大手クラウドベンダー3社はオンプレミスハードウェアの提供やサポートを通じてハイブリッドクラウド戦略を推し進めている。今回はAzureとAnthosの製品を紹介する。
前編(Computer Weekly日本語版 8月5日号掲載)では、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleの大手クラウドベンダー3社がオンプレミスハードウェアを提供する戦略と3社のアプローチの違い、そしてAWSの製品を紹介した。
後編では、AzureとAnthosのハードウェア、識者による市場概観を紹介する。
Azureは、クラウドとオンプレミスを統合する方法として以下の2つを提供する。
Azure Stackには、「Azure Stack Edge」「Azure Stack HCI」「Azure Stack Hub」という3つのコンポーネントがある。Azure Stackは、検証済みのAzureハードウェアで実行される。
Azure Stack Edgeが対象とするのは機械学習やIoTなどのエッジコンピューティングアプリケーションで、エッジからAzureへのデータ転送を提供する。
Azure Stack HCIはMicrosoftのハイパーコンバージドアーキテクチャで、仮想化されたアプリケーションとそのストレージをサポートする。同社は、Azure Stack HCIをオンプレミスアーキテクチャの最新化用プラットフォームと位置付けている。
Azure Stack Hubにより、ITチームはAzureツールを使ってオンプレミスでAzureアプリケーションを運用できるようになる。データ主権や規制要件が要求される場合はオンサイトストレージを管理することも可能だ。
Azure Arcは、Azureの管理ツール(「Azure Resource Manager」)をWindowsサーバ、Linuxサーバ、Kubernetesへと拡張する。Azure Arcはマルチクラウド、オンプレミス、エッジコンピューティングのデプロイをサポートし、企業がデータをローカルに保存しながらAzureツールで管理できるようにする。
Azure Arcは特定のハードウェアを必要としない。レガシー機器でも検証済みのAzure Stackでも機能する。
AnthosはGCPのハイブリッドクラウドアーキテクチャだ。Kubernetesをベースとし、オンプレミスのハードウェアかGoogleのクラウドインフラでコンテナを運用できるようにする。
Googleは独自のオンプレミスハードウェアを顧客に提供しない。代わりに、サードパーティー製品を使う。
ストレージについては、Googleは2020年初めに「Anthos Ready Storageパートナー」と「Anthos Ready Platformパートナー」を発表した。Anthos Ready Storageパートナーには、ストレージベンダーとしてDell EMC、HPE、NetApp、Portworx、Pure Storage、Robin.ioが名を連ねている。
Googleによると、これらのベンダーはいずれも「Container Storage Interface」(CSI)を使って永続ストレージを提供するという。
ストレージに特化はしていないが、Anthos Ready PlatformパートナーにはAtos、Cisco Systems、Dell EMC、HPE、Intel、Lenovo、NetApp、Nutanixの名前が挙がっている。これらのベンダーは自社のスタックでAnthosを検証している。
大手クラウドプロバイダー3社は、クラウドツールを使ってストレージ(とコンピューティング)の管理効率を上げる方法をCIO(最高情報責任者)に提供する。
このアプローチによって、ローカルストレージアレイとクラウドストレージプールの統合も強化される。その結果、コスト削減、回復力強化、容量への迅速なアクセスを実現できる可能性がある。
ただし制限も幾つかある。全てのワークロードにこの統合のメリットがあるわけではない。メリットがあるかどうかは、ストレージのスループットとアプリケーションの遅延要件に左右される。インフラ管理の効率が向上するには、アプリケーションとクラウドベンダー製品との互換性が必要になる。クラウド以外のストレージの比率が高ければ、大きなメリットは得られない可能性がある。
ITチームは、ベンダーのアプローチの違いも精査する必要がある。AWSの製品は最も細かく制御される。Azureは最も柔軟で、Googleはコンテナ化されたワークロードに適している。
だが、今はまだ初期段階だ。各ベンダーは今後、ストレージの効率向上を求める企業にアピールするため、プラットフォームにさらなる投資を行うことは確実だろう。
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