英Tescoのマット・アトキンソン最高マーケティング責任者に、CIOとの連携、同社のデータ分析戦略とロイヤルティープログラムについて聞いた。
最高マーケティング責任者(CMO)と最高情報責任者(CIO)は、同じ企業にいるにもかかわらずIT関連の意思決定時に連携しないことで有名だ。両者の役割は、これまで非常に異なっていたし、いまだに見解が一致しないことは多い。しかし、ITがビジネスの意思決定を大きく左右するようになった現在、この二者の断絶が大きな問題になっている。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年11月20日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
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CMOとCIO間の断絶は、企業が有効な顧客体験を提供する能力を脅かす可能性がある。アイルランドのAccentureの調査において、マーケティング部門をサポートすることが最優先事項またはそれに準じる優先事項であると回答したCIOは45%しかいなかった。また、IT部門がマーケティング部門を蚊帳の外に置き、時間的・技術的なソースを確保していないと感じているCMOは30%を超えた。
しかし、Tesco(訳注)のCMOであるマット・アトキンソン氏とCIOのマイク・マクナマラ氏は、効率的に連携して魅力的なマルチチャネルのカスタマージャーニーを生み出している。
訳注:英国の他十数カ国でスーパーマーケットやコンビニエンスストアを展開するチェーンストア。日本には2003年に進出したものの、2011年に撤退を発表。
ITおよびデータ畑を歩んできたアトキンソン氏は、2人の関係を次のように語る。「マイク(マクナマラ)は、話が通じるテクノロジストだ。顧客に対して同じ情熱を持っているので、うまくやっていけている。顧客のためにビジネスを刷新しようと、多くの時間を共に過ごしている」
アトキンソン氏の話では、2人は定期的にミーティングをし、協力して製品ロードマップやガバナンスに取り組んでいるという。「私はマイクのやることを信頼しているし、マイクは私が、顧客が望み、必要とし、楽しんで使えるものを作ると信じている」とアトキンソン氏は言う。
この関係の成果として、Tescoではマルチチャネルの顧客体験が確立されている。オンラインでの食品販売を初めて手掛けたTescoは、店頭へのAR(拡張現実)ミラーの設置、独自の7インチタブレット「Hudl」、データドリブンのポイントシステム「Clubcard」など、革新的な技術を導入している。
アトキンソン氏は、マルチチャネルを利用する顧客は、シングルチャネルの顧客の2倍の価値があり、はるかにロイヤルティーが高いと話す。「宅配やクリック&コレクト(訳注)を利用することもできるし、来店して買い物をすることもできる。チャネル同士を連携させてサービスを提供すれば、顧客の購買意欲をさらに行動に結び付けることができる」
訳注:ネットで注文して、店舗やピックアップポイント(一例:コンビニ受け取り)で受け取れるサービス。
Tescoでは、顧客データのマイニングにOracleのデータアナリティクスとデータベース、そして独自のクラウドツールの顧客体験ポートフォリオを活用している。
Tesco Clubcardは、英国初の大規模なロイヤルティープログラムの1つで、約20年前に誕生した。Clubcardのおかげで、Tescoは顧客の店頭およびオンラインでの購入履歴から得られたデータを基に、顧客を正確に認識できているとアトキンソン氏は話す。
「Clubcardのおかげで、Tescoでは本当にデータをビジネスに生かせている」
このデータマイニングの結果として、Tescoはデータ分析企業の英Dunnhumbyの協力を得て顧客体験を向上し、既存のロイヤルティープログラムを拡張していった。
サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorldの基調講演において、アトキンソン氏はマルチチャネルを利用する顧客のビデオを披露した。ビデオでは、顧客はモバイル端末を使ってさまざまな方法でショッピングリストを作成する。その1つがAR(拡張現実)技術を利用する方法だ。バナナの写真を撮ると、バナナがショッピングリストに追加される。後でTescoの店舗に行った際にバナナを買い忘れていると、レジで係に指摘してもらえるという具合だ。
「Tescoでは顧客の1人ひとりが認識される。顧客はARサービスを使っていて、このサービスが特定のメタデータ(この場合は“バナナ”)にアクセスする。これは、この(バナナを買うという)行動を顧客が手間をかけずに完了できるようにするためのサービスの一例にすぎない」とアトキンソン氏は説明する。
アトキンソン氏お気に入りの革新的なデータ分析の例は、Tescoが24時間営業を始めるに至った経緯に関するものだ。データ分析チームは、特定の店舗において、来店者数が最大収容人数に近づきピークに達すると、すぐに減少に転じるというパターンが現れることに気が付いた。
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