VMの停止時に復元できるようにする仕組みがバックアップだ。バックアップが適した用途と注意点、スナップショットとの違いを説明する。
スナップショットとバックアップは、どちらも仮想マシン(VM)の復元に役立つが、その仕組みは異なる。スナップショットを解説した前編「仮想マシンを守る『スナップショット』の基礎 その仕組みと用途とは?」に続く本稿は、VMのバックアップの仕組みと適した用途、利用時の注意点を説明する。
バックアップはVMの正確なコピーを取る仕組みだ。バックアップシステムは一般的に、オリジナルのVMとは別のディスクにバックアップファイルを保存する。Veeam Softwareの「Veeam Backup & Replication」やVeritas Technologiesの「NetBackup」などのバックアップソフトウェアは、VMのデータを一定期間ごとにコピーし、別の場所のストレージシステムに移動する。VMをバックアップする際にデータ圧縮や重複排除を使用するバックアップソフトウェアもある。
バックアップファイルの保存先はオリジナルのVMとは別であるため、バックアップがオリジナルのVMの運用に及ぼす影響は軽微だ。オリジナルのVMが機能しなくなったら、バックアップシステムはストレージシステムからバックアップファイルを取得して、そのバックアップファイルの作成日時へとVMを復元する。管理者はテープドライブやクラウドストレージなど、さまざまな種類のストレージシステムにバックアップファイルを保存できる。そのためオリジナルのVMのストレージ容量を圧迫せず、VMを自然災害やサイバー攻撃から守りやすくなる。
データの破損やサイバー攻撃、自然災害に対する防衛手段として、バックアップは役立つ。そのためVMのバックアップはDR(災害対策)に不可欠な要素だ。管理者がバックアップファイルを運用中のVMとは別の場所に保存することで、保護をより強固層が1つ加わるメリットもある。
管理者は、バックアップ手法によってはVMを効率よく処理できないことがある点に注意する必要がある。導入を検討しているバックアップソフトウェアが、システムのゲストOSにエージェントのインストールを必要とするものならば、オリジナルのVMの処理速度といったパフォーマンスに影響する可能性がある。バックアップシステムが複数のVMのバックアップを同時に実行している場合はオーバーヘッドが増え、それがパフォーマンスのボトルネックの原因になりかねない。
バックアップシステムがバックアップを実行するときは、VMをバックアップに適した安定状態に保つため、管理者はVMを一時停止しなければならないことがある点にも注意が必要だ。そうしなければ一部のVMデータが、復元に適した状態にならない可能性がある。
一般的にバックアップのプロセスは、リソースへの負荷が高くなることに加え、時間がかかる。これはサーバ仮想化ソフトウェアのホストとVMのパフォーマンスに加え、アプリケーションの可用性にとっても好ましくない。管理者は一定期間に実行するバックアップの回数を減らすことでリソースを維持できるが、バックアップファイルが古い状態になる恐れがある。
VMのスナップショットは、VMを特定時点へと迅速に復元する、効率の良い仕組みだ。スナップショットの保存先は通常、VMと同じディスクであり、その保持期間は概して短い。スナップショットはVMの復元を複数のファイルに依存する。素早く保存できるメリットがあるが、依存するファイルを利用できなければ復元は不可能になる。
バックアップファイルは独立した自己完結型のファイルだ。管理者はバックアップファイルを適切な場所に保存でき、復元する際にもファイル間の依存関係を使用しない。バックアップはVMの完全なコピーを作成するため、DRへの利用に適している。
管理者はバックアッププロセスにスナップショットを組み込むことで、バックアップの運用を効率化できる。ただしスナップショットでは依存関係にある一連のファイルが必要になるため、スナップショットだけをバックアップ手段として使用することはできない。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
さまざまなメリットをもたらす仮想化環境だが、2023年にVMwareが買収されたことで、ユーザー企業は難しい判断を強いられている。そこで、コストメリットも大きい、仮想化環境のモダナイゼーションの方法について解説する。
データ分析・利活用のニーズが高まる中、アクションのベースとなるデータも膨大な容量となり、今後も増え続けていく見通しだ。そうなると、各企業はデータ利活用基盤として、信頼性や拡張性の高いストレージを求めるようになるだろう。
OSの移行には「データ移行」が付き物だが、その業務負荷の高さに悩まされているIT管理者は多いだろう。Windows 11への移行を進める前に知っておきたい、「データレスPC」の有効性や、導入で得られる“プラスα”のメリットを解説する。
技術や市場の変化が激しい自動車業界にあって、長年、数多くの自動車メーカーに部品を供給してきた東海理化。同社は変化に柔軟に対応するためのDX推進に当たって、これまで運用してきたレガシー仮想環境からの移行を断行する。
ハイブリッド/マルチクラウドへ移行する企業のIT環境だが、クラウド同士の連携は複雑な上に、運用も非効率になりがちだ。そこで、この問題を解消するためのハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームを紹介する。
VMwareからの移行で新たな価値を得るための“最適な移行先”を探る (2024/11/5)
VMware対策に追われるSIer 課題は「移行先の選定」だけではなかった (2024/7/31)
VDI第三の選択肢は「高い、設計が難しい、コストがかさむ」を解消できるか (2024/3/28)
“VMwareの急変”に苦悩するIT部門をNutanixとOpenShiftが救う理由 (2024/3/21)
オンプレミスを撤廃したい企業に立ちはだかる「移行の壁」、その越え方とは (2024/3/15)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。