米国バイデン政権下で、一定規模以上の企業に対し、従業員のワクチン接種義務化が進もうとしていた。もしこれが実現した場合、人事部門はどのように対処する必要があったのか。
前編「オミクロン流行でオフィス復帰を断念した企業、従業員の不安に寄り添う『助言』とは」は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株の流行によりオフィスワークの再開を延期した企業について触れ、先行き不透明な状況の中でリーダーが考えるべきことを説明した。後編は、米国のジョー・バイデン大統領政権下で進んでいた「従業員のワクチン接種義務化」に関する規則を紹介する。同規則は2021年1月に合衆国最高裁判所の差し止め命令によって撤回されたが、もし実施されることになった場合、企業にはどのような備えが必要だったのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、企業の人事部門は既存の人材管理(HCM)ツールベンダーやサードパーティー企業が提供する「COVID-19管理ツール」を活用して、従業員の状況把握に努めてきた。医学博士のチェイス・フェイガー氏は、「従業員のワクチン接種状況を管理する必要性はもうしばらく続きそうだ」と予想する。フェイガー氏は、ReturnSafeで医療情報学の顧問を務めている。同社はワクチンの接種状況の管理、検査結果、症例などCOVID-19関連の情報管理に役立つ人事システムを手掛けるスタートアップだ。
「私たちはCOVID-19の流行の真っただ中にいる」とフェイガー氏は語る。ワクチンの接種ができていない地域が多くある限り、今後もSARS-CoV-2の新たな変異株を目にすることになると同氏は指摘する。「先手を打つことができたと考えるたびに、新しい変異株が生まれている」(同氏)
ReturnSafeが提供するシステムはさまざまな機能を備える。具体的には、従業員が毎日の健康状態を自己申告する機能や、従業員がCOVID-19の検査で陽性となった場合の通知システム、接触確認の機能などがある。今は従業員にワクチン接種を義務付けていない企業も今後、接種済み従業員を把握するためにワクチン接種管理システムが必要になる可能性はあると、フェイガー氏は予想する。
義務化が進んでいた場合、企業には「従業員のうち何人がワクチン接種を終えているか」といった、社内のワクチン接種状況の確認をはじめとする幾つかの要件に応える必要があった。このような情報を従業員に求めるだけでは、企業がワクチン接種の義務化に踏み切ったことにはならない。だが「記録管理の負担を分担することにはなる」と労働雇用問題を扱う弁護士のジョン・ホー氏は話す。ホー氏は法律事務所Cozen O'Connorで米国労働安全衛生局(OSHA)関連の案件を統括している。
米国バイデン政権は、従業員100人以上の企業を対象に、従業員に対するCOVID-19のワクチン接種もしくは定期的な検査などを義務付ける計画をしていた。このワクチン接種義務化に関する規則はOSHAが定めたものだ。企業は2022年1月中旬までに規則で定められた規定に従う必要があった。だが2022年1月、合衆国最高裁判所がこの規則に対する差し止めを命じた。
OSHAは差し止め命令を受けて2021年1月、「強制力を持つ規則としては撤回するが、規則案としての緊急暫定基準(Healthcare ETS:Healthcare Emergency Temporary Standard) の撤回はしていない」といった趣旨の声明を出している。
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