「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)には次に何が起こるのか。成熟期に入るHCIは、クラウドサービスやエッジコンピューティングに影響を与えつつある。業界関係者やコンサルタントの見解を基に動向を予測する。
「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)はさまざまな進化を遂げ、ITインフラの導入や運用管理の煩雑さを解消する存在として企業のデータセンターに定着しつつある。HCIはサーバやストレージ、ネットワーク、ハイパーバイザーなどの機能を1つの筐体として簡単に導入できる製品として認識されている。2020年時点でもHCIの本質的なセールスポイントである“シンプルさ”は変わらない。ただしITの世界では時間がたっても“全く変わらない”ものはほとんどない。HCIは今後どう変化するのか。2023年までの中期的なトレンドを展望する。
HCIはITリソースを必要に応じて拡張できるため、クラウドサービスに似たインフラを実現する手段として認められている。HCIベンダーは、自社製品と各種クラウドサービスとの連携を強化している。この傾向は中期的に継続するだろう。
主要なHCIベンダーは、HCIとクラウドサービスのシームレスな連携を目指している。これによりユーザー企業は「HCIとクラウドサービスの両方で同じレベルの運用管理の容易さを確保しつつ、HCIをベースにしながらクラウドサービスのリソースやサービスも使用できるようになる」と、システムインテグレーターであるWorld Wide Technologyでテクニカルソリューションアーキテクトを務めるジェフ・メルシエ氏は語る。
HCIはよりクラウドサービスに近い存在になっていくと予測できる。マネージドサービスなどのITサービスを提供するLogicalisでデータセンター分野のシニアディレクターを務めるブランドン・ハリス氏は「企業のデータセンターでアプリケーションを運用することは、今後もHCIの重要な用途だ」と話す。だがHCIベンダーは企業のデータセンターだけではなく「ハイブリッド構成にしてクラウドサービスにリソースを拡張できるようにする必要性を認識している」(同氏)という。
システムインテグレーターのAHEADでソフトウェア定義データセンター(SDDC)のプリセールススペシャリストを務めるケン・ナルボーン氏は「エッジコンピューティングが普及する中で、HCIはエッジコンピューティングの成長を促進する要因になるだろう」と指摘する。IoT(モノのインターネット)デバイスやさまざまな機能を搭載したスマートデバイスの増加によって、データの発生源であるエンドポイントに近い場所(エッジ)におけるデータ処理の需要が高まる可能性がある。「迅速にコンピューティングリソースの導入と拡張ができ、豊富なストレージリソースを提供できるHCIを使うことで、データを生み出すデバイス類の増加が実現する」と同氏は語る。
市場調査やコンサルティングを手掛けるEvaluator GroupでHCI分野のアナリストを務めるエリック・スラック氏は「工場の自動化、自動車の自動運転、スマートオフィス、スマートシティーなどの導入によって、エッジコンピューティングは成長する」とみる。スラック氏は、監視カメラもエッジコンピューティングを後押しする要因になると説明する。こうして市場が拡大する可能性があるエッジコンピューティングは、HCIの有力な用途の一つになるだろう。
エッジコンピューティングの市場拡大がHCIのトレンドや製品開発に影響を与えるという見方もある。スラック氏によるとHCIベンダーは、エッジコンピューティング用途を想定した小規模で耐久性の高い製品モデルを投入している。
あらゆるエッジコンピューティングの用途にHCIが適しているわけではない。例えば多数のノード(サーバ)が必要な場合だ。企業が何千カ所もの異なる場所にコンピューティングリソースを配置しなければならない場合、HCIは高くつく可能性がある。こうした場合「企業はエッジコンピューティング向けのプラットフォーム製品に関心を寄せるだろう」とハリス氏は語る。
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