VMの貴重なデータを失わないためには、管理者はスナップショットとバックアップの違いを理解する必要がある。両者は何が違うのか。まずはスナップショットを理解しよう。
管理者が仮想マシン(VM)の「スナップショット」と「バックアップ」の違いを細部まできちんと理解しているかどうかが、VMの管理戦略の成否を分けることがある。スナップショットとバックアップが実行する動作は似ているが、両者の目的は異なる。
管理者はスナップショットを利用して、ファイルや構成、メモリ、電源設定といった、特定の時点のVMデータを保持できる。スナップショットはVM単位で復元ポイントを用意するための仕組みだ。管理者は復元ポイントを使って、そのスナップショット実行時点の状態にVMをロールバックできる。
VMのスナップショットシステムは、前回のスナップショット実行以降に加わった変更を追跡する差分ファイルとして新しいスナップショットファイルを作成する。スナップショットシステムはこうしたプロセスを自動的に実行する。その後特定のスナップショットファイルに、アーカイブ済みの全スナップショットとオリジナルの仮想ディスクを組み合わせることで、VMを復元する。
システムの開発やテストにスナップショットが役立つ。スナップショットによって、ソフトウェアアップグレードやパッチの適用、新しいソフトウェアの導入、システム構成の変更、ドライバのインストールなどを実行する前の時点にVMを復元できる。サイバー攻撃を受けた場合のVMの復元も容易だ。
スナップショットファイルはVMの正確な複製ではなく差分ファイルであるため、容量効率が優れている。スナップショットファイルの保存先は通常、既存のVMファイルと同じディスクであるため、管理者は別のストレージシステムから長い時間をかけてファイルをダウンロードする必要がない。
ただしスナップショットには幾つかの課題がある。スナップショットは瞬時に貴重なディスク容量を占有するため、システムの処理速度などのパフォーマンスに悪影響を及ぼす恐れがある。スナップショットファイルを保持し、蓄積する期間が長くなるほど、他の用途に活用できないディスク容量が増える。そのため長期間にわたってスナップショットファイルを保持するのは現実的ではなく、長期的なデータ保護には向かない。
管理者がVMを復元するには、スナップショットファイルを再構築しなければならない課題もある。過去のスナップショットファイルやオリジナルの仮想ディスクが破損したり利用できなくなったりすると、スナップショットファイルを使う方法では復元できなくなる。スナップショットファイルを使って個別のファイルを復元することも不可能だ。スナップショットシステムは変更がなかったファイルを前回のスナップショットファイルから削除する。そのためスナップショットはVMの全体を復元する用途でしか利用できないことが一般的だ。
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