容量30TBのSSDがストレージ市場に衝撃を与えている。HDDの存在意義がなくなってしまう可能性があるからだ。ただしこれは序章にすぎない。これからストレージ市場はどうなるのか。
SSDは1つのメモリセルに4bitを格納する「QLC」(クアッドレベルセル)の記録方式の利用が広がり、より大容量のデータ保存が可能になっている。ストレージベンダーVAST Dataは、同社のストレージ製品に容量30TBのSSDを搭載した。HDDは容量20TBを超える製品が市場に出回っているが、まだ30TBには達していない。この動きが引き起こすのは「HDDが市場から消えるのではないか」という懸念だ。
VAST Dataが同社のストレージ製品「Universal Storage」に搭載したのは、記録方式にQLCを採用することで容量30TBを実現したIntel製SSDだ。容量30TBは製品化しているHDDの最大容量を超える。この容量のSSDを使用すれば、HDDを使用するよりも、同じ設置面積でより多くのデータを保存できる可能性が高まる。
容量30TBのSSDを搭載したことについて、VAST Dataの共同創業者兼CMO(最高マーケティング責任者)のジェフ・デンワース氏は「HDDの“終わりの始まり”を告げるものだ」と強調する。
調査会社IDCのアナリストであるエリック・バーグナー氏は、VAST Dataのストレージ製品はペタバイト以上の大容量を保存する際に効果を発揮するとみる。VAST Dataが採用するイレージャーコーディング(データを分割し、冗長性を与えて保存する技術)や重複排除の技術は、搭載するデバイス数が増えるのに従って効果が高まるからだ。
デンワース氏によると、Universal Storageはインタフェース規格NVMe(Non-Volatile Memory Express)接続のSSDを、1つの筐体(きょうたい)に56台搭載できる。従来も、搭載するSSDの容量が増えるのに従い、1つの筐体で保存できる容量は増えてきた。この傾向は今後も続く。「HDDはもはや高密度ストレージの優れた選択肢ではない」(同氏)
容量においてSSDがHDDよりも優位になるという動向は、まだ始まったばかりだ。デンワース氏は「当社は今後も前進する。HDDの絶滅を予感させる動きは、これからさらに大きくなる」と話す。
コストで比較しても、「SSDよりHDDの方が安い」とは必ずしも言えなくなってきているという。VAST Dataは、同社製品で比較するとSSDとHDDの総所有コスト(TCO)はほぼ同じになると主張する。ただしこれを文字通り受け取ってはいけない。HDDは5年で更改する必要があり、SSDはそれより長く使用できるという前提で比較しているからだ。
データの保護方法もコストに影響する。HDDにおけるデータ消失のリスクを下げる方法としては、データを複数のHDDに分散させて保存する「RAID」(Redundant Array of Independent Disks)を使うのが一般だ。これに対し、VAST DataはSSDのデータを保護する方法としてイレージャーコーディングを採用している。同社によれば、RAIDよりもイレ―ジャーコーディングの方が必要とする容量は少なく済む。この点でSSDは容量を節約しやすいと同社はみる。
バーグナー氏によればHDDが必要なくなるわけではない。「低コストで大容量が必要な場合はHDDが適している」と同氏は指摘する。特に利用頻度の低いデータ用のストレージとしてHDDを使用する例は広がっている。例えばクラウドベンダーが提供するアーカイブサービスはHDDを使用していることが一般的だ。データへのアクセス速度が問題にならない場合は、HDDの出番だと言える。
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