情報ガバナンスをめぐる5つの俗説を検証する【後編】
ナンセンスになりつつある「情報は永遠に全て残す」という常識
ストレージコストや情報ガバナンスのトレーニングをめぐる誤解など、データ管理に関する3つの俗説について検証する。
ジェフリー・リッター氏によれば、デジタル時代において情報ガバナンスが複雑さを増す中、企業は根強い俗説のせいで依然として明確なデータ管理戦略を定めきれずにいるという。前編「『Googleがあればどんな情報でも探せる』という俗説をいまだに信じる人」に続き、後編ではデータストレージコストや情報ガバナンスのトレーニングをめぐる誤解について検証する。
俗説3「ストレージコストが下がり情報の保存に関する懸念は不要に」
リッター氏 「全てを保存し、永遠に保存すればいい」という考え方は既に20世紀からあった。検索ツールを使えば、情報はいつでも見つけられるというわけだ。だが実際のところ、今日、データは保存するたびにコストが掛かる。クラウドサービス事業者に外注するにせよ、何か他の長期的な保管手段を使うにせよ、費用は掛かる。データの量が増えれば当然、ストレージコストも上昇する。今日のストレージコストをさらに上昇させているのは、適用しなければならない各種の新ルールの存在だ。セキュリティに関するルール、データへのアクセスと使用に関するルール、データがクラウドや複数の国にまたがって保存されている場合の分散ストレージに関するルールなどだ。
ストレージにはもう1つ、隠れたコストがある。記録がまだ保存され残っているからには、過去の事実を究明するための調査や検索でデータの開示や提出が求められる可能性がある。そのためのコストは膨大だ。効果的な情報ガバナンスのためには、保存するデータを減らすべきであり、それによってストレージコストを削減し、会社の富を増やす必要がある。全てを永遠に保存するというやり方はもはや通用しない。情報ガバナンスの方がはるかにコスト効率に優れている。
俗説4「情報ガバナンスには今や弁護士の関与が必要」
リッター氏 人々がこうした懸念を抱いていることは、電子証拠開示(eディスカバリー)のコストが急増していることからも明らかだ。確かに、効果的な情報ガバナンスには、システムやデバイスの他、データの機密管理に関するルールが数多く存在している。だがこうしたルールは法的なものではない。弁護士の関与が不可欠であるかのような印象をもたらしているのは、唯一、「訴訟に直接関係する情報を保存しなければならない」という点だけだ。
「証拠価値のある情報を保存する」という基本ルールは変わっていない。変わりつつあるのは、米国内外の規制当局の関心だ。当局は、情報システムや情報そのものの整合性の裏付けとなるような技術文書の入手を望んでいる。
古くなったデータの処分については、弁護士が役立ってくれるだろう。係争中の訴訟、あるいは将来訴訟に発展する可能性のある問題についての情報を処分するのは、法的なリスクが伴う。得策なのは恐らく、弁護士の助けを借り、社内のデータ削除の手順を法的に問題ないようにすることだろう。もっとも、情報ガバナンスで必要となるのは大半の場合、システムを統治するための職能的な優秀さであって、法的な専門知識ではない。
俗説5「情報ガバナンスには新たにトレーニングコストが必要となる」
リッター氏 どんな新技術、技術革新、進化であれ、われわれがしばしば直面する真実の1つは、トレーニングあるいは再トレーニングの必要性だ。つまり、従業員やスタッフがどんな新しいデジタル革新にでも対応できるよう、新たにお金を注ぎ込む必要が生じる。これは、ある程度は避けられないことだ。
ただし、新たに従来型のトレーニングが必要となるのは情報ガバナンスそのものに対してではない。まず企業幹部は、効果的な情報ガバナンスによって達成し得るROIについて理解するためにトレーニングを受ける必要がある。弁護士もトレーニングを受ける必要がある。合弁事業やM&A(合併・買収)、商用ライセンスなどの契約の他、不動産取引やリース契約など、あらゆる商取引や契約に情報ガバナンスの問題が絡むからだ。また、クラウドサービス事業者もトレーニングを受ける必要がある。クラウドサービス事業者は、ユーザー企業の情報ガバナンスのためのルールを理解する必要がある。
大局的に見れば、情報ガバナンスが新たなトレーニングの必要性を駆り立てるわけではない。情報ガバナンスのプロセスをうまく自動化すれば、メールアカウントの所有者を1人ずつトレーニングする必要性は減る。プログラムやアプリケーションのルールはシステムで実行できるものが多いので、スタッフにトレーニングを施し全てのルールを学んでもらう必要はない。
情報ガバナンスにはトレーニングが必要だ。だがそれは、スタッフや現場レベルのものではない。必要なのは、情報ガバナンスの真価に対する認識をあらためる必要がある人たちへのトレーニングであり、情報ガバナンスをビジネスのエコシステムにどう統合すべきかがテーマとなる。
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