昔ながらの「磁気テープ」が復活しつつある。HDDやSSDがストレージ市場を席巻する中、テープが必要とされる理由とは。
磁気テープを古い技術であると見なしていたストレージの専門家は少なくない。だがテープは予想外の復活を遂げた。HDDに加えて、SSD(ソリッドステートドライブ)をはじめとするフラッシュストレージがストレージ市場を席巻する中、かつてのようにテープが主流になると考えている人はほとんどいない。だが注目すべき理由はある。
新たな世代のテープは容量が大きい。テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)の最新版(原稿執筆時点)である「LTO-8」では、テープカートリッジ1台の容量がデータの非圧縮時で12T(テラ)B。次期規格「LTO-9」では、容量はさらに増大する。容量の観点ではHDDをしのぐ。「テープ技術は、規格の世代が進むごとにテープカートリッジ当たりの容量も、データの転送速度もほぼ倍増する」。ITコンサルティング企業Information Services Group(ISG)のシンディ・ラチャペル氏はそう解説する。
テープはなぜ復活したのか。その主な理由を見ていこう。
最新のテープドライブ(テープカートリッジにデータを記録するデバイス)は、バックアップやアーカイブ向けのセキュアでコスト効率の高いストレージだと言える。特にマルウェアに対する不安が増大する中でこそ、テープを選択する理由は大きくなる。
「テープカートリッジを簡単に取り外して棚に格納できる。サイバー攻撃者とデータ間の物理的障壁、すなわち“空気の溝”を作り出すことができる」と、IBMでテープ分野を担当するマーク・ヒル氏は話す。物理的にネットワークからデータを隔離することによって接続を遮断し、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)のようなマルウェアから保護できるということだ。
「WORM」(Write Once Read Many:1度だけの書き込み、多数回の読み取り)という機能を搭載しているテープ製品もある。「1度書き込んだデータが改ざんされたり、書き換えられたりしないことを保証できる」とラチャペル氏は説明する。
コンプライアンス(法令順守)や監査の対策として、大容量のデータを長期間にわたって保存する必要がある場合も、テープは有力な選択肢になる。「テープはオフサイト(遠隔地)でデータを保存する安価な手段だ」と、データセンターサービスやディザスタリカバリーサービスを手掛けるSungard Availability Services(Sungard AS)のギリシュ・ダッジ氏は語る。
テープはデータセンターの電力を抑制する助けにもなる。「例えば30日経過して頻繁に利用する必要がなくなったデータの保存先を、テープに変更すれば電力を削減できる」と、ストレージベンダーQuantumのダイアナ・サラザール氏は説明する。
HDDのデータを手付かずのまま何年も放置すればデータが消失することもある。長期的なデータ保存を前提に設計されているテープは、そのリスクが小さい。「最新のテープ技術はビット誤り率(BER)がHDDよりも低い」とラチャペル氏は話す。テープの障害は極めてまれで、テープで発生する問題の大半は人為ミスが関係しているという。
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