「週休3日でも生産性は落ちない」と調査で判明? “信ぴょう性なし”との声も週4日勤務は是か非か【前編】

英国の非営利団体が、週4日勤務の生産性を検証する実証実験を実施した。中間結果はポジティブなものだったが、専門家はこれを疑問視している。その理由は。

2022年10月31日 05時00分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

 非営利団体4 Day Week Globalは週4日勤務(週休3日制)の実証実験を実施し、「従業員の労働時間を短縮しても効率は上がり、生産性を落とすことなく、ワークライフバランスを向上させることができる」と主張する。だが一部の専門家は「4 Day Week Globalの調査はほとんど何も立証していない」と批判する。

「週休3日でも生産性は下がらない」に信ぴょう性はあるのか

 4 Day Week Globalは、週4日勤務の実証実験に参加している英国企業約70社の従業員約3300人を対象とした中間調査を実施。2022年9月21日(現地時間、以下同じ)に、その「肯定的な結果」を発表した。実証実験は全6カ月間であり、中間調査は3カ月経過時点で実施した調査だ。調査結果によれば、企業の生産性は「週32時間勤務になっても週40時間のときとほとんど変わっていない」という回答は46%、「やや向上した」との回答は34%、「大きく向上した」との回答は15%だった。

 「この調査結果は、週4日勤務で生産性が落ちないという確実な証拠を示していない」と批判する専門家がいる。「この調査は、参加者がこの実証実験に前向きであることを示したに過ぎない。この結果はあまり重視できるものではない」。University of Texas at Austin(テキサス大学オースティン校)の経済学名誉教授のダニエル・ハマーメッシュ氏はこう述べる。週4日勤務が有益かどうかを評価する方法はなく、もし有益だとしてもその有効範囲を評価する方法もないとハマーメッシュ氏は指摘。「英国におけるこの実証実験は、これらの疑問について何も答えを示していない」と主張する。

 ハマーメッシュ氏は週4日勤務に関する研究をしている。同氏は2022年6月にNational Bureau of Economic Research(全米経済研究所)に投稿した報告書「Days of Work Over a Half Century: The Rise of the Four-day Week」で、1973年から2018年の米国の労働形態を調査した結果をまとめている。報告書によると、調査期間の間に週4日勤務のフルタイム労働者は3倍に増え、800万人を超えたという。

 週4日勤務の労働者は、同じ業界、同じ労働時間、同じ人口統計属性の労働者より収入が少ないことが、調査から分かったとハマーメッシュ氏は説明する。週4日勤務が生産性に何らかの影響を及ぼしていると同氏は考えている。

 4 Day Week Globalの調査には、企業を無作為に選択した対照群がなく、生産性の測定方法が不明確だと指摘する声もある。米国のシンクタンクCenter for Economic and Policy Researchの共同設立者でシニアエコノミストのディーン・ベイカー氏は、2022年9月22日に公開したブログのエントリ(投稿)で次のように述べる。「もしも一夜にして25%も生産性が向上するのだとしたら、考えられないほど素晴らしい制度だ」


 後編は、こうした批判に対して、4 Day Week Globalの研究主任を務めるジュリエット・ショア氏の見解を紹介する。

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