新型コロナウイルス感染症患者数を予測するデータモデルを開発した米国の学術医療センターCleveland Clinicは、「最悪のシナリオ」を基に病院の運営計画を立てたという。その内容とは。
学術医療センターCleveland ClinicとSAS Institute(以下、SAS)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に備えるため、データモデル開発に着手した。その目的は、複数のシナリオに基づいて感染者数を予測することだ。最終的に両者は、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の段階や警戒レベルごとに、COVID-19患者数を予測する十数種類のデータモデルを共同開発した。分析モデルの完成から数日間は、米国オハイオ州で自宅待機命令が発動したばかりで、効果は不透明だった。そのためCleveland Clinicは、最悪のシナリオを前提として備えることにしたという。
第1回「医療機関がコロナ対策でデータ活用 『患者数の把握』より重要な効果とは?」、第2回「医療機関が新型コロナ予測モデルを開発 感染者データ不足にどう対処したか」に続く本稿は、分析結果に基づくCleveland Clinicの意思決定の内容を紹介する。
分析結果が導き出した最悪のシナリオは、2020年6月と7月に約1万人のCOVID-19患者が発生するという予想だった。そこでCleveland Clinicは、系列大学の構内に1000床の仮設病床を用意し、所有するホテルのベッドを病床に転用することを決定した。最悪のシナリオで予想される1万人の患者に対処するために、追加の医療機器を発注することも決定した。「予測情報に基づいて、個人用防護具や医療機器、病床数の需要と供給など、さまざまなことを計画した」と、Cleveland Clinicでエンタープライズアナリティクス担当エグゼクティブディレクターを務めるクリス・ドノバン氏は語る。
実際には最悪のシナリオほど厳しい状況には至らなかった。ソーシャルディスタンスの効果で感染拡大に歯止めがかかり、自宅待機命令の発動によって患者数は予測よりも減少した。この現実を受けて、Cleveland Clinicは準備態勢に調整を加えた。1000床の仮設病院開設とホテルのベッドの病床転用は取りやめ、必要になった場合にこうした措置を実施できるように準備している。
「状況がそれほど悪化しないことが分かってくると、経営陣は計画の調整に取り掛かった」とドノバン氏は説明する。いざというときは患者の急増に対応できるという確信が持てたため、一部の計画の実施を保留し、一定の日数で実行に移せる待機状態に移行したという。
次回はCleveland Clinicがデータモデルを用いて、どのような医療を提供しているのかを紹介する。
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