限界に近づくCPU&サーバの電力密度 Intelも検討するあの冷却方式CPUと熱と電力と【後編】

CPUを省電力化する試みは文字通り焼け石に水。電力密度は上昇し続ける。これにGPUボードなどの要素が加わり、サーバ単位の電力密度はさらに増大する。どうやって冷却するのか。

2022年02月28日 08時00分 公開
[Fleur DoidgeComputer Weekly]

 技術コンサルタント企業Altman Solonのアンソニー・ミロバンツェフ氏は、チップのイノベーションは3nmプロセスのような継続的かつ段階的な改善やIntelのトランジスタアーキテクチャ「RibbonFET」(訳注:一般的にはゲートオールアラウンド構造のこと)、つまりシリコンインターポーザーを備える2.5D積層や3D積層などの革新的ダイパッケージングに依存する可能性が高いと考えている。

 同氏は価格性能比の向上やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)のニッチなワークロードを目的とするデータセンターチップとして、Arm/RISCにも注目している。Amazon Web Services(AWS)は「AWS Graviton」によってArm/RISCに移行し、NVIDIAはHPC用に「Grace」を発表している。

CPU+αでサーバの電力密度は爆上げ

会員登録(無料)が必要です
iStock.com/Birdlkportfolio

 「ただし、こうした動きの最終結果はチップレベルでのごくわずかな電力削減にしかならない。高まり続けるコンピューティング能力ニーズに応えるため、小さなフォームファクターに多くのトランジスタを詰め込むことになり、電力密度がかなり高くなっているのが実情だ。電力密度の上昇はデータセンターの冷却問題につながり、その問題の重要性は時間とともに増している」(ミロバンツェフ氏)

 かつてはハイパースケーラーやIaaS企業、クリプトマイニングをホストするデータセンターではない限り、それをサポートする電力密度や堅牢(けんろう)な冷却設備は必要なかった。もちろん、企業が分析、ビッグデータ、機械学習を広く利用するにつれて状況は変わっている。

 「IntelやAMDのデータセンター用ハイエンドCPUのTDPはこれまで100~200ワットに収まっていた。現在のトップエンドのEPYCや『Ice Lake』(10世代)のTDPは250ワットを超えており、Sapphire Rapidsは350ワットになると予想されている」(ミロバンツェフ氏)

 データセンターはサーバ監視ツールだけでなく、高アンペアの電力をルーティングする方法や冷却を検討する必要があるとミロバンツェフ氏は言う。

 これまでデータセンターは3キロ~5キロワットの電力密度を前提にラックを設計してきたが、今日のハイパフォーマンスシステムはその10~20倍の電力密度に達する。そう指摘するのはVertivのナイジェル・ゴア氏だ。

 「チップベンダーが常に議論するのは、1ワット当たりのパフォーマンスだ。新たなチップセットを冷却するには、その熱量を放散できるエアフローとヒートシンクが必要で、湿度の監視も要求される」(ゴア氏)

 多くのパラメーターは上限に近づいているため、特にハイエンドでは液体冷却の魅力が高まっている。Intelも新たなチップセットの設計の重要な要素として液体冷却を検討している。

 ゴア氏は、GPUなどのアクセラレーターモジュールに関するニュースにも注目することを提案する。

 「アクセラレーターモジュールがパフォーマンスシステムをパッケージ化する方法には多数の組み合わせがある。その組み合わせにはASICやメモリの高速接続が含まれるが、設計の中心になるのは自動化や機械学習をサポートするためのパフォーマンスの向上だ」

 「そうしたモジュールを1台のサーバに8つ搭載できるとする。するとそのTDP値はモジュール数を乗算したものになる。700ワットの8倍だ。つまり1台のサーバの電力密度は5.6キロワットになる」

参考:Intelのマイクロアーキテクチャ(再掲)

 原文の記述はとりとめがなく分かりにくいので、マイクロアーキテクチャを再整理した。Raptor Lake以降は製造プロセスが「Intel x」という名称に変更されており、さらに分かりにくい。ここでは日本語訳作成時点(2022年1月)でのウワサレベルの情報も取り込んでいる。

世代 アーキテクチャ名 製造プロセス
6世代 Skylake 14nm
7世代 Kaby Lake 14nm
8世代 Coffee Lake 14nm
9世代 Coffee Lake Refresh 14nm
10世代 Comet Lake 14nm
10世代 Ice Lake 10nm
11世代 Rocket Lake 14nm
12世代 Alder Lake 10nm
13世代 Raptor Lake Intel 7(10nm)
14世代 Meteor Lake Intel 4(7nm)
15世代 Arrow Lake Intel 4?(7nm?)
16世代 Lunar Lake Intel 3?(3nm?)
17世代 Nova Lake Intel 3?(3nm?)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。