パブリッククラウドのネットワークにフォーカスし、主要サービスの仕組みや特徴、料金を比較する。第1回ではAWSとSoftLayerを取り上げ、ネットワークの仕組みを比較した。
企業がクラウドを検討する際の第一候補として「Amazon Web Services」(AWS)が挙げられることが非常に多くなった。パブリッククラウドといえばAWSというくらい、デファクトスタンダードのような存在となりつつある。一方で、具体的な特性を理解せずに、AWS一辺倒で選定しているケースも見られるようだ。だが、ここ数年でAWSに続くさまざまなパブリッククラウドが出てきている。IaaS機能を充実させてきている「Microsoft Azure」やネットワークに特徴を持つ「IBM SoftLayer」も有力な選択肢といえるだろう。
パブリッククラウドの選定にはさまざまな切り口が考えられるが、本連載ではパブリッククラウドのネットワークにフォーカスし、主要クラウドサービスの仕組みや特徴、料金を比較する。第1回は、AWSとSoftLayerを取り上げ、ネットワークの仕組みを比較しよう。
AWSのデータセンターは「リージョン(地域)」という概念で構成される。リージョンは世界中にあり、それぞれが閉じられた環境で、他のリージョンと通信をする場合はインターネット経由での通信となることを考慮しなければならない。リージョンには「Availability Zone」(AZ)と呼ばれる、近距離にある複数のデータセンターを集約した単位が存在する。
一方、SoftLayerにはリージョンという概念はなく、単一ネットワークで各データセンター間が接続されている構成となっている。世界中のデータセンターが「プライベートネットワーク」経由で接続され、サーバは各データセンター間で通信可能なプライベートネットワークに属している。管理上、サーバなどの配置場所を気にすることは少ない。
このアーキテクチャの違いによって、AWSとSoftLayerではネットワークへの考え方が大きく異なる。
AWSは、サーバが使用するネットワークがユーザーごとに仮想的に作成されるが、SoftLayerは全データセンターで1つのネットワーク構成となっており、サーバが使用するネットワークはユーザーごとにセグメント単位で払い出す。プライベートネットワーク、パブリックネットワーク、管理ネットワークについて、一般的なネットワーク区分に置き換えてAWSとSoftLayerそれぞれの特性を見て行こう。
プライベートネットワークとは、各サーバ間で通信するためのローカルネットワークのことを指す。主にインターネットに公開しないサーバ間の通信や専用線で、オンプレミスとの通信で使われることが多い。
AWSは、サーバが利用するネットワークをユーザーごとに作成する。論理的に分離したネットワーク環境(Virtual Private Cloud《VPC》)を提供し、IPアドレス体系はユーザーが管理する。
一方、SoftLayerでは、サーバはプライベートネットワークに所属する。プライベートネットワークは1つのネットワークで構成されており、その中からVLANでユーザーにセグメント単位で払い出しを行う。ユーザーは必要なだけVLANを申請して利用することができる。IPアドレス体系はSoftLayerが管理し、基本的にはユーザーがIP体系を管理することはできない。
パブリックネットワークは、インターネットと接続するためのネットワークのことを指す。主にインターネットへ公開するサーバやインターネットへアクセスするサーバなどがこのネットワークを利用する。
AWSでは、サーバはインターネットに直接接続されることなく、仮想ルーターを経由してインターネットに接続する。仮想ネットワーク(VPC:Virtual Private Cloud)にはルーティング情報があり、インターネットゲートウェイを利用して外部へ通信を行う。外部からアクセスにはEIPという機能を利用してグローバルIPアドレスを「Amazon EC2」に付与する(Static NAT)。
一方、SoftLayerでは、サーバはパブリックネットワークに所属する。サーバをパブリックネットワークに所属させることで、インターネットへ接続することができる。パブリックネットワークを利用するかどうかは選択可能だ。
管理ネットワークは、サービス用とは別のネットワークで、管理者が設定変更やメンテナンスなど日々の運用などで利用するためのネットワークを指す。
AWSでは、管理ネットワークが専用ネットワークとしては構成されていないが、利用者がデザインすることは可能だ。
一方、SoftLayerの管理ネットワークは、専用ネットワークとして構成されている。ベアメタルサーバを利用した場合はリモートメンテナンス用IPアドレスが付与される。SSL VPN/PPTP-VPNサービスと連係し、専用ネットワークからプライベートネットワークへリモートメンテナンスが可能だ。
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