あの名門歌劇場がクラウド全面移行をやめて「HCI」を選んだ“なるほどの理由”ロイヤル・オペラ・ハウスの事例に学ぶ「クラウドじゃない」選択肢の価値【前編】

英国のロイヤル・オペラ・ハウスはクラウドサービスへのシステム移行を検討していたが、ある理由で「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)の採用を決定した。その理由は何か。HCI採用に至った経緯を追った。

2021年08月25日 05時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 ロンドンの歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH:Royal Opera House)はサーバやストレージ、仮想化ソフトウェアを共通の筐体に収めた、Nutanixの「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)製品を導入した。以前はDellのiSCSIストレージアレイ「Dell EqualLogic」を中心としたシステムを構築していたが、老朽化に伴い刷新を検討。NutanixのHCI製品にRubrikのバックアップ・災害復旧(DR)製品を組み合わせたシステムへの移行によって、運用コストを抑えた。

 ロンドン中心部に位置するROHは年間、400回以上の公演を開く。主にオンラインのチケット販売で収益を得ており、安定したシステム稼働をビジネス上の重要な課題として認識している。万が一システムに不具合が生じた場合に目指している復旧時間は5分だ。

“クラウド全面移行”を白紙にして「HCI」を選んだ“なるほどの理由”

 ROHは2018年、5000万ポンド(約76億円)を投資した建物のリニューアル工事に合わせ、英国2カ所にあるデータセンター内で構築していたシステムの置き換えを検討し始めた。もともとはクラウドサービスに全面的にシステムを移行させることを考えていた。予算の観点からHCI製品の方が運用コストを抑えやすいと考え、クラウドサービスへの移行をやめ、HCI製品の採用を決めた。

 旧システムはDell EqualLogicの他に、Webサイト運用に使っていた「Amazon Web Services」(AWS)といった、一部のクラウドサービスで構成されていた。ROHで技術運用責任者を務めるダニエル・ロビー氏は「拡張性を欠いていることに加えて、IT機器のサポート終了の時期が近づいていることもあって、システムの刷新は急務だった」と振り返る。

 ROHはクラウドサービスへのシステム全面移行を白紙にした後、複数のシステム構築案を検討。最終的に、NutanixのHCI製品を導入し、2カ所のデータセンターに約30TBのストレージを有するシステムを築いた。

 新しいシステムは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の中、予期しなかった効果も発揮した。ROHはパンデミック対策で有観客の公演を中止せざるを得なかったが、新しいシステムに支えられる形で公演をライブ配信し、文化活動を続けることができた。


 後編は、HCI採用によるコストメリットを紹介する。

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