テレワークのための3アプローチ【後編】
テレワーク時代で可能性が広がったARとVR
人々の物理的な移動が制限される状況において、ARとVRの業務活用の可能性が開けた。実際にARやVRを活用してコロナ禍に適応している事例を紹介する。
前編(ビデオ会議では埋まらない穴を補完するツールと機器)では、テレワークで「オフィスの休憩所」を実現する方法とビデオ会議の限界を紹介した。
後編では、Marsh & McLennanがこの事態を解決した方法とオンラインイベントの事例を紹介する。
2.現場向けの拡張現実(の続き)
そこでMarsh & McLennanが取ったアプローチは、拡張現実(AR)ヘッドセットを使ってオンサイトのエンジニアが動画と音声をライブストリーミングする方法だ。オンサイトのエンジニアにARヘッドセットを送り、使い方をトレーニングする。その後、遠隔地にいるMarsh & McLennanのリスクエンジニアリングチームと保険会社のリスク評価エンジニアの求めに応じて施設内を歩き回り、ライブ動画で視聴できるようにする。
市場にはさまざまなヘッドセットがある。Marsh & McLennanが必要とするのは、石油精製所などに配備できる安全なヘッドセットだ。
ラフター氏はヘッドセットを選択した経緯を次のように話す。「健康と安全性の観点から、ハンズフリーで業界の安全基準を満たすARヘッドセットが必要だと認識していた。多くの機器を調査した後、RealWearの音声対応ヘッドセット『HMT-1Z1』に決めた」
このヘッドセットにはネットワーク接続が必要だ。そこで安全で頑丈なスマートフォンであるEcomの「Smart-Ex 02 DV1」を使うことにした。
このヘッドセットはZoom、Teams、Webexのビデオ会議をサポートする「Android」搭載のタブレットのようなものだとラフター氏は説明する。ハードウェア的には3つのマイクとノイズキャンセラーを備えている。
安全基準を満たすためHMT-1Z1のバッテリーは交換できないが、4時間は十分電力が提供されるとラフター氏は話す。
コロナ禍終息後もヘッドセットを使い続けるかと問われた同氏は次のように答えた。「200日間も出張する生活に急いで戻りたいとは思わない」
現場を仮想的に調査できるようになれば、調査はオンサイトのリスクエンジニアに制限されなくなる。イエメン、パキスタンの一部、イラクなど、渡航が制限されている地域ではARヘッドセットを用いた仮想調査を強化する機会もある。
3.仮想現実を使用した参加の改善
The Supper Clubのオリバー・リングウッド=クラッドドック氏(CEO)は、最近仮想現実(VR)ヘッドセットを前提とするイベントを開催した。
このイベントはVRラーニング企業The Leadership NetworkのVRプラットフォーム「GEMBA」で開催された。目的は、英国のEU離脱後、そしてコロナ禍終息後のコミュニケーションとコラボレーションに仮想世界を利用する方法を示すためだ。
仮想世界では、人々がアバターで表現される。「アバターはピクセルの集まりにすぎないが、人間味が加えられている。アバターの関わり方には驚かされる」(リングウッド=クラッドドック氏)
GEMBAはイベントホールを再現する。そこには小会議室とホワイトボードがあり、人々は3次元とソーシャル空間で作業できる。リングウッド=クラッドドック氏は、このような仮想世界には人々が100%議論に参加する真のコラボレーションを実現する可能性があると考えている。
長期に及ぶテレワーク
コロナ禍は多くの企業が従業員を即座にテレワークに切り替えることを余儀なくした。そう語るのは、BCS, The Chartered Institute for ITのアラン・ウォー氏(コンサルタントスペシャリストグループ 議長)だ。「テレワークという精霊を瓶から出してしまった今、世界中の企業は平常時に戻ることを想定していない」と同氏は話す。
ここ数年、週に1日ぐらいはスタッフのテレワークを可能にするというプレッシャーが根底にあった。「だが、そのレベルの変革を実現できたとは到底考えられない」とウォー氏は話す。
コロナ禍がもたらした思いがけない成果の一つが、この変革の想定を劇的に変えたことだ。コロナ禍終息後の仕事の進め方はどうなるのか。McKinseyによると、テレワーカーの生産性が向上したと感じている雇用主は多いという。
人々が柔軟性のある働き方を経験してほぼ1年になる。本当に生産性が高いとしたら、テレワークはオフィスが再開するまでの一時的な働き方と見なすべきではない。この状況はコロナ禍以前にはかなり難しかったことを実現する可能性を企業にもたらすとウォー氏は考え、次のように話す。「グローバルに見れば、テレワークには興味深い側面がある。企業は世界中のさまざまな地域から非常に迅速に専門家を取り込むことができる」
技術はこれからも進化を続ける。人々はもっと信頼性の高い家庭用ブロードバンド接続を求めるようになるだろう。だが最も大きな課題は、現場の管理者や監督者がチームの管理方法を変えることだとウォー氏は考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ビザスク] 製造業の新事業創出 成功の鍵は「タラレバ問題克服」と「3つの判断ポイント」 -
製品資料
[日本シーゲイト株式会社] 実験のやり直しを防止 研究データ基盤に求められる高可用性ストレージとは -
製品資料
[株式会社Leaner Technologies] もっと安く買えるのに…… 間接材購買で“コスト削減機会”を逃さないためには -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] フィールドサービスの熟練技術者が「AIエージェント」を求めている理由 -
製品資料
[株式会社グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンス] 基礎から分かる「就労ビザ」 アメリカ進出を目指すなら知っておきたい取得戦略
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
2
ソフトウェア開発組織の疲弊を防ぐ、AI駆動開発の「レビュー負荷軽減」実践事例
-
3
仮想化環境の死角を“未知の脅威”が狙う時代――新たな敵をどう見破るか?
-
4
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
5
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
6
AI時代の競争力はデータ基盤で決まる 仮想化刷新を未来への投資に変える条件
-
7
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
8
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
9
NVMeとはやっぱり違うCXL接続の「MS-SSD」とは何か?
-
10
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
登録セキスぺが語る「SCS評価制度」の舞台裏 星を取得すべき理由と対応のコツ
-
2
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
5
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
6
AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは?
-
7
防御側の「3つの前提」が崩壊 AI時代のセキュリティに必要な3つの転換とは?
-
8
AI活用を停滞させる「2:6:2の壁」を乗り越えるためのポイントとは?
-
9
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
10
OSSでは困難 100超のサービスを持つマネーフォワードが実践した統合監視術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー