今、Alibaba Cloudが世界中に拠点を築いてビジネスを拡大しようとしている。Googleを抜き市場シェア3位となったAlibaba Cloudはこのままシェアを拡大し続けるのか。
Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftがパブリッククラウド市場で激しい争いを繰り広げる中、Alibabaの台頭はあまり知られていないかもしれない。
Gartnerによると、AlibabaはIaaS市場のプロバイダーとして2年連続で第3位に入っているという。Gartnerのデータによると、Alibabaの市場シェアは7.7%。AWSの47.8%、Microsoftの15.5%と比べるとかなり低いが、Googleの4%は上回っている。
Alibabaは中国では支配力を持つクラウドプロバイダーで、アジア太平洋地域でもナンバーワンだ。同社の「Alibaba Cloud」は2018年に92.6%もの成長を見せている。
見落とされがちなのは、米国の大手クラウド企業と対決するため世界中に拠点を築いている同社の近年の取り組みだ。
2016年、Alibabaはデータセンターをドイツ(フランクフルト)とドバイ首長国に開設している。ヨーロッパと中東での需要に応え、「ビジネスイノベーションを可能にする包括的なクラウドサービスを提供する」ためだ。
2018年には英国に2カ所のデータセンターを開設し、ヨーロッパにおける存在感をさらに高めている。現在では、ヨーロッパ、中東、米国東海岸/西海岸を含む「20の地域に61のアベイラビリティーゾーンがある」という。
Alibabaの広報担当者に尋ねたところ、同社と米国大手クラウド企業を差別化する要因は、マーケティングでよく示されるスケーラビリティ、堅牢(けんろう)性、セキュリティの他、業種固有のソリューションをクラウドで実現できることだという。
ただし、差別化要因の中でも重要で、米国のどの企業にもないのが「中国」だ。
「クラウドは目的を実現する手段であり、それ自体が目的ではない。Alibaba Cloudは中国市場に参入する企業に最高クラスのクラウドエコシステムを提供する。それは中国から国外に進出する企業も同じだ」と広報担当者は話す。
この担当者によると、Alibabaのオファーはグローバル化を目指す中国企業だけでなく、中国市場への参入を希望する外国企業にとっても魅力的だという。
中国は世界最多14億の人口を擁し、登記企業数は2016年から2018年の間に約2600万社から3500万社に増加している。企業が中国でのビジネスを求める理由は幾つもある。
だが、そのこととIaaSの具体的な関係には疑問がある。例えば、Alibabaのクラウドサービスを利用している企業との取引が容易になるといったメリットがあるのだろうか。
CCS Insightでアナリストを務めるニック・マクワイア氏は、中国市場に関心のない企業にとって、Alibabaの既存戦略はそれほど魅力的ではないと考える。
「Alibabaとパートナー関係を結んでいるヨーロッパの電気通信会社がVodafoneのドイツ法人や英国のBTなど限定的であることを考えると、顧客数はそれほど伸びていない」(マクワイア氏)
「こうしたパートナー関係はAlibabaがヨーロッパで現地化を進め、パートナー企業のローカルデータセンターのプライベートクラウドで運用できるように意図したものだ。だが、中国進出を目指す企業や、ヨーロッパでのビジネスを展開する中国企業以外にとっては魅力的ではない」とマクワイア氏は補足する。
Alibabaが考える理論では、これはまだ最初の段階だ。今は、主な差別化要因の一つとして拠点をゆっくりと構築しているが、今後数年でさらに勢力を広げるだろう。
クラウド企業はいずれも、競争重視ではなく顧客重視のスローガンを繰り返し唱えている。
Alibabaの市場シェアの高まりを受けて、大手クラウド企業にはAlibabaの提案に関する質問が寄せられ続けている。AWSのCEO、アンディ・ジャシー氏は、Alibabaが成長しているのは確かだが、それは中国国内だけだと断言する。同氏は、ヨーロッパや米国でAlibabaが有意義な成果を挙げているとは考えていない。だからといって、同社が注目に値しないわけではない。
後編(Computer Weekly日本語版 4月15日号掲載予定)では、欧米企業がAlibaba Cloudを採用する条件を検討する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...