テープに再注目する動きがある。各種のストレージが出回る中で、企業はテープの何にメリットを見いだしているのか。その理由を探る。
「LTO」(リニアテープオープン)規格のテープの出荷容量(圧縮時)は2020年に減少したが、これは一時的なものだ。今後は増え続けるという見方が強い。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によってオフィスを離れる動きが広がった。だが企業は再びオフィスに戻り始めている。IBMのテープ分野を統括するカーロス・サンドバル氏は、これが追い風になってテープの需要が増えるとみている。具体的にどのような事情があるのか。
富士フイルムでテープ分野の責任者を務めるリッチ・ガドムスキー氏も、2021年はテープの出荷容量が増加すると予測している。2020年に企業が設備増強を延期し、クラウドサービスを利用する傾向が強まったことでテープの出荷容量は減少したが、これは一時的なものだという。
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のシニアアナリスト、クリストフ・バートランド氏は5年以内にテープの出荷容量は2倍以上に増えると考えている。「データ量は増え続けており、その勢いはとどまるところを知らない」とバートランド氏は語る。
増加する膨大なデータを保管するには、HDD、SSD(ソリッドステートドライブ)などのフラッシュストレージ、テープ、クラウドストレージなどを組み合わせる必要がある。「これらのストレージの中でテープが果たす役割は大きい」と、ガドムスキー氏は語る。ユーザーがテープの大きなメリットとして捉えているのは、信頼性やコスト効率、セキュリティなどだ。テープ操作の自動化も進んでおり、作業負荷は小さくなっている。
「かつてテープに見切りを付けた企業にとっても、有力な選択肢として再浮上している」と、Quantumのプロダクトマーケティングマネジャー、ダイアナ・サラザー氏は指摘する。
テープの主要な市場は大規模なクラウドサービス、ビデオ監視、メディアやエンターテインメントの業界などだ。テープは主にアクセス頻度が非常に少ないデータを長期間保存するアーカイブに使われる。この用途におけるテープの強みは「保存コストの低さだ」とサラザー氏は説明する。
消費電力の削減に取り組む企業にとっては、テープは有力な“グリーン技術”になる。Hewlett Packard Enterprise(HPE)のシニアプロダクトマネジャー、ローラ・ロレド氏は「テープライブラリはほとんど電力を消費しない」と説明する。棚に保管するテープは電力を消費しないからだ。
テープは記録媒体のグリーン技術として優れている。「グリーン技術としての用途がテープの次の大きな波になると考えている」とロレド氏は述べる。
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