ストレージベンダーが投入する「LTO-9」準拠のテープ製品がテープ分野を盛り上げている。業界関係者はテープ市場の先行きは明るいと言う。どのような事情があるのか。
テープベンダー各社は、テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)の第9世代「LTO-9」に準拠するテープドライブを投入している。LTO-9のテープドライブは、LTO-9のテープカートリッジ1つに最大45TBの圧縮データを格納できる。
IBMが2021年に出荷を開始したLTO-9のテープドライブは、テープカートリッジからデータを迅速に読み出すアクセラレーター機能「Open Recommended Access Order」(oRAO)を搭載する。同社によれば、oRAOは圧縮データと非圧縮データのどちらにも適用可能で、データへのアクセス時間を大幅に短縮する効果があるという結果が得られた。LTO-9のテープドライブはIBMの他、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、ソニー、富士フイルム、Quantumなども新製品を開発している。
フラッシュメモリなどの高度なストレージ技術が普及する中でも、テープへの強い関心は続いている。これは各ベンダーが数十年にわたってテープに投資してきた結果だ。近年はサイバーセキュリティ戦略におけるテープの重要性が増すなど、テープの価値を引き上げる変化が見られる。業界関係者はテープ独自の特性を挙げて、この分野の先行きは明るいと指摘する。
業界関係者は、テープ市場は少なからぬ利益を生み出すとみている。調査会社Allied Market Researchは、全世界のテープの市場規模が2019年の43.1億ドルから2030年に94.2億ドルに増加すると予測している。複合年間成長率(CAGR)は7.8%になる。
「大企業がすぐにテープから他のストレージに移行することはない」と、コンサルティング会社Communications Network Architectsのプレジデントを務めるフランク・ズベック氏は言う。テープはフラッシュメモリに比べて安価な技術であるため、企業のデータが増加するにつれてテープの需要は高まるからだ。テープはデータをテープカートリッジに保管する仕組みであるため、エアギャップ(ネットワークから切り離すこと)を作るサイバーセキュリティ対策として有効だ。ズベック氏はこの点も企業がテープを必要とする理由になると考えている。
テープはサイバーセキュリティ戦略の重要な要素になるが、テープを使ったことのない企業もある。こうした状況において、IBMで最高マーケティング責任者(CMO)およびストレージ分野のバイスプレジデントを務めるエリック・ヘルツォーク氏は、まず顧客に「包括的なサイバーセキュリティ戦略にはテープが不可欠だ」と伝えているという。「城壁だけでなく、不法侵入者が城壁を乗り越えた場合の対策も必要だ。侵入を許せば社内にランサムウェア(身代金要求型マルウェア)が仕込まれる状況に陥りかねない」(ヘルツォーク氏)。テープは侵入者が入り込みにくい領域を作ることができるので、ランサムウェアの影響を逃れられる可能性が高くなる。
IBMのテープドライブに話を戻そう。同社のLTO-9準拠のテープドライブは、標準でデータの暗号化機能を備えている。これによってデータのプライバシーを確保する他、データの破損を回避することができる。テープドライブの容量単価について、ヘルツォーク氏は「IBM製品の場合は1GB当たり1セント、または1TB当たり5.89ドルだ」と説明する。LTO-9の同社製テープライブラリは、圧縮時で最大1.04E(エクサ)Bのデータを格納できる。
WORM(Write Once Read Many)機能を利用できることもテープのメリットだ。WORMは一度書き込んだデータの消去や書き換えができない形式でデータを保存するので、重要なデータの損失や変更のリスクを最小限に抑えることができる。
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