化」(50.4%)が多かった。
サーバ台数の削減だけを目指すならサーバ仮想化で十分だ。しかし、サーバ仮想化だけでは運用管理は楽にならない。それどころか複雑化するケースも多いだろう。プライベートクラウドは、これまで事業部門ごとにバラバラに構築されてきたシステムを一定の単位で統合し、ITリソースをプール化することで利用を効率化する。また、セキュリティレベルや運用プロセスを標準化し、運用管理に関わる各種オペレーションを自動化することで、運用負荷の軽減も目指す技術だ(関連記事:単なる“全社仮想化”とは違うプライベートクラウドの本質的価値)。調査結果からは、プライベートクラウドのそうしたメリットがユーザー企業に浸透していることがうかがえる。
一方、「サービスの迅速な提供」は29.8%。プライベートクラウドのメリットとしてよく挙げられるプロビジョニングの自動化は、上記ほど関心が高くないようだ。
以上では、2012年と比較してプライベートクラウドへの導入意向が高まっていると述べた。そうはいっても、プライベートクラウドの導入状況に関する回答で最も多かったのが「計画はない」(44.0%)だった。ユーザー企業は何を導入の障壁と考えているのだろうか。
調査結果では、「初期費用が掛かる」(40.4%)、「技術的スキルが足りない」(36.2%)、「ベンダーロックインの懸念がある」(32.6%)、「投資対効果に見合わない」(31.2%)が上位にきた。「初期費用が掛かる」「ベンダーロックインの懸念がある」からは、ハードウェアを自前で購入しプライベートクラウドを構築することを前提に回答している結果と取れる。
最後に、プライベートクラウドを構築する上でも役立つ、オープンソース(OSS)クラウド構築基盤についての関心度に触れたい。調査結果では、「興味がある」(41.8%)が、「興味がない」(24.1%)を上回った。OSSクラウド構築基盤は、ベンダーロックインを懸念するユーザー企業にとっては有力な選択肢であるようだ。最近は、ハードウェアベンダーが提供する垂直統合型製品の中にも、OSSクラウド基盤を起用するなどしてオープン戦略をうたう製品も出てきている。“オープン”はクラウドを語る上で、2013年も注目のキーワードになるだろう。
本調査では、ハイブリッドクラウド、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)の導入・利用状況についても尋ねた。興味のある方は、詳細なアンケート結果をダウンロードしてご覧いただきたい。
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