Dell EMCとVMwareを擁するDell Technologiesは「HCI」市場で支配的な立場にある。その牙城を崩す可能性があるのが、Nutanixとの協業で市場での存在感を増してきたHPEだと専門家は指摘する。どういうことなのか。
複数のサーバの内蔵ストレージを1つの共有ストレージとして利用する「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)市場を大きく動かし得るのがHewlett Packard Enterprise(HPE)とNutanixの関係だ。HPEはNutanixのソフトウェアを搭載するHCIアプライアンスの販売が伸びている。NutanixとHPEは2019年にパートナーシップ契約を結び、HPEのサーバ「HPE ProLiant」にNutanixのHCIソフトウェアを搭載したHCIアプライアンスを「HPE ProLiant DX」シリーズとして提供するようになった。
Nutanixによると、HPE ProLiant DXシリーズは、HPEとパートナーシップ契約を結んだ最初の四半期で117社の新規ユーザー企業を獲得した。「これらの取引には、金融サービス企業との400億ドルのサブスクリプション契約と、別の金融サービス企業との100億ドルの取引が含まれている」と、NutanixのCEO(最高経営責任者)を務めるディラージ・パンディ氏は話す。「HPEは当社事業の大きな部分を占めつつある。これは両社にとってウィンウィンの関係だ」(パンディ氏)
HPEはサブスクリプション型でIT製品を提供するサービス「HPE GreenLake」としてもHPE ProLiant DXシリーズを提供している。だが、その取引数は公開していない。
パンディ氏によれば、NutanixのHCIソフトウェアをHPE製のサーバに登載したHCIアプライアンスが伸びている。HPEがユーザー企業にNutanixのHCIソフトウェアを推奨していることが大きな要因だという。NutanixのHCIソフトウェアは組み込み型(あるシステムに特化した仕様)のハイパーバイザー「AHV」を使用する。この特徴はHPEが提供するHCIアプライアンス「HPE SimpliVity」にはない。
調査会社IDCが2019年第3四半期に実施したHCIの市場調査によると、HCIアプライアンスの売上高でトップのシェアを獲得したのはDell Technologiesで、市場全体の35.1%を占めた。Nutanixが13.0%、Cisco Systemsが5.4%、HPEが4.6%、Lenovoが4.5%と続く。IDCはHCIソフトウェアについても調査しており、シェアトップはVMwareで38.0%、Nutanixが27.2%でそれに続いている。
Dell Technologiesは、VMwareを傘下に抱えていたEMCを買収する前から、NutanixのHCIソフトウェアを同社のサーバ「PowerEdge」に搭載したモデルを販売してきた。だが、より力を注いでいるのはVMwareのストレージ仮想化製品「vSAN」を搭載したDell EMCのHCIアプライアンス「Dell EMC VxRail」(以下、VxRail)の方だ。
調査会社Forrester Researchでサーバ分野のアナリストを務めるナビーン・チャブラ氏によると、HCI市場が拡大するトレンドを認識したのはHPEよりDell EMCの方が早い。Dell TechnologiesがHCI市場をリードするようになったのはそのためだ。とはいえNutanixとHPEの連合が成長し、Dell EMCとVMwareの連携体制に近づけば、両社は同等に戦えるようになるとチャブラ氏は考えている。
HPEがDell EMCとVMwareにどのように挑むのか。「その答えがNutanixとの緊密なパートナー関係だった」とチャブラ氏は話す。自社のハイパーバイザーがあり、サーバがあり、ストレージがある――これがDell EMCとVMwareの強みだった。今ではHPEにも同じ強みがある。「Dell Technologiesの好敵手になるのはHPEだ」とチャブラ氏は語る。
Dell Technologiesの最高財務責任者(CFO)を務めるトーマス・スイート氏は「当社はVxRailで大成功を収めたが、中核となるストレージ事業は下降気味だ」と話す。だがスイート氏は2020年も引き続きHCIが成長株になると期待している。
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