さまざまな無線LANの攻撃手法が現れている一方で、その基本的な仕組みは普遍的なものだ。中編は無線LANを介したトラフィックの機密性と整合性を狙った攻撃手法を説明する。
トラフィックをスニッフィング(盗聴)するのにネットワークへの物理的な接続が必要な有線LANですら、機密性の保護は難しい。無線LANの場合は一層の注意が必要となる。無線LANの機密性を脅かす攻撃を解説する。
「パケットスニッフィング」は、攻撃者がトラフィックを傍受する最も簡単な手法だ。攻撃者は「Wireshark」などのネットワーク監視ツールを悪用して、無線LANのトラフィックを検出、監視する。正規ユーザーのトラフィックを暗号化することは、パケットスニッフィング対策として有効だ。ただしその場合であっても、攻撃者はデバイスの情報やIPアドレスなど、トラフィックに関するメタデータを盗み見ることができる。
古い無線LANのセキュリティプロトコルを使用していると、攻撃者が暗号鍵を破り、暗号文を解読する危険が高まる。そうした脆弱(ぜいじゃく)なセキュリティプロトコルの例が「WEP」(Wired Equivalent Privacy)であり、現在は利用を推奨されていない。その理由は、個別の暗号鍵を使わず、全てのユーザーが1つの鍵を共有しなければならない点だ。暗号鍵自体の強度も低く、容易に解読できてしまう。
無線LAN暗号化の現在の標準的なセキュリティプロトコルである「WPA2」(Wi-Fi Protected Access 2)を使用する場合は、無線LANアクセスポイント(AP)とデバイスの設定時に推奨事項を守ることが重要だ。例えば、正規ユーザーがネットワークへのアクセス許可を受けるには、事前共有鍵(PSK)が必要になる。無線LANの業界団体Wi-Fi AllianceがWPA2の後継規格として2018年に発表した「WPA3」は、WPA2と後方互換性があり、いずれWPA2に取って代わることになるだろう。
不正デバイスの検知は組織における最優先項目だ。前編で説明した通り、不正なAPはアクセス制御だけでなく機密性を脅かす攻撃につながる。特に「Evil Twin」(悪魔の双子)と「APフィッシング」には注意が必要だ。この2種類の攻撃は表裏一体であり、どちらも通信を傍受して機密情報を盗む。
Evil Twinは、「双子」の対象となる正規のAPと似たSSID(Service Set Identifier)を名乗って偽装する。攻撃者が正規のAPの方を無効にできてしまうと、ネットワーク全体に被害が及ぶ。正規のAPが無事な場合でも、トラフィックの一部を不正に傍受できる。
APフィッシングは、公共の場所にAPを設置して、正規のAPに見せかけた名前を付ける手法だ。例えば空港内に「Free Airport Wi-Fi」(空港のフリーWi-Fi)のようなSSIDを付けたAPを設置し、間違えて接続してきたデバイスからネットワークへの不正アクセスを試みる。
通信する二者の間に割り込んで不正な操作をする「中間者攻撃」も、機密性を脅かす攻撃といえる。この攻撃にはEvil TwinやAPフィッシング、不正なAPを利用した攻撃など、アクセス制御を脅かす攻撃が関与している場合が少なくない。
攻撃者がセッション情報やデータ転送単位であるフレームを偽造し、無線LANで送信することは、トラフィックの整合性を脅かす。この種の攻撃では、攻撃者が悪意のない送信者になりすまし、DoS(サービス妨害)攻撃やアカウント・無線通信の乗っ取りなどにつながる。
整合性を脅かす攻撃には以下のタイプがある。
後編では、無線LANの可用性を脅かす攻撃と、これまでに紹介した攻撃への対策を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。
セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。
年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。
従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。
2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。