テレワーク移行を契機に、内気な性格の従業員が議論の輪に加わるようになった――。トヨタ系の金融サービス事業TFSとGoogleの経営幹部は、こう口をそろえる。こうした傾向が現れた理由とは。
控えめで内向的な性格を持つ従業員は、対面会議ではあまり発言しない――。オフィス出社が当たり前の頃は、こうした傾向が強かった。だが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によってテレワーク導入が拡大したところ、それを契機におとなしいタイプの従業員が話し合いの輪に加わることが珍しくなくなってきた。トヨタ自動車の米国における金融サービス事業Toyota Financial Services(以下、TFS)とGoogle(グーグル)でも、こうした変化が起こっている。
Web会議機能を持つコミュニケーションツールを利用すれば、従業員は大きな声を出さなくても、会議の他の参加者に質問をしたり、懸念事項を伝えたりできる。こうしたコミュニケーションツールには、Microsoftのユニファイドコミュニケーション(UC)システム「Microsoft Teams」やZoom Video CommunicationsのWeb会議ツール「Zoom」などがある。
「コミュニケーションツールが『内向的タイプ』と『外交的タイプ』が対等に話せる場を作ったのは確かだ」と、TFSの最高イノベーション&デジタル責任者を務めるビピン・グプタ氏は話す。最高情報責任者(CIO)やIT部門の経営幹部を対象とした年次イベント「MIT Sloan CIO Symposium」(2022年5月開催)の公開ディスカッションでの発言だ。
グプタ氏は、テレワーク移行によるコミュニケーションツールの利用拡大によって、従業員間のやりとりがより活発になる下地ができたと実感している。広いホールで実施する対面会議で立ち上がって質問をする従業員は、「いつも同じ5人だった」と同氏は振り返る。「今は、ずっと幅広い顔ぶれが議論に参加するようになった」(同氏)
Googleでは、従業員がコミュニケーションツールを通じて遠慮なく発言できるようになったおかげで、「本人の性格的特性や立場から、あまり発言が得意でなかった従業員が意見を言えるようになった」と、同社のマイク・ドースト氏は指摘する。ドースト氏は同社で、ビジネス用Webブラウザ、OS、デバイス事業「Chrome Enterprise」のマネージングディレクターを務める。同氏はこうした変化を「テレワーク移行で得た収穫だ」と語る。
後編はグプタ氏が考える、今後の社内コミュニケーションの変化を解説する。
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