従量課金制ストレージサービスプロバイダーに問うべき5つの質問失敗しないストレージ投資のコツ

プロビジョニングの困難さから、従量課金モデルのストレージサービスを利用する動きが拡大している。最適なサービスを見つけるために、ここで紹介する5つの質問をプロバイダーに投げ掛けてみることをお勧めする。

2021年11月09日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 ここ10年でデータ量が急激に増えており、今後もこの状況は続く。Statistaの研究者の予測によると、2020年から2022年の間の年平均成長率は42%だ。

 一企業が必要とするストレージ容量を正確に予測するのは難しく、オーバープロビジョニングのリスクが伴う。そのため貴重な設備を活用し切れなかったり、逆に容量不足で新規アプリケーションの展開が困難になったりすることがある。

 Forrester Researchのナビーン・チャブラ氏(データストレージ担当アナリスト)は言う。「現時点で必要な容量と2〜3年後に必要になる容量の絶妙なバランスを見つけなければならない」

 その結果、従量制課金モデルのストレージが台頭している。

iStock.com/zdravinjo

 「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」は、いずれも従量制課金モデルを採用している。これに追従する形でオンプレミスハードウェア、クラウドストレージ、ハイブリッドストレージにサブスクリプションベースのサービスと従量制課金モデルが導入されている。

 サービスの機能、コスト、パフォーマンスは多岐にわたる。本稿では、サプライヤーに問い掛けるべき5つの質問を紹介する。

1.決済モデルはどうなっていて、基本コミットメントはあるか

 従来型のストレージ購入モデルには、ハードウェアを購入するモデル、リースやその他の調達手段を使うモデルなどがあった。現在はこれを補完するモデルが登場している。as a Serviceに対するGB単位の価格設定から固定サブスクリプション(1年、2年、または3年が基本期間)までさまざまだ。

 AWSの「S3 標準」は、「アジアパシフィック(東京)」リージョンでは1GB当たり0.025ドルのコストがかかる(訳注)。この価格設定が適用されるのは最初の50TB/月で、その後は1GB当たり0.023ドルに下がる。AWSは競合する他のハイパースケーラーと同様、長期アーカイブなどの用途向けにさまざまなストレージ価格設定(https://calculator.aws/#/)を用意している。

訳注:原文はロンドンの価格だが、日本語化に際して東京リージョンの料金に改めた。

 クラウドストレージは最も細かい価格設定を提供する。一般的には基本コミットメント(課金対象となる一定量のストレージ)と、使用量に応じて課金されるバッファー容量またはバースト容量がある。

 これにより特に初期段階での柔軟性が提供され、将来のストレージ需要や予期しない需要の急増に過剰に課金されることなく対処できる。

 Dell Technologiesの「APEX Flex on Demand」は将来の使用可能性に対して基本容量とバッファー容量が設定される。IBMには、物理ストレージ容量を余分にプロビジョニングして使った分にのみ課金するモデルもある。

2.ストレージをどのように測定し、どのように支払うか

 as a Service型ストレージのサプライヤーは、監視ツールを使って使用量を計測する。

 この監視ツールは重要だ。メーカーはバースト容量と手間が掛からないアップグレードパスを提供することを目的に、顧客が実際に支払うよりも多くのストレージを出荷する可能性が高い。使用状況の監視はストレージのプロビジョニングを実際の使用量に合わせ、クラウドにデータを移動したりファイルを低コストのストレージやアーカイブに移動したりする際にも役立つ。

 大半のサプライヤーは、月単位や四半期単位で使用量を平均して課金する。IBMは毎日使用量を測定し、1カ月の平均を算出する。Dellは毎日の平均を算出し、それを基に1カ月の平均値にする。HPEは従量制課金ベースの価格設定を2006年から提供している。

 CIO(最高情報責任者)は、課金モデルが価格設定にどのように影響するかを調査する必要がある。コストは積み上がる可能性があるため、時間の経過とともに支払い過剰になる可能性には特に注意しなければならない。「ストレージを5分間利用しただけでも課金対象になるのか、基本容量を超える場合どの程度細かく課金されるのかなどを問い合わせるべきだ」とForresterのチャブラ氏は言う。

3.アップグレードは可能か、最低コミットメントはあるか

 サブスクリプションベースのクラウドストレージやハイブリッドストレージの魅力の一つは、ハードウェアを交換しなくてもアップグレード可能なことだ。

 ハイブリッドシステムやオンプレミスシステムの場合、アップグレード方法はサプライヤーによって異なる。最初から余分にプロビジョニングする方法、プラン内でアップグレードする方法、短期間または契約によってクラウド容量を組み合わせる方法などがある。

 Hitachi Vantaraは「EverFlex Consumption」とStorage as a Service形式のサービスを使ってクラウドに似たモデルを提供している。IBMは契約開始時に3年分の容量を提供するが、課金するのは使用した分だけだとしている。NetAppは広範な課金モデルを用意し、顧客がオンプレミスストレージやパブリッククラウドストレージにデータを階層化できるようにしている。

 大半のStorage as a Serviceサブスクリプションの最低運用期間は1年で、24カ月と36カ月の契約も利用可能だ。チャブラ氏によると、この期間はほとんどのアップグレードサイクルと一致しているという。

 長期契約も可能だが、3年以上の使用量を予測するのは難しい。

4.他に考慮すべき料金はあるか、SLAについてはどうか

 クラウドストレージサプライヤーは、1GB当たりの料金を請求する。また、顧客がクラウドからデータを取り出す際にエグレス料金を課金する。一般的には、データをアップロードする際に課金されることはない。監視などのツールに別途料金を請求する可能性もある。

 サブスクリプションベースのモデルでも、細かい部分に料金がかかることがある。価格にはコアOSとサポートが含まれているのか、それともハードウェアのみなのか、顧客向けの監視ツールはサービスにバンドルされているか、それともITチームが別途ライセンスを取得する必要があるのか、そうしたことを確認してほしい。

 ハイブリッドクラウドモデルの場合、イングレス料金とエグレス料金、ローカルシステムとクラウドベースのシステムを接続するための料金も確認する必要がある。単一の監視ツールを利用できない場合、あるいは複数サプライヤーのサポートを希望する場合は、堅牢(けんろう)なサードパーティー製ストレージ管理ソフトウェアが検討要素になる。

 サプライヤーのSLA(サービスレベル契約)と契約条項を精査する必要もある。サプライヤーのSLAは特に可用性の点で受け入れ可能かどうか、ハードウェア障害はどの程度迅速に修復されるか、SLAはセキュリティのパッチや停止時のペナルティーなどの領域にも対応しているか、そうした点を確認しておきたい。

5.サプライヤーの提案は、どの程度のエコシステムに適合しているか

 ストレージ契約が将来にわたってどの程度保証されるかについても精査する必要がある。Storage as a Serviceのメリットは、設備投資とハードウェアの所有の結び付きが取り除かれる点にある。ただし契約に柔軟性がなければ、ソフトウェア定義ストレージからハイパフォーマンスシステムに至る新しい技術を使う能力や、特にクラウドを利用する能力が制限される恐れがある。

 クラウドとの間でストレージを階層化できると、容量計画、冗長性、コストの点で大きなメリットがもたらされる。

 CIOは、サブスクリプションベースのストレージサービスと従量制課金のストレージサービスへの道を閉ざすのではなく、その柔軟性を活用する必要がある。

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