人々の物理的な移動が制限される状況において、ARとVRの業務活用の可能性が開けた。実際にARやVRを活用してコロナ禍に適応している事例を紹介する。
前編(ビデオ会議では埋まらない穴を補完するツールと機器)では、テレワークで「オフィスの休憩所」を実現する方法とビデオ会議の限界を紹介した。
後編では、Marsh & McLennanがこの事態を解決した方法とオンラインイベントの事例を紹介する。
そこでMarsh & McLennanが取ったアプローチは、拡張現実(AR)ヘッドセットを使ってオンサイトのエンジニアが動画と音声をライブストリーミングする方法だ。オンサイトのエンジニアにARヘッドセットを送り、使い方をトレーニングする。その後、遠隔地にいるMarsh & McLennanのリスクエンジニアリングチームと保険会社のリスク評価エンジニアの求めに応じて施設内を歩き回り、ライブ動画で視聴できるようにする。
市場にはさまざまなヘッドセットがある。Marsh & McLennanが必要とするのは、石油精製所などに配備できる安全なヘッドセットだ。
ラフター氏はヘッドセットを選択した経緯を次のように話す。「健康と安全性の観点から、ハンズフリーで業界の安全基準を満たすARヘッドセットが必要だと認識していた。多くの機器を調査した後、RealWearの音声対応ヘッドセット『HMT-1Z1』に決めた」
このヘッドセットにはネットワーク接続が必要だ。そこで安全で頑丈なスマートフォンであるEcomの「Smart-Ex 02 DV1」を使うことにした。
このヘッドセットはZoom、Teams、Webexのビデオ会議をサポートする「Android」搭載のタブレットのようなものだとラフター氏は説明する。ハードウェア的には3つのマイクとノイズキャンセラーを備えている。
安全基準を満たすためHMT-1Z1のバッテリーは交換できないが、4時間は十分電力が提供されるとラフター氏は話す。
コロナ禍終息後もヘッドセットを使い続けるかと問われた同氏は次のように答えた。「200日間も出張する生活に急いで戻りたいとは思わない」
現場を仮想的に調査できるようになれば、調査はオンサイトのリスクエンジニアに制限されなくなる。イエメン、パキスタンの一部、イラクなど、渡航が制限されている地域ではARヘッドセットを用いた仮想調査を強化する機会もある。
The Supper Clubのオリバー・リングウッド=クラッドドック氏(CEO)は、最近仮想現実(VR)ヘッドセットを前提とするイベントを開催した。
このイベントはVRラーニング企業The Leadership NetworkのVRプラットフォーム「GEMBA」で開催された。目的は、英国のEU離脱後、そしてコロナ禍終息後のコミュニケーションとコラボレーションに仮想世界を利用する方法を示すためだ。
仮想世界では、人々がアバターで表現される。「アバターはピクセルの集まりにすぎないが、人間味が加えられている。アバターの関わり方には驚かされる」(リングウッド=クラッドドック氏)
GEMBAはイベントホールを再現する。そこには小会議室とホワイトボードがあり、人々は3次元とソーシャル空間で作業できる。リングウッド=クラッドドック氏は、このような仮想世界には人々が100%議論に参加する真のコラボレーションを実現する可能性があると考えている。
コロナ禍は多くの企業が従業員を即座にテレワークに切り替えることを余儀なくした。そう語るのは、BCS, The Chartered Institute for ITのアラン・ウォー氏(コンサルタントスペシャリストグループ 議長)だ。「テレワークという精霊を瓶から出してしまった今、世界中の企業は平常時に戻ることを想定していない」と同氏は話す。
ここ数年、週に1日ぐらいはスタッフのテレワークを可能にするというプレッシャーが根底にあった。「だが、そのレベルの変革を実現できたとは到底考えられない」とウォー氏は話す。
コロナ禍がもたらした思いがけない成果の一つが、この変革の想定を劇的に変えたことだ。コロナ禍終息後の仕事の進め方はどうなるのか。McKinseyによると、テレワーカーの生産性が向上したと感じている雇用主は多いという。
人々が柔軟性のある働き方を経験してほぼ1年になる。本当に生産性が高いとしたら、テレワークはオフィスが再開するまでの一時的な働き方と見なすべきではない。この状況はコロナ禍以前にはかなり難しかったことを実現する可能性を企業にもたらすとウォー氏は考え、次のように話す。「グローバルに見れば、テレワークには興味深い側面がある。企業は世界中のさまざまな地域から非常に迅速に専門家を取り込むことができる」
技術はこれからも進化を続ける。人々はもっと信頼性の高い家庭用ブロードバンド接続を求めるようになるだろう。だが最も大きな課題は、現場の管理者や監督者がチームの管理方法を変えることだとウォー氏は考えている。
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