情報ガバナンスをめぐる5つの俗説を検証する【前編】
「Googleがあればどんな情報でも探せる」という俗説をいまだに信じる人
21世紀の情報ガバナンスに関する5つの根強い俗説について専門家が検証する。データ管理プロセスをデジタル時代に合わせて適応させることはそれほど難しくない。
情報ガバナンスの専門家であるジェフリー・リッター氏によれば、データ管理プロセスはデジタル時代において複雑さを増しているが、最新の情報ガバナンスは既存の方針に根本的な変更を強いるものではないという。本稿では、情報ガバナンスをめぐる5つの根強い俗説をリッター氏が質疑応答形式で検証する。同氏によれば、企業はこうした俗説のせいで21世紀における新たなデータ管理戦略の確立に苦戦しているという。
前編では、まず情報ガバナンスの定義を明らかにし、5つのうち2つの俗説の誤りを検証する。
――5つの俗説を検証するに当たり、情報ガバナンスを簡潔に定義するとどうなるか。
リッター氏 情報ガバナンスには3つの要素がある。1つは「ルール作り」、次に「デジタル情報へのルールの適用」、もう1つは「収益確保や資産保全を促す事業目標との連携」だ。つまり、情報ガバナンスとは、「富を創造し保護するという企業目標の達成を促すために、ルールに基づいてデジタル情報を管理すること」だ。情報ガバナンスには事業目的があるという点を理解すれば、以下の5つの俗説を正しく検証できる。
俗説1「情報ガバナンスには投資対効果がない」
リッター氏 情報ガバナンスで何より大切なことは富の創造であるならば、投資対効果(ROI)がないはずがない。実際のところ、ビジネスは高速実行や高速解析、より正確な情報に基づく迅速な決断といった「速さ」に駆り立てられている。「正確な情報か、信頼できる情報か」をいちいち確認しなければならないのでは、ビジネス上の意思決定やビジネスプロセスの減速は避けられない。信頼できる情報であることを確認できるまでは、ブレーキがかかることになるからだ。
適切なルールを適用してデジタル情報を効果的に統治すれば、情報の信頼性を確認するための時間を短縮できる。より大きな確信を持ってデータに依存できるので、より迅速に決断を下すことができ、それが収益増につながる。企業株主にとって、どこか気に入らない点があるだろうか。
俗説2「最新の検索ツールがあれば情報ガバナンスは不要に」
リッター氏 20世紀から21世紀へと時代が移行する中、誰もが「探したい情報の手掛かりを検索ボックスに入力すれば、必要なものは何でも見つけられる」と考えていた。だが、これは事実とは異なる。周知の通り、ただコンテンツを検索していたのでは、検索結果が何十ページも表示されるだけだ。必要なコンテンツにたどり着くにはまだ多くの時間が必要であり、結果的にコストも掛かる。
最近の検索ツールは、情報がどのように分類されているかということを利用する。情報ガバナンスもそれを必要としている。ルールを適用するためには、情報をどう分類するかを知っておく必要がある。対象となる情報の正体が分からなければ、ルールは適用できない。実際、そうした分類がデジタル情報に適用されるようになるにつれ、検索ツールはより強力になっている。ただし分類が正確でなければ、検索ツールは適切には機能しない。
実際には、データへのタグ付けはデータベースの個々のセルで行える他、財務報告に特化したXML言語「XBRL(eXtensible Business Reporting Language)」を使えば文書でも行える。こうしたタグによってスピーディな検索が可能となる。だが、ガバナンスの必要がなくなるわけではない。実際、情報が適切に分類されているときの方が検索ツールの精度は高まる。情報ガバナンスにとって、情報の適切な分類は最初の重要なステップとなる。現に、ただひたすら「干し草の山の中から楊枝を見つけ出そう」とするより、情報が統治されているときの方が、情報を素早く見つけられる。依然として、「大きな干し草の山」であることに変わりはないが。後編では残り3つの俗説を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
5
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
6
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
7
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
8
Nutanix+Everpure構成の実力は? 既存資産を生かす「脱VMware」の検証
-
9
「自動化」で「DX」は強制的に進む? そのシンプルな理由
-
10
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー