適切かつ迅速なバックアップとリストア(データの復旧)の実現には自動化が欠かせない。一方で「磁気テープ」の運用には「人の介入が必要になる可能性がある」と、ITコンサルティング企業Information Services Group(ISG)のシンディ・ラチャペル氏は語る。例えばテープカートリッジの梱包(こんぽう)と輸送、テープライブラリ(テープカートリッジを格納する「テープドライブ」を複数積載したストレージシステム)への導入といった工程だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が広がり、在宅勤務などのテレワークを余儀なくされる状況では、テープの導入や運用に時間がかかる可能性がある。
テープ技術の進化への追随も簡単ではない。テープ技術の互換性の問題から、古いテープカートリッジからしかデータを取り出せなくなったり、最新のテープカートリッジを利用するためにデータの再取得が必要になったりすることがあるからだ。テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)の最新版(原稿執筆時点)である「LTO-8」に準拠したテープドライブは、2世代前である「LTO-6」準拠のテープカートリッジの読み書きができない可能性があると、ディザスタリカバリーベンダーQuest Softwareのエイドリアン・モア氏は説明する。
複数のストレージ技術を使ってリスクを分散させている企業は珍しくない。テープには上述のような課題があることを踏まえると「テープとHDDなど他のストレージ技術を組み合わせて、バックアップとリストアの体制を構築することが望ましい」と、データセンターサービスやディザスタリカバリーサービスを手掛けるSungard Availability Services(Sungard AS)のギリシュ・ダッジ氏は語る。
テープと組み合わせるストレージ技術の候補として、クラウドサービスが挙げられる。ただしバックアップ手段としてのクラウドサービスは、かつて考えられていたほどコスト効率が高くないことを、経験から知るIT担当者は少なくない。クラウドサービスはデータ保管をしておくだけなら安く済む場合もあるが、クラウドサービスからデータを取り出すためのコストもかかるからだ。
クラウドサービス利用開始時の試算に、クラウドサービスからデータを取り出す際のコストを織り込んでいない企業もある。そのため「結果として不愉快な思いをするIT担当者が少なくない」とサラザール氏は語る。こうしたクラウドサービスの特性を踏まえて、自社に適したバックアップとリストアの手段を検討する必要がある。
テープ導入を検討する場合は、本稿で紹介した点を考慮するとよい。
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