ダラム大学は、宇宙関連の研究に用いるスーパーコンピュータ「COSMA7」に“スイッチレス”のアーキテクチャを取り入れた。どのような成果があったのか。
英国のダラム大学(Durham University)の計算宇宙学研究所(ICC:Institute for Computational Cosmology)は、スーパーコンピュータ「COSMA」シリーズの一つ「COSMA7」を活用して、宇宙の起源についての研究を進めている。ICCは研究の遅れを回避するため、COSMA7にスイッチレス(スイッチを使用しないこと)のネットワークアーキテクチャを採用した。これはICCが想定していなかった成果を生んだ。
ICCがCOSMA7をスイッチレスにしたのは、ネットワーク遅延の原因となる輻輳(ふくそう)のリスクを低減することが目的だ。それを実現するため、ICCはネットワーク機器ベンダーRockport Networksのネットワーク製品群「Rockport Switchless Network」を導入した。Rockport NetworksのCTO(最高技術責任者)、マシュー・ウィリアムズ氏は今回のプロジェクトについて、「ネットワークの輻輳問題に対する取り組み方を変えるものだ」と評価する。
ネットワークの輻輳への対処法は、従来の主流だったスイッチの数を増やす方法から、帯域幅(回線路容量)を増強するやり方に移行しているとウィリアムズ氏は話す。これはネットワークの制御やアーキテクチャが洗練されたことで実現した。
ダラム大学でCOSMAの技術マネジャーを務めるアラステア・バズデン氏は、COSMA7刷新のテスト段階における研究員からのフィードバックは、肯定的なものがほとんどだったと振り返る。作業の中断はなかったという。
研究員は刷新後のCOSMA7を利用するに当たり、研究に使うソースコードを調整する必要はない。ほとんどの研究員は刷新前後の違いを認識しておらず、バズデン氏はこれを「良い兆候だ」と評価する。
バズデン氏は刷新による成果として、PoC(概念実証)でテストした平滑化粒子流体力学の研究に用いるソースコードの例を挙げる。このソースコードはタスクベースの並列処理を採用しており、研究員は輻輳の有無による影響はないと考えていた。ところがRockport Switchless Networkを用いると、並列処理の実行速度に改善が見られた。ICCはエクサスケール(1秒間に100京回規模の計算速度)でのモデリングにおける高速化も目指す。
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