データセンターで通信の遅延時間であるレイテンシを減らすための、さまざまな方法やツールがある。システムの「遅い」を解消するための具体策を紹介する。
IT機器間でデータを転送する際、転送要求を出してからデータが届くまでの待ち時間を「レイテンシ」と言う。レイテンシが発生する要因は、ストレージやネットワークにある。データセンターで滞りのないシステム運用を可能にするためには、ストレージやネットワークのボトルネック(弱点)を特定し、レイテンシ対策を講じることが重要だ。
ストレージやネットワークのレイテンシを減らすためのツールは複数ある。例えばLinux Foundationのエッジ(ネットワークの末端)向け管理ソフトウェア「EdgeX Foundry」や、通信相手までの経路情報を取得するツール「traceroute」が挙げられる。企業はこれらを用いて、ボトルネックを特定したり、ネットワーク速度を監視したりできる。他には不揮発性メモリやSD-WAN(ソフトウェア定義ネットワーク)の利用も遅延低減に有効だ。
レイテンシは、ストレージのパフォーマンスを評価するための主要な指標だ。レイテンシが小さければ小さいほど、システム運用の効率が上がる。
ストレージのレイテンシは主に、ストレージを制御する「ストレージコントローラー」、ストレージ管理ソフトウェアがハードウェアに依存しない「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)に加え、ストレージの「内部接続」と「外部接続」の4つに左右される。企業はストレージのレイテンシを減らすために、ストレージコントローラーに高速なCPUを用いるとよい。他にも高い効率性を追求したストレージの管理ソフトウェアを採用したり、遠隔からCPUを介さずにデータ転送する方式「RDMA」(Remote Direct Memory Access)を利用したりすれば、レイテンシの低減を図れる。
永続メモリの活用もストレージのレイテンシの低減につながる。永続メモリには、揮発性メモリに変換するモードと、高性能ストレージ層として使用するモードの2つがあり、ストレージの最適化に活用できる。
ネットワークのレイテンシが発生すれば、システム全体に影響が及ぶ。ネットワークのレイテンシが大きければ、データの読み込みに時間がかかり、一部のアプリケーションが使用できなくなる可能性もある。ネットワークのレイテンシが発生する原因としては、ケーブル配線の不備の他に、ルーティングやスイッチングのエラー、ストレージの非効率性、セキュリティ製品による干渉などが考えられる。
企業がネットワークのレイテンシを減らすためには、まずはデータ通信の遅延時間を測定することが重要だ。ネットワークの遅延時間はWindowsのコマンド「ping」を使って測れる。tracerouteを使用して遅延時間を測定することも可能だ。遅延時間を踏まえ、ネットワークのボトルネックを特定し、ルーターの置き換えといった対策を講じる。他にも端末の近くでデータを処理することでネットワークの負担を減らし、システムの応答時間を向上させることができる。
後編は、クラウドやエッジコンピューティングのレイテンシを低減するためのヒントを探る。
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