「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)で困ったときに見直すべき4つの視点自社の「HPC」構築に必要な視点【後編】

「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)の利用時は、日常業務で利用するインフラとは異なる課題に直面する可能性がある。どのように対処すべきか。間違った判断を下さないためのポイントを知っておこう。

2021年09月09日 05時00分 公開
[Stephen J. BigelowTechTarget]

関連キーワード

HPC | ビッグデータ | サーバ


 中編「『ハイパフォーマンスコンピューティング』(HPC)の利用可否を考える3つの要件」は「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)の利用に当たって検討すべき3つの要件を紹介した。本稿はHPCの利用時に直面する可能性のある3つの課題と、それに対処するための視点を紹介する。

コンピューティングの課題

 HPC用のハードウェアは使い慣れた汎用(はんよう)のサーバにすることもできるし、モジュール型の高密度サーバにすることもできる。モジュール型の高密度サーバを利用すると、サーバの拡張や交換が容易だ。高速イーサネットの機能を搭載するサーバを利用すれば、データ転送速度を高速化できる。こうしたハードウェアの技術進化に合わせてHPCに追加投資をすることで、HPCが直面するコンピューティングの課題を段階的に解消することが可能だ。

ソフトウェアの課題

 問題になりがちなHPC関連ソフトウェアの課題は、ソフトウェアのバージョンと相互運用性の管理だ。あるソフトウェアに更新プログラムを適用することで、他のソフトウェアの動作に悪影響を与えることがある。それを避けるためには、HPCの運用プロセスの中でテストと検証の作業に重点を置くことが欠かせない。

施設の課題

 データセンターのスペース、電力、冷却機能の制約がHPCの利用において課題になるときは、サーバをアップグレードすることで問題が解消する可能性がある。より大型で高速処理可能なサーバを導入して仮想マシン(VM)を追加することで、物理的にサーバ台数を増やすことなくHPCのノード(サーバ)を追加できる。

 LANの帯域幅(回線容量)不足の問題が生じる場合は、同じ物理サーバ内のVMをグループ化するとよい。これによりVMがLAN経由で通信する必要がなくなり、問題の解消につながる。

 サーバラックの設置スペースを追加する場合は、コロケーションなど社外の施設を利用することも可能だ。コロケーションではデータセンター事業者のスペースを借りて、その事業者が用意する電力と冷却設備を使用する。コロケーションを選択する場合の注意点は、自社設備よりも割高の利用料金と長期的な契約によって、高コストになる懸念があることだ。

 電力コストはHPCの長期的なコストに影響する。電力効率を高めるため、サーバの電力使用状況を管理できる「スマートPDU」(PDUは電源タップ)、スイッチ機能付きのPDUなどの導入を検討すべきだ。無停電電源装置(UPS)はデータセンターの電力が停止する場合、サーバのシャットダウンのプロセスを制御することでデータ損失を最小限に抑える。

 高密度サーバのサーバラックを追加すると、データセンターの空調システムの冷却負荷が大幅に高まる恐れがある。冷却設備を追加できない場合は、液体によって冷却する「液浸冷却」などより高度な冷却設備で代替することを検討すべきだ。コロケーションやクラウドサービスを利用することも選択肢になる。

HPCのクラウド利用

 「Amazon Web Services」「Google Cloud Platform」「Microsoft Azure」などのクラウドサービスでHPCサービスを利用することができる。クラウドサービスは拡張性に優れていることが特徴だ。他にも下記のメリットが見込める。

  • 世界各国で利用可能なデータセンターにおけるほぼ無制限の拡張
  • 機械学習、視覚化、レンダリングなどの処理を最適化する各種プロセッサなどのハードウェア
  • 自社のIT担当者によるスキルの習得時間や作業負担を減らすHPCのマネージドサービス
  • リソース使用量に対してのみ料金を支払う従量制課金制

 HPCを頻繁に利用する企業は、より自社の要件に適したデータ処理を可能にすることやセキュリティ確保のために、社内でHPCを構築するとよい。不定期で生じるHPCのプロジェクトに自社のリソースでは対処し切れない場合は、クラウドサービスを利用する選択も可能だ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news187.jpg

主戦場は「テレビ画面」へ YouTube20周年でCEOが公開書簡を公開
20周年を迎えるYouTubeが、クリエイターとユーザーの双方にとってより魅力的で革新的なプ...

news164.jpg

都道府県別ライフスタイル調査 「推し活好き」「ラーメン好き」最多は?
明治安田総合研究所が公表した都道府県別「ライフスタイルに関するアンケート調査」の結...

news119.jpg

Metaの広告はますますAI中心に 新たなツール「最適化スコア」とは?
Metaの2025年ビジネス注力領域とAIを活用したツールをはじめとした広告ソリューションの...