Raptor LakeからNova Lakeまで Intel CPUの最新ロードマップCPUと熱と電力と【前編】

IntelがCPUに今後導入する「タイル」は電力密度をさらに高めるだろう。そこで重要になるのが製造プロセス技術だ。本稿では製造プロセス技術とともにIntel CPUのロードマップを整理する。

2022年02月21日 08時00分 公開
[Fleur DoidgeComputer Weekly]

 2021年5月にIBMが世界初の2ナノメートル(以下、nm)製造プロセス技術を発表した。爪先サイズのチップに500億個の半導体を組み込めることで、新たな世界が迫っているように思えた。だが2nmプロセスのメリットがデータセンターの電力密度、効率、持続可能性に及ぶにはまだ数年はかかるだろう。

 Intelの3nmプロセスチップは2024年の「Lunar Lake」(16世代)まで登場しない。17世代チップの「Nova Lake」は2006年の「Core」以来最大のアーキテクチャ変更が行われるとされており、CPUパフォーマンスが50%向上する。サーバ用の「Diamond Rapids」は2025年ごろになるという(訳注)。

訳注:Lunar Lakeが3nmプロセスを採用するかどうかについては、2022年1月時点では「一部の報道」レベルであって確定的とは言い難い。Diamond Rapidsについては5nmプロセスという報道がある。記事の最後に6世代以降のアーキテクチャ名と製造プロセスをまとめたので参考にしていただきたい。

IntelがCPUにマルチタイルを投入

iStock.com/NiPlot

 チップメーカーとして支配的立場にあるIntelは、相変わらずあまり手の内を見せない。Intelは本件についての本誌への回答を拒否した。

 Uptimeのダニエル・ビゾ氏(リサーチディレクター)は、パフォーマンスの向上は革新的ではなく段階的になるだろうと示唆している。

 「結局は半導体物理学の本質にすぎない。パフォーマンスの改善は半導体の物理密度の向上よりもペースが遅く、10年スパンになる」

 2021年半ば、米国のニュースサイト「Reddit」に非公式に掲載されたIntelのロードマップによると、2022年の「Raptor Lake」(13世代)でCPUのパフォーマンスを10%向上させ、続く「Meteor Lake」(14世代)で「真のチップレットまたはマルチタイル」(訳注)にすることが示唆されている。

訳注:AMDはチップレットと呼び、Intelはタイルと呼んでいる。いずれも複数のコアをまとめたダイを1つのCPUパッケージにパーツとして組み込む技術。

 2022年以降、Intelは「Sapphire Rapids」(10nmプロセス)の「Xeon」を投入する予定だ。複数の高性能コアを実装したタイル(ダイ)を4つ搭載するマルチタイル設計を投入するとみられる。広帯域幅の統合ダイナミックメモリが組み込まれ、データストレージがプロセッサの近くに配置される。ビゾ氏によると、低遅延を必要とする特定のワークロードの役に立つという。

 Sapphire Rapidsは56コアで、112のスレッドと最大350ワットのTDP(Thermal Design Power)(訳注)を提供すると予想されている。AMDは「EPYC Genoa」で最大96のコア、192のスレッドと最大400ワットのTDPを提供し、キャッシュ、I/O、PCIeレーン数、DDR5機能を向上させると期待されている。

訳注:熱設計電力と訳される。集積回路の発熱量のことで、冷却のための指標として使われる。理論上は発熱量<消費電力だが、実質的にはTDPと消費電力はほぼ等しい。

 「統合するコアが増え続けると、そのペースにメモリが追い付くのが難しくなる。これまでのようにメモリチャネルを追加することは可能だが、ある時点を超えるとコストが高くなる。非常に多数の配線を施したロジックボードが必要になる。そうしなければピン数が足りなくなるだろう」(ビゾ氏)

参考:Intelのマイクロアーキテクチャ

 原文の記述はとりとめがなく分かりにくいので、マイクロアーキテクチャを再整理した。Raptor Lake以降は製造プロセスが「Intel x」という名称に変更されており、さらに分かりにくい。ここでは日本語訳作成時点(2022年1月)でのウワサレベルの情報も取り込んでいる。

世代 アーキテクチャ名 製造プロセス
6世代 Skylake 14nm
7世代 Kaby Lake 14nm
8世代 Coffee Lake 14nm
9世代 Coffee Lake Refresh 14nm
10世代 Comet Lake 14nm
10世代 Ice Lake 10nm
11世代 Rocket Lake 14nm
12世代 Alder Lake 10nm
13世代 Raptor Lake Intel 7(10nm)
14世代 Meteor Lake Intel 4(7nm)
15世代 Arrow Lake Intel 4?(7nm?)
16世代 Lunar Lake Intel 3?(3nm?)
17世代 Nova Lake Intel 3?(3nm?)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia マーケティング新着記事

news170.jpg

AIの進化が加速する「プラットフォームビジネス」とは?
マーケットプレイス構築を支援するMiraklが日本で初のイベントを開催し、新たな成長戦略...

news029.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2024年12月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news166.png

2024年の消費者購買行動変化 「日本酒」に注目してみると……
2023年と比較して2024年の消費者の購買行動にはどのような変化があったのか。カタリナマ...