「スポーツの世界は統計を好む」
野球、バスケチームがデータサイエンティスト確保へ――スポーツデータ分析最前線
一部のプロリーグでは既に、データ分析を意思決定プロセスに取り入れる動きが始まっている。米大リーグやNBAでの取り組みを紹介する。
スポーツの世界は統計を好む。事実、一部のプロリーグでは既に、データ分析を意思決定プロセスに取り入れる動きが始まっている。ビジネスの世界も、データ主導型の意思決定プロセスを取り込むプロスポーツのチームやリーグから学べることは多い。
全米プロバスケットボール協会(NBA)に所属するToronto Raptorsの前社長でゼネラルマネジャーのブライアン・コランゲロ氏は、2014年2月28日から3月1日(米国時間)にボストンで開催されたスポーツ分析のカンファレンス「MIT Sloan Sports Analytics Conference」で講演し、データ分析の導入に取り組む企業の間でよく聞かれるコメントを繰り返した。特に、同氏によると、意思決定者にデータ分析サービスを提言してもなかなか信頼してもらえないという。
「最も大きな問題の1つは、新しいツールがすばらしいもので、それが非常に生産的であっても、コミュニケーションやメッセージが正しく伝わらなければ、意味がないということだ」とコランゲロ氏。
データ分析の可能性は今後ますます明確になり、「リーグの各チームはデータサイエンティストの確保に積極的に動き出すだろう」と同氏は予測する。こうしたトレンドは、アナリストと意思決定者の間の溝を次第に埋めていくはずだ。しかし現時点では、「分析結果をどのように経営に取り込むべきか、企業は慎重に考える必要がある」と同氏はいう。
意思決定者がデータ分析ツールを信用しない最大の理由の1つが、データの品質だ。同じくNBAに所属するOrlando Magicで2012年にコーチを務めたスタン・バン・ガンディ氏は、「スタッフが情報を正確に記録しているかどうか確信が持てなかった」という。そのため、データ分析からのアドバイスをあまり信用する気になれなかったのだ。
例えば、バン・ガンディ氏のスタッフは、相手チームが自チームに対して行う特定のプレーの実行回数を記録していた。またスタッフは、そうした特定のプレーのディフェンスに、どのプレーヤーが関与していたかを追跡していた。特定の状況下で最適なプレーヤーを選択するためだ。ところが、ある日、ビデオスタッフと打ち合わせをしていたとき、同氏は記録スタッフが各プレーを自分と違う分類方法で仕分けていることに気づいた。
「そうしたデータのほとんどは信頼できない」とバン・ガンディ氏はいう。「一体誰がそうしたデータを記録しているのか、私は知らない。分析の多くは、本当に有益かもしれない。しかし、それらを手にしていすに座り、ビデオを眺めているだけでは、きっと大きなミスを犯すだろう」
一方、異なる種類のさまざまなデータソースを統合することも大きな課題の1つだ。米大リーグ機構(MLB)のアプリケーション開発およびビジネスインテリジェンス担当役員であるオスカー・フェルナンデス氏は、同リーグが「昔から膨大なデータを持っていることは認識していた」と話す。しかし、それらを活用しようという動きは、最近ようやく始まったばかりだという。
MLBは現在、プレーヤー情報のデータベースを運用している。そこには各プレーヤーのキャリア全般にわたる統計データ、トレード記録、そして個人情報が全て記録されている。同リーグは、このデータベースに動画とニュースフィードを取り込む方向で動き始めた。その目的は、統計情報を可能な限り充実させ、各チームのスカウトプロセスを支援することだ。しかし、現時点ではそうした多様な情報をシームレスに可視化することは実現していない。
では、各チームとリーグは、こうした課題をどのように解決しようとしているのだろう? 全米自動車競走協会(NASCAR)の副会長でマーケティング担当役員のスティーブ・フェルプス氏によると、データ主導型意思決定への移行に当たっては、上級役員のリーダーシップが重要になるという。同氏はまた、簡単に成功できるものからスタートすることを推奨する。その後、信頼できる情報を提供する分析システムを迅速に導入できれば、チーム全体が受け入れに傾くだろう。容易に目的を達成できる小さなプロジェクトからスタートするのも1つの方法だ。
NBAに所属するKingsを所有するSacramento Basketball Holdingsの社長、クリス・グランガー氏は、分析技術によって解決すべき問題を知ること、そしてその問題に関連するデータを体系化、あるいは収集することが重要だと話す。例えば、グランガー氏の組織では、分析をまずチケットマーケティングの問題に適用した。同氏によると、担当チームは高品質のデータセットを持ち、ソリューションを明確に定義し、問題を管理可能な範囲に維持したという。
「何を解決しようとしているのか、それを明確に理解することが重要だ」とグランガー氏は語る。
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