2022年03月18日 05時00分 公開
特集/連載

SSDに高速性で負けても「HDD」の未来は明るい? 老舗ベンダーの見解は大容量データ向けのHDD【前編】

HDDは2021年に20TBが登場するなど大容量化が進み、データを効率的に保管するストレージとしての役割を大きくしている。老舗ストレージベンダーWestern Digitalの見解を基に、今後のHDDへの期待を紹介する。

[遠藤文康,TechTargetジャパン]

 高速なデータ読み書きを必要とする用途がSSDに流れる中で、HDDに期待が掛かるのは大容量ストレージとしての役割だ。ストレージベンダーのWestern Digitalは、2021年に容量20TBのデータセンター向けHDDを市場投入した。Seagate Technologyも同年に20TBのHDDを発売。ベンダー各社はさらなる大容量化を目指している。

 2021年6月に調査会社IDCが発表した市場予測によれば、世界のHDDの出荷容量は2020年から2025年にかけて、18.5%の年平均成長率(CAGR)で増加する。PC内蔵ストレージなど主役をSSDに譲る分野がある中でも、HDDの出荷容量は増える。Western DigitalでHDD分野のシニアバイスプレジデントを務めるラヴィ・ペンディカンティ氏は「HDDの役割は縮小しておらず、むしろ商機が来ている」と話す。HDD分野の今後をどう見ているのか。

大容量データの増加と、HDDの役割の変化

 画像や映像をはじめさまざまなデータが生じるにつれて、企業の保有データは増大する。特に「5G」(第5世代移動通信システム)接続を前提にした新たなアプリケーションの普及、データを収集するIoT(モノのインターネット)デバイスの増加は、データの多様化や保有データの増大を助長する要因だ。企業はAI(人工知能)技術を使い、データから何らかの知見を得ることができる時代になり、さまざまなデータを保管しておくことの重要性が高まっている。

 こうした動向の中で、HDDの役割にも変化がある。「HDDの需要はアーカイブ寄りに広がっている」とペンディカンティ氏は説明する。特に需要が高まるのは、利用頻度は低いものの将来的にアクセスする可能性のあるデータや、法規制や社内ルールに応じて保管しておく必要のあるデータなどだという。企業にとっての課題は、利用頻度の低いデータを含め、大量のデータをいかにコスト効率良く保管できるかだ。「そのための手段を提供することがHDDベンダーの責任だ」と同氏は言う。

 HDDの大容量化は、増大するデータの受け皿として企業が必要としているだけではなく、地球温暖化対策の関心が世界的に高まる中では、ITのグリーン化の観点でも重要だと同氏は指摘する。HDDはプラッタ(円盤状の記録媒体)や磁気ヘッドなど可動式の部品を内部に含むので、その電力消費を抑制しつつ、いかに大容量化を同時に実現できるかが今後より重要になると考えられる。例えばプラッタの記録密度の向上は、そのための一つの手法になる可能性がある。電力消費が増える要因になり得るプラッタの枚数を抑えつつ、HDDの容量を増やしやすくなるためだ。

 利用頻度の低いデータ用のストレージとしては、テープも企業にとっての有力候補になる。テープカートリッジは棚やテープライブラリで保管している限りは電力を必要としないので、電気代の節約につながる。テープカートリッジ1巻に大容量(「LTO-9」は非圧縮時18TB、圧縮時45TB/LTO:リニアテープオープン)を保存できることも魅力だ。

 これに対してHDDはストレージに常に通電していることが基本であるため、その分の電気代が発生する。一方でテープはカートリッジとドライブが分かれた仕組みであることから、データ読み書き時はカートリッジの出し入れが必要になる。こうしたテープと異なり、通電しているHDD内のデータは常に利用できる状態にある。「アーカイブ用途でHDDを使う場合は、データ読み書きの準備が整うまでにほとんど時間がかからないことが利点だ」とペンディカンティ氏は説明する。

HDDの大容量化は今後も継続

 Western Digitalは、HDD内部に空気ではなく、ヘリウムを充填(じゅうてん)する技術を2013年に商用化(当時は同社傘下の旧HGSTが提供)した。当時は、HDDのプラッタ枚数を増やす上で、HDD内部の空気の抵抗がボトルネックの一つになっていた。空気ではなくヘリウムでHDD内部を満たすことでプラッタに掛かる気流の抵抗を減らし、プラッタをより薄くしても安定して稼働できるようになる。結果としてプラッタ枚数を増やせるようになるため、大容量化につながる技術として、その後のHDDに広く採用されることになった。

 ペンディカンティ氏は、今後もブレークスルーをもたらす技術開発に継続的に取り組むことで、HDDの容量拡大を目指すと話す。Western Digitalが2021年に発表した20TBのHDDには、NAND型フラッシュメモリをHDDに搭載する「OptiNAND」という技術を搭載した。これも大容量化を目指す上で欠かせない存在になるという(後編で具体的に紹介)。


 後編はHDDのさらなる大容量化を目指す上でどのような技術が重要になるのか、Western Digitalの取り組みを基に紹介する。

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