専用線は、AWS、SoftLayerともに都内のデータセンター内にあるPOP(接続ポイント)を経由した接続になる(※)。それぞれ特性を見て行こう。
※ AWSは2015年7月27日、大阪で接続ポイントの運用を開始した。
AWSは「AWS Direct Connect」という専用線サービスを提供している。ユーザーが構成した「仮想プライベートクラウド」(VPC:Virtual Private Cloud)との相互接続が可能だ。ちなみに、「Amazon S3」などが配置されているパブリックネットワークとの相互接続も可能。東京リージョンのみに接続できる。
Japan POP(日本の接続ポイント)の収容スイッチは冗長構成が可能で、ポートスピード(帯域)は1Gbps/10Gbpsが選択できる(1Gbps以下のポートスピードはAPNパートナーにて提供)。アウトバウンドのデータ転送量は課金対象である(インターネット側アウトバウンド転送量の4分の1程度)。Direct Connectのサービス提供事業者によっては、トラフィックシェーピングしたVLANを共有してサービスを安価に提供している。
SoftLayerの方では「Direct Link」という専用線サービスを提供している。SoftLayerが払い出したユーザー接続ネットワーク用IPアドレスを利用して、プライベートネットワークへ相互接続が可能だ。SoftLayer側からは、払い出したユーザー接続ネットワーク用IPアドレスに対するルーティングのみが行われるため、相互接続するためのNAT装置やGRE Tunnel装置を必要とするケースがある。
Japan POP経由で世界中のデータセンターに接続可能で、Japan POPの収容スイッチは現段階ではシングル構成となる。ポートスピードは1Gbps/10Gbpsで選択が可能。データ転送量は無料だ。Direct Linkの帯域を共有したサービスモデルは、現段階では提供できない。
AWSはネットワークを柔軟にデザインすることができ、専用線を利用したオンプレミスとのハイブリッド接続でも親和性が高い。一方、SoftLayerはシンプルなネットワークデザインであり、各国のデータセンター間が無料でプライベート接続できることが最大の特徴だ。コスト的な優位性もある。
クラウドを選定する際は、スペックや価格に目が行きがちだが、各クラウド事業者のIaaSにおけるネットワークの提供方法にはいろいろな考え方があり、選定の重要なポイントになる。自分たちの求めるネットワーク要件に合った検討と選定をぜひお勧めする。
次回は、主要パブリッククラウドネットワークのファイアウォールやロードバランサーなど、ネットワーク機能(サービス)やネットワークコストの違いについて特徴を整理する。
ネットワーク、セキュリティを中心とした公開系システム基盤の提供やMSPビジネスに従事。
2012年ビットアイルのグループ会社であるビットサーフに入社。プリセールスやプロジェクトマネジメントが主な業務。
クラウド推進の啓蒙活動として、日本SoftLayerユーザーグループ、JAWS-UGなどのコミュニティーにも参画。
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